アッフルガルド
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「ちっ、これじゃ追いつかれちまうな。ったく、なんだよこれこの渋滞」
少年が舌打ちする。白のボディのマウンテンバイク。ここまでスイスイと車列の間をうまくすり抜けてきたが――
「すぐに車から降りなさい!」
ヘルメットと盾を装備した警官がハンドスピーカで叫んでいる。
「これより先、自家用車両での移動は禁止されている! 全員車から降りて歩きなさい! ここより先の道路は、自治体の避難バスと緊急車両を最優先に――」
――ふざけるな警察! ――おいそこ、さっさと通らせろ!
――そうだ! 車で行かせろ! なめんじゃねーぞこら!
――足の悪いおじいちゃんがいるんです!
バリゲートの前で、人々が口々に叫んでいる。それを制止する警官隊。あちこちでもみあいが起きている。
「なあおっさん、自転車ならいいだろ? 別にとくに迷惑にはならないと思うし…」
「なんだキミは?」
呼ばれた警官が視線を下げた。
「や、だからさ、自転車はOKでしょって言ってんの」
「キミ、小学生か? 子供は知らないかもしれないが、自転車も交通法では立派な車両でね、」
「んなこと知ってるよ。けど、緊急だろ今。車両とかメンドクセーこと言ってんなよ」
「なんだその口のきき方は?」
「口とかどうだっていいんだよ。逃げなきゃヤバいだろ今!」
「とにかく指示に従いなさい。車両から降りて、市職員の誘導に従って―― あ! こら!」
機敏に隙間をすり抜けたマウンテンバイク。
あっと言う間に加速し、くだりの坂道をぐんぐんかけてゆく。
「止まりなさーい! そこの自転車、止まりなさ―い!」
「ったく大人どもは、いざっていうときになってもホントにアホだなぁ」
全速力で風を切りながら少年がつぶやく。下りの道はカーブしながら川沿いをどこまでも続いていく。風が吹く。雨がだいぶ降ってきた。サイレンを鳴らし、2台のパトカーがむこうからやってくる。けれどそれは少年はには目もとめず、さっさと通り過ぎた。サイレンの音が、雨にけむる谷向こうに遠ざかり――
「やれやれ。しっかし本気でメンドクセーことになってんなこれ! しょうもないゲームよりはるかにゲームっぽい」
一瞬も力をゆるめずにこぎなら、少年が唇の端で笑った。
少年が舌打ちする。白のボディのマウンテンバイク。ここまでスイスイと車列の間をうまくすり抜けてきたが――
「すぐに車から降りなさい!」
ヘルメットと盾を装備した警官がハンドスピーカで叫んでいる。
「これより先、自家用車両での移動は禁止されている! 全員車から降りて歩きなさい! ここより先の道路は、自治体の避難バスと緊急車両を最優先に――」
――ふざけるな警察! ――おいそこ、さっさと通らせろ!
――そうだ! 車で行かせろ! なめんじゃねーぞこら!
――足の悪いおじいちゃんがいるんです!
バリゲートの前で、人々が口々に叫んでいる。それを制止する警官隊。あちこちでもみあいが起きている。
「なあおっさん、自転車ならいいだろ? 別にとくに迷惑にはならないと思うし…」
「なんだキミは?」
呼ばれた警官が視線を下げた。
「や、だからさ、自転車はOKでしょって言ってんの」
「キミ、小学生か? 子供は知らないかもしれないが、自転車も交通法では立派な車両でね、」
「んなこと知ってるよ。けど、緊急だろ今。車両とかメンドクセーこと言ってんなよ」
「なんだその口のきき方は?」
「口とかどうだっていいんだよ。逃げなきゃヤバいだろ今!」
「とにかく指示に従いなさい。車両から降りて、市職員の誘導に従って―― あ! こら!」
機敏に隙間をすり抜けたマウンテンバイク。
あっと言う間に加速し、くだりの坂道をぐんぐんかけてゆく。
「止まりなさーい! そこの自転車、止まりなさ―い!」
「ったく大人どもは、いざっていうときになってもホントにアホだなぁ」
全速力で風を切りながら少年がつぶやく。下りの道はカーブしながら川沿いをどこまでも続いていく。風が吹く。雨がだいぶ降ってきた。サイレンを鳴らし、2台のパトカーがむこうからやってくる。けれどそれは少年はには目もとめず、さっさと通り過ぎた。サイレンの音が、雨にけむる谷向こうに遠ざかり――
「やれやれ。しっかし本気でメンドクセーことになってんなこれ! しょうもないゲームよりはるかにゲームっぽい」
一瞬も力をゆるめずにこぎなら、少年が唇の端で笑った。
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