アッフルガルド

ikaru_sakae

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 カトルレナが言ってたダイブカフェは、そこからそんなに遠くない位置にあった。
 大通りに面したビルの十六階。まわりのビルが潰れまくってる中で、そのビルだけがわりとまともに地震の被害をうけずに残ってる感じ。そこはかとなく小便臭ただよう暗いエレベーター。ようやく着いた十六階。うすぐらい通路の両側に、なんだかうらぶれた金融事務所だとか探偵社だとかのドアがぽつぽつ怪しくならんでる。その廊下の奥のいちばん奥にダイブカフェはあった。正面ドアの落書きがヤバかったから中もけっこうヤバいんだろうなって覚悟して入ったんだけど――
 中は意外に綺麗で広く、店員もまともだった。
 カードで使用料と初回登録費を払い、6番ブースの鍵をうけとって奥にすすむ。
 ブースの中はだいたいいつもと同じ。虹彩認証でID確認OK。照明が自動で落ちて、かわりに仮想世界の立体映像が立ちあがってくる。はじめは荒いポリゴンだったのが、数秒のうちに、リアルとほとんど区別のつかないディテールを伴った―― 色とかは、リアルよりもっときれいで鮮やか―― いつもの見慣れたゲーム世界がそこに展開。

『アッフルガルド』

 あたしのいつもの気軽な遊び場―― だったはずなんだけど…


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