アサシンズブレード 殺し屋の聖剣

結木 夕日

残酷すぎる運命 第1章

武器屋の店主の無残な死体を俺は、呆然と見つめるだけしかできなかった。

くっ……。

悔しさのあまり、手を強く握り締めた。

手から血が出るまで。

「リョウ様……」

傍で見守るシュルラとサラサ。

また助けられなかった……。

理不尽すぎるだろ……!

そしてもし、俺があの時シュルラの言う事を聞いていればこんな事には……。

俺の……所為だ……。

自分勝手に解釈した俺の……。

自分とこの世界を責め続ける俺。

すると

「そう言えば聞いた事あります。遠くの村で蘇生魔法が使える魔法使いがいることを」

シュルラが良い情報をくれた。

「それは、本当か?」

「はい」

「リョウ様……そこにいくの……?」

「サラサ、そこに行くしかねぇだろ」

そう、人々を守ろうと自分を犠牲にした優しいおっさんを救う為にな。

「どうやら決まったようですね」

シュルラの言う通り、俺は覚悟を決めた。

「シュルラ、サラサ、俺と一緒に冒険しようぜ!」

「はい!」

「うん……!」

そして俺達は、長い長い冒険に旅立つことに。











武器屋を出る前、俺はもう一度店主の顔を見た。

絶対に救ってやる……!

だから、待ってろ。

苦しいだろうが、痛いだろうが、絶対に……!

そう思いながら、俺は唇を噛み締めた。

「行く準備出来ました」

「サラサも……」

「あぁ、俺も心の準備はもう出来てる」

そう言い、俺達は武器屋を出た。

すると

「ぎゃーーー!!」

近くから叫び声が。

声のする方へ行くと、なんと一人の男が何人もの人を殺していたのだ。

「お、おい!止めろ!」

俺は、その男の手を掴んだ。

この男から武器屋のおっさんのような匂いを感じる……!

まさかこの男……!

「リョウ様、この人呪われています」

やっぱり……!

「アサシンズブレードを見ていないのに、何故呪われたんだ?」

「アサシンズブレードの呪いは、感染するのです」

何だって!?

「人から人へ、種族問わずその呪いは感染し、人々は殺し合います」

どんだけ厄介な呪いだ……!

「武器屋の店主が呪われたことにより、武器屋近くの人が感染したのだと思います」

なんて呪いなんだ……。

アサシンズブレードにかけられた呪い……。

そもそも何故、アサシンズブレードに呪いをかけたんだ?

こんなヤバい呪いを……。

あぁもう、考えたら埒が明かない。

「この男を止めるには、どうしたらいい?」

「私には分かりません。その呪いはあまりにも感染力が強すぎて、未だに解呪方法は分からず仕舞いです」

チッ、なら一体どうしたら……。

俺が悩んでいると

「はぁぁぁぁぁーー!!」

謎の人物が呪われた男目掛けて剣で斬ったのだ。

「ぎゃーーー!!」

斬られた男は即死で、動きを止めた。

な、何が起こったんだ?

斬った謎の人物を見てみると、そこには

「お前、アレクじゃねぇか!」

聖騎士団団長・アレクがいた。

「久方振りだな。少年」

「何故お前は殺したんだ?」

「この男は、何人もの人を殺した殺人鬼だ。すぐに処刑されるのも当然の事だ」

この男は多分呪われる前、無害だったのかもしれねぇじゃねぇか。

それを知らず知らずの内に、自分勝手で判断し、殺した。

これが、聖騎士団団長の使命なのか……。

「お前は前、言った筈だ。人間族を助け、魔人族には制裁を。って」

「確かに言った。でも、この男は、殺人鬼だ。悪さをする人間族にも制裁を」

くっ……。

「魔人族には当然制裁を加えている。だが、たまにいるのだ。悪さをする人間族も。見て見ぬふりは出来ない」

「こいつは呪われてたんだ。決して故意で殺ったつもりではないんだ」

「呪い?あぁ確かに変な匂いを感じていたな。この男からも。そして少年からも」

気付いていたのか……。

「少年、君に聞く。何故君が呪いの元凶とされる“アサシンズブレード“を持っているのだ?」

っ!!何処まで知ってんだ……!!

「何でもお見通しかよ」

「そうだ。私はすぐに状況を察し、自分自身で判断する」

だから身勝手な判断で殺したのか……!

俺も……人の事、言えないんだが……。

「殺した方が良かったのだろう?君にとっても皆にとっても」

くっ……!

「これで皆助かったのだ。別に私の勝手だろ」

最初から怪しいと思ったけど、ここまでとは……。

「さぁ、教えてくれ。何故君が“アサシンズブレード“を持っているのかを」

チッ、あぁもう鬱陶しい……! 

「お前等、逃げるぞ!」

「え?は、はい!」

「うん……早く逃げよう……!」

俺達は一目散にその場から逃げ出した。

「待てっ!少年。くっ、だったら……お前達、あの人間族を捕らえろっ!」

「はっ!」

アレクは周りにいた聖騎士団達に命令をした。

「そこのお前等、止まれー!」

聖騎士団達が後ろから追いかけて来る。

「止まれって言われて止まる筈ねぇだろ!」

「正論だな。だが少年、一つ言うぞ。呪いにかけられた人は絶対に解呪出来ない。殺すしか方法は無いのだ」

俺に聞こえるよう、大声でアレクが言う。

チッ、どんだけ厄介なんだ……!

それじゃあ、アレクの行動が正しい行動だったのだろうか。

いいや、違う。

俺は見てしまったんだ。

俺が抑えていた男目掛けてアレクが剣を振るう時、俺にまでその攻撃が当たるようにわざと振るっていた事を。

その所為で、額にかすり傷が……。

そして、俺諸共殺すという計画が失敗した時、アレクは小さく舌打ちをしていた。

あいつの表の顔は、団長面で凛々しく振舞っていて、裏の顔は、悪さをする者は種族関係なく容赦無い。

とんだ偽善者だな……!

「おい、アレク!聞いているか?お前みたいな性格、嫌われるぞ!」

俺はアレクに聞こえるよう、大声で言う。

すると、それに反論するようにアレクが

「何の事かな。私はただ、この街を救う為に殺った事だ。黙るがいい、この悪魔!」

大声で叫んだ。

「まさか、アレクも呪いに感染して……」

「いや、違います。あれは本心で行動したのだと思います」

「何故だ?」

「アーガイル家は、私グレイリア家みたいにアサシンズブレードの呪いに感染しないような体なんです」

どういう事だ……?

「話せば長くなります。いや、今は話したくありません」

グレイリア家の方針は、アサシンズブレードについて禁止されているからな。

にしても、アーガイル家とグレイリア家、アサシンズブレードにはどういった関係があるんだ?

あぁもう、更に謎が深まった。

たとえアレクが本心で言ったとなると、昔、伝説のアサシンが何かしでかしたのかもしれねぇ。

一体、何があったんだ……?

謎が謎を呼び、その謎が複雑に絡み合っている。

そんな気がした。

そうして俺達は、リアルスから逃げるように、街を出ていった。

一方、俺達を追いかけていた聖騎士団達は諦めていた。

そして、アレクは

あの悪魔め……。

絶対に処刑してやる……!

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