アッフルガルド

ikaru_sakae

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 ウウウウウウウウウンンンンンン………

 世界が一瞬、
 揺れた。ぐらりと大きく揺れた。
 震撼。
 うん、たぶんそれがいちばん近い表現だと思う。
 その、とてもよくない感じの震えは、
 まるで悪性のつむじ風のようにここにある全フィールドを一瞬にしてかけめぐり――
 そしてまたすべてが、また、何ごともなかったように――

 そして、
 ここにはもはや、さっきのあの清楚な女の子はいなかった。
 消えた。消え去った。ひとつの痕跡も残さずに。
 そこにあるのは砕けた窓と、焼け焦げたじゅうたんと寝台の残骸、
 それから――

「なんだかすげぇ、あっけなかったな」
 アルウルが短剣を鞘に戻しながら、しんみりした声で言った。
「でも何か―― 何か変だったよね?」カトルレナが、ロングソードを左手で支えたまま、自分の右手と左手を、なにか納得いかないみたいに交互に見比べた。「なんだか変な感触だった。なにかがおかしかった。あんな変な感じは初めてだ。なんだかちょっと気持ち悪い」
「わかるそれ。あたしも嫌な感じがした。すっごい嫌な感覚」
 なんだか妙な寒気がして、思わず両手で自分の肩をさわった。風邪のひきはじめみたいな、嫌な寒さの感じ方。ついさっきまでは、ほんとに何ともなかったのに。
「ねえアルウル、あんたこれ、やっぱりヤバい依頼だったんじゃない? あんたが気軽に受けてきたばっかりに」
「おい。やってからそれ言うなってば。おまえも賛成って言っただろ。今になっておれのせいかよ?」
「ま、それはそうなんだけど」
「とはいえ、とりあえず、予定してた任務は完了。ここまで三人ともノーダメージ。物理的な損失はまったくなにもない」
 カトルレナが事務的な口調で、ぼそぼそっとつぶやく。
 そのあとパチンと音をたてて、ソードを鞘におさめた。
「ミッションクリア、だね?」
「ね。」「ま、いちおうな」
 そうだ。いちおうこれで――
 約束の報酬がゲットできる。
 もちろん約束どおり入金されれば、の話だけど――



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