アッフルガルド

ikaru_sakae

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 市ケ崎の北六番出口から地上に出る。雨はまだ降り続けてる。
 コンビニで買った透明の傘をさし、人気のない大通りを家の方にむかう。この時間になってようやく空が明るくなってくる。黒の金網フェンスで区切られただだっぴろい空き地と、建設が中断して廃墟になった集合住宅と、あとはよくわかんない資材の置き場、物流企業の倉庫に、廃棄物の集積ピットとか―― 
 この冴えない街の北のはずれの片隅に、いちおうあたしの家がある。市営団地北D4地区B棟の18階。家というか、寝場所というか。ま、なんだっていいんだけど。

「ただいまー」

 いちおう声に出してみる。
 返事はない。
 思った通り姉貴はまだ帰ってない。基本が二時とか三時とかに仕事終わりで、それが延びると平気で五時とか六時とか。口の堅い姉貴は、仕事のことはぜんぜんしゃべらない。基本が無口なキャラなのだ。本人は詳細は言わないけど―― ま、十中八九、風俗系の仕事だ。あの濃ゆい化粧と派手派手したドレスでやれる仕事なんて世の中ほんとに限られてる。
 あー、毎日つかれるー。こんなの続けてたら本気で干物になるなるー。
 それが姉の口ぐせ。干物になっちゃう仕事って一体なんだ??
 まあでもそうやって毎日毎晩姉貴が稼いだ貴重なクレジットでここの家賃を払い―― いちおうここにあたしは居候させてもらってる立場。姉の仕事がどうのこうのと文句をつけるポジションにはぜんぜんない。一ミリもそんな立場にない。あたし自身、時々ゲームのあやしい裏仕事でちょこちょこっと小遣い稼いでるだけだし。

   いま、カトルレナから返信きた。
   あっちもやっぱり振りこまれてた。
   やっぱり同額666だと
 
うげげ! やばいね! ぜんぜん嬉しくないわこれ!

   ま、でも いいじゃんとりあえずもらっとけば

まあそりゃ、もらいますよ。そこはしっかりもらいますけどさ

   おれ、今日さっそく新しいPC買うわ。
   超新しい高スペックのやつ          

あたし知らないよ~ なにがどうなっても

   別にどうもならねーって。
   ってか、おれらいま大金持ちだぜ?

そうだけど。なんかでも、やっぱり気持ち悪いよ~


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