アッフルガルド

ikaru_sakae

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 カードで精算をすませ、煙草の煙のこもったダイブカフェを出る。
 午前四時。雨が降ってる。あたりはまだ暗い。
 うらぶれた路地のところどころ、終夜営業の飲み屋や風俗系の店の明かりがともってる。ゴミが散乱した箇所をさけて道の端っこを歩く。大通りに出る頃には雨の降りは強くなった。
 パンッ… パン……
 どこか遠くで銃声がした。知らない路地裏で誰か撃たれたか、それともどこかのガキの試し撃ち? けどまあ、どっちでもいいし興味もない。治安最悪なこの町ではいつものこと。風の音とかネコの声とかと同じレベルで。
 潰れかけのコンビニで適当に傘を買う。ついでに鮭のおにぎりを2つ買った。コンビニの軒下でそれを食べた。足もとで髭の長いホームレスのおっさんがうらやましそうに見上げてる。でもひたすら無視して美味しくおむすびを頬ばる。

…にしても、寒い。なんかだいぶ悪寒がする。
 雨にうたれたせいもあるけど、ゲームの中の妙な感触がまだ今も尾をひいてる。
 なんだったんだろう、あれは? ぜんぜんよくわかんないけど――
 すごく嫌な感じだった。ひどくとても間違った感じ。

――報酬!!

 そうだ。入金。
 ま、さすがにさっきの今では、まだ振りこまれてないか。
 でもま、いちおう念のため――


『十六桁の認証番号、または虹彩認証を選択してください』

 コンビニの隅の銀行端末が、ちょっぴりハスキーな女の声で言った。その指示にしたがい、『虹彩』のところを指で選択。

『あと一歩、画面に近づいてください。画面奥の赤い光点に視線をあわせてください』

「はいは~い」
 適当に返事して、自動音声の言う通りにする。
 ピッ、という聞きなれた音がして、まもなく認証作業は終わった。

「な、ななななな、なんじゃこりゃああ!!!!!!!」

 思わず声に出てしまった。
 通路のむこうで品出しをしていた店員が不審そうにふりかえる。


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