アサシンズブレード 殺し屋の聖剣

結木 夕日

残酷すぎる運命 序章

バルトゥナ遺跡を出る道中。

「本当にリョウ様が生き返って良かったです」

「うん……よかった……」

シュルラとサラサが、安堵の表情をしていた。

「まぁ、俺はこの世界で死んだら色々終わりだからな」

「そんな事ありません。リョウ様は絶対に死にません!」

シュルラの言う通りだな。

俺には、このドラゴンの命が宿っているんだ。

そう簡単に死にはしない。

「そういえば……ドラゴンの命って死なないの……?」

サラサが気になる事を言う。

「どうだろうな。まぁ、史上最強のモンスターだから死にはしないだろ」

俺は、そう答えた。

エンシェントキラードラゴンはずっと待ち続けていたんだろう……。

俺みたいな伝説のアサシンを継げる者を……。

良いぜ。

エンシェントキラードラゴン。

伝説のアサシンが何をしたのか知らんが、俺が継いでやる。

そして、俺に命を与えてくれたお前の強い意志、伝わってくるぜ。

そう思った瞬間。

ガァァァ!!!

「リョウ様っ!モンスターです!」

「チッ!」

俺は、咄嗟の判断でアサシンズブレードを振るう。

すると、一振りで熊のモンスターを倒した。

「結構大きめのモンスターだったのに一振りなんて、アサシンズブレード凄いですね!」

「すごい……」

シュルラとサラサが感心している。

確かに、ブーストナイトソードよりアサシンズブレードの方が強いな。

そんなブーストナイトソードは、オウロに刺さったまま灰となって消えてしまったからな。

武器屋のおっさんには申し訳無い。

だが、脅威の防御力を誇るハードゥンアーマーは、オウロとのタイマン勝負で結構消耗したが、まだまだ防御力はありそうだ。

そんな事を考えつつ、俺はシュルラとサラサと協力して、モンスターを倒していく。

アサシンズブレードとムゲンガンを駆使しながら。

そして、俺達はバルトゥナ遺跡1階層に着いた。

「ハァやっとですね」

「うん……ハァ……やっと……」

俺達は、かなりの体力を消耗していた。

「休みたいところだが、このままリアルスに帰るか」

「はい!ギルドで戦況を報告しに行くのですね!」

「行く……!」

俺達は、バルトゥナ遺跡を出て、リアルスに行くことに。












リアルスー。

ここは、人口50万人を超える街で、グレイリア家を中心に栄えている。

そんなリアルスに辿り着いた俺達は、ギルドに行くことに。

ギルドの扉を開け、中に入る。

すると

「あら。あなたたち、クエスト終わったのね」

ギルドのお姉さん・レイナが出迎えてくれた。

「終わったは終わったけど……」

俺は曖昧に言う。

そんな俺に、訝しげな表情をするレイナ。

そして俺は続けて言う。

「エンシェントキラードラゴンを倒すクエストは完遂していない」

「えー!そうなの!?」

驚きを隠せないレイナ。

「だけど、報酬としてエンシェントキラードラゴンの命とアサシンズブレードは貰った」

「どういう事?」

レイナは当たり前のリアクションをする。

「話せば長くなるんだが……」

今まで遭った事を俺はレイナに話す。

「そうだったの。色々苦労したのね」

「あぁ、そんな感じだ。まぁ、俺達は生きて戻ってきた」

「そうですよ!リョウ様は生死の境を彷徨った危険な状態から命からがら助かったのですよ!」

「うんうん……」

シュルラとサラサも危険な状態から助かったしな。

本当にあの時は絶望したな。

俺はあの時の記憶を思い出した。

「まぁそういう事だ。だから報酬は要らない」

「そう……」

話を聞いた限り、ハンザキリョウは通りすがりの女神に助けられた、って言ってたけど……まさか……ね。

それに、エンシェントキラードラゴンの命を授かり、報酬としてアサシンズブレードを貰い受け、伝説のアサシンを継いだ。

この冒険者……やっぱり只者では無さそうね。

「ハンザキリョウ、アサシンズブレードはとても貴重な剣なの。慎重に扱うこと」

「了解」

「あと……」

レイナが口ごもる。

「どうした?」

俺が聞くと、レイナが

「アサシンズブレードには、絶対守って欲しい掟があるの。それは……絶対に人前では出さないこと!」

と、強く言う。

何故、人前では出してはいけないんだ?

俺は、そう不思議がり

「何故だ?」

レイナに聞く。

「後々分かることよ。私の口から言えないわ」

レイナは、何故か理由を言えない。

アサシンズブレードには、一体どんな能力があるのか、俺には見当がつかない。

ただ、何か異様な雰囲気を感じる。

何なんだよ……これは……。

「まぁ、残念ながらクエストは完遂できなかったけど、良いじゃない。永遠の命と伝説のアサシンの剣を貰って」

「あぁ、そうだな」

確かにそうだ。俺には、この命と剣があるんだ。

そして、この運命に賭けて俺は、この世界を救済する。

絶対にこの任務、遂行してやる。

と、俺はそんな任務を背負うこととなる。

「で、この後どうするの?」

「そうだな。この街を散策しながら考えることにする」

「そう。分かったわ。クエストを受注したいのなら、またここに来て頂戴」

「了解。必ず戻ってくるぜ」

「ふふっあなたたちもよろしくね」

レイナがシュルラとサラサに微笑みかけた。

「は、はい!」

「うん……!」

そうして俺達は、ギルドを出た。

ハァ……。まさかハンザキリョウがアサシンズブレードを持つなんて思わなかったわ。

でも、アサシンズブレードの真実を知ったら、きっと絶望するんでしょうね。

果たして、この先どうなるのかしら。

と、レイナはそう思っていた。











「シュルラ、お前はアサシンズブレードのこと知ってるか?」

「……そうですね。良くは……知らないです」

声のボリュームを下げて、シュルラが言う。

「そうか、ならサラサは?」

「しらない……」

首を横に振りながらサラサが言う。

シュルラもサラサも知らないなんてな。

何なんだ……。このモヤモヤは……。

アサシンズブレードには一体何があるんだ……?

俺は、アサシンズブレードについて情報が知りたい。

どうやって知るんだ……?

そう悩んでいると、とあることを思い付く。

「武器屋のおっさんなら、何か知ってる筈だ」

「……!!」

きっとおっさんに聞いたら、何かしらの情報を入手できる筈だ。

そう思っていたら

「レイナさんが仰った通り、あまり人前では出さない方が良いと思います」

シュルラがその提案に反対する。

「大丈夫だ。おっさんなら」

「で、でも……私は反対します。行かない方が良いと思います」

そう頑なに反対するシュルラ。

「何故反対するんだ?」

「そ、それは……この先の事を考えると良くないと思ったからです」

良くない事?

何か良く分からんが、シュルラは何か知っているかのような口ぶりをしている。

怪しいな……。

でも、良くは知らないってシュルラが言ったんだ。

ここは深く追求しないようにしよう。

そう思い、俺は

「それでも俺は武器屋に行く」

シュルラの反対を押し切り、武器屋に行くことに決めた。

「リョウ様、正気ですか!?」

「あぁ、俺は正気だ」

何せ、アサシンズブレードについての情報が気になるんだ。

ここは行くしかない。

「そうですか……。私は止めたのに……」

シュルラが酷く落ち込んでいる。

すると突然、サラサが

「武器屋……初めていく……」
 
と、言う。

そういえばあの時、サラサいなかったな。

「よしっ、じゃあサラサも一緒に行くぞ。武器屋に」

「…………」

「うん……!」

落胆し、黙り続けるシュルラと、楽しみにしているサラサ。

そして俺達は、武器屋に再度行くことに。











長い道のりを経て、俺達は武器屋に辿り着いた。

「お前等、中に入るぞ」

そして、中に入る。

すると

「何だァ?」

奥の方からおっさんの声が聞こえた。

「また来たぞ。おっさん」

「おぉ、あん時の兄ちゃんじゃねぇか!久々だな」

「あぁ」

「しかも、一人増えたな」

「そうなんだ。まぁ奴隷だが、良い奴だ」

俺は、サラサを紹介する。

「ほう、まさか奴隷を買うなんてな。驚きだな」

おっさんが照れているサラサを見ながら言う。

「で、俺が無料であげたブレードナイトソードとハードゥンアーマーは使ってるか?」

「それなんだが、ハードゥンアーマーはまだ使える。だが、ブーストナイトソードは色々な事情で消えてしまった。申し訳ない」

「そっか。まぁ詳しい事情は聞かないが、ハードゥンアーマーはまだ使えるんだろ?なら、良いじゃねぇか」

おっさん。良い奴だな。

「で、それを伝えに来たのか?」

「いや、そうじゃない。実はこの剣について何か知らないか?」

俺は、アサシンズブレードをおっさんに見せる。

すると

「なっ!これは……アサシンズブレード!!」

驚きの表情をした。

まぁ相当珍しい剣だからな。

そして、続けておっさんが

「見損なったぞ。まさかお前が伝説のアサシンを継ぐなんてな」

少し怒りを含んだ言い方をした。

何故少し怒ってるんだ?

俺がそう思ったら、おっさんが

「帰れっ!!今すぐ!!一生、俺の前に現れんなっ!!」

突然、何故か人が変わったかのように怒り狂う。

「ど、どうした?おっさん!」

「帰れってんだ!ここから、いやこの街、世界から!」

おっさんの怒りが止まらない。

「この悪魔!お前なんて一生呪わればいいんだっ!!」

と、罵声を浴びせてくる。

何か察したのか、シュルラが言う。

「この人は、もう駄目です。今すぐここから逃げましょう!」

「何故だ?」

「早く!!この人が暴れたら私達は死んでしまいます!!」

「でも……」

「でもじゃありません!リョウ様らしくありません!さぁ、今すぐ逃げましょう!サラサちゃんも!」

俺達は、武器屋を出ることに。











どういう事だ……? 

何故、おっさんは人が変わったかのようになったんだ……。

くっ……。

状況が上手く飲み込めねぇ……。

「危なかったです!あのままだったら、リョウ様は確実に殺されていました」

「なっ!何故だ?」

「あの人は、呪われてしまいました。アサシンズブレードの呪いによって」

「アサシンズブレードの呪い?」

「はい。アサシンズブレードにかけられた呪いにより、あの人は理性を失い、暴れ回り、人々を殺すでしょう」

おっさんが殺人鬼になる?

あんな優しい人がなるなんて思わねぇ。

いや、思いたくない。

「チッ!」

「リョウ様っ!何処に!?」

「おっさんが危ないんだろ?だったら俺は武器屋に戻る!」

「そんな事したら……」

俺を止めるシュルラの手を振り払い、武器屋に戻る。

すると

「え?」

なんと、おっさんが血だらけの状態で死んでいた。

ウソ……だろ?

「お、おい!大丈夫か!」

俺は、おっさんに近付く。

息をしていない……。

完全に死んでいる……。

くっ……。

もっとはやく気付いておけば……!

「やはり手遅れだったのですね」

「シュルラ!」

「この人は、知らない人々を殺してはいけないという葛藤に対し、自分を抑えようと自殺したのですね」

そんな……。

どこまで優しい人なんだよ……。

「シュルラ!こんな事になると分かっていたのに、何故俺達を逃がした!」

「あのままだったら、私達は殺されていました」

「俺は殺されたって平気だ!何せこの命があるんだ。どうってことない」

「アサシンズブレードの呪いは、死ぬまで殺すという恐ろしい呪いです。リョウ様も死んでしまいます」

くっ……。

なんて呪いだ……!

「シュルラ、お前何故、アサシンズブレードについて良く知ってんだ?」

「それは……」

「さっき言った筈だ。良くは知らないって。深く追求しなかったが何故……」

「話したく……ありません」

「お前が早く教えていればこんな事にならなかったんだ!」

「だから私は止めたのですよ。きっとこんな事になると」 

そんなの……おかしいだろ……!

「すいませんリョウ様。本当はアサシンズブレードについて良く知ってます」

「だったら、何故……」

「グレイリア家の方針でアサシンズブレードについての話は固く禁じられています」

…………。

「だから、話せません……」

何なんだよ……。

グレイリア家とアサシンズブレードにはどういった関係があるんだ?

アサシンズブレードの呪いって何だ?

伝説のアサシンは昔、何をしたのか?

ますますアサシンズブレードについて気になったじゃねぇか。

そして、俺達はまだ知る由もなかった。

このアサシンズブレードは、世界を滅ぼすほどの力があると。

そして始まった。

残酷すぎる運命が……。

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