アッフルガルド

ikaru_sakae

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「ぽお~ すごいイケメンだね~。誰々? ひょっとして旦那さん? え、けどさっきたしか家族いないって言ってたよね? 何々? あ、ってことは――」

「さ、さわるな!」

 いきなり体当たりがきた。。あたしはふっとんでゴミの山のまんなかにダイブ。もくもくほこりが立つ。あたしはなんとか立ちあがり―― ゲホゲホッ!  
「げほっ。って、ご、ごめんね~カトルレナ。なんか勝手にさわっちゃって―― でもなにも写真ひとつでそこまで怒らなくても」
 言いかけて、口をつぐんだ。
 そこにいま、カトルレナ本人がいたから。
 長くのびたぼさぼさの髪。(たぶん)何週間も洗わずに着続けてる色あせたパジャマ。
 リアル・カトルレナは、こっちに背中をむけてうずくまり、
 その、さっきのフォトフレームを固く両手で抱きしめるみたいに持って。

 泣いてる。

 ぶるぶる、ぶるぶる、小さな子どもみたいに震えて。
 そんな寂しいうしろ姿を見てると、さすがのあたしも―― 

「これは何? 人間用の食品?」

「はい、おそらく」ダグがクールに対応する。「外部包装の材質から、加熱調理を要する半流動食の一種だろうと推察されます。そしてこれはすでに開封して中身を摂取したあとの残骸かと」
「とても興味深いわね。なかなか良い香りがする」
「こらそこっ! 残飯をあさるなっ!」
 あたしは全力でつっこんだ。けど、ヨルドっていう悪魔少女は全然こっちの話はきいてない。またすぐ別のゴミを嬉しそうに手にとってる。
「ふむ、いろいろ面白いものを作るのですね、この世界の人間は。事前情報としては知っていましたが、実地で本物の品物を見るのは貴重な体験です。この世界の平均的家屋の内部をじっさい見るのは初めてです。これも貴重な――」
「…って、ここ、ゴミ屋敷だから! ぜんぜん平均的家屋じゃないから!」
「ではこれは? これも食品?」
「いえ。そちらは食品用とではないと思われます。わたくしの物品アーカイブに参照すれば、それは一般に生理用品と呼ばれるもので、」
「…ってこら! あんたら勝手に女性の部屋をあさるな! めちゃくちゃ侵害してるだろプライバシー! ほらほら、さっさとそこ、そのソフィーサラから手を放せ!」

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