アサシンズブレード 殺し屋の聖剣

結木 夕日

バルトゥナ遺跡1階層と2階層

「ここがバルトゥナ遺跡ですね」

地図を頼りに、俺達はバルトゥナ遺跡を訪れた。

バルトゥナ遺跡ー

それは、全5階層になっていて、下層になるにつれ、モンスターが強くなる古代遺跡。

レイナの情報によると、1階層はスライムやゴブリン等の雑魚モンスター。

所謂、初級冒険者向けの階層だ。

2階層はゾンビ、スケルトン等のアンデッドが蔓延っている。

3階層は一角ウサギ、火蜥蜴(ひとかげ)、オオカミ男等の猛獣が蔓延っている。

所謂、中級冒険者向けの階層だ。

4階層はゴーレム、ミノタウロス、グリフォン等のモンスターが蔓延っている。

そして5階層には、ターゲットとなるエンシェントキラードラゴンがいる。

「準備はいいな?お前等」

「はい!私は準備万端です!」

「サラサも……準備……いい……!」

早速、俺達は1階層に入ることに。











1階層

目の前にスライムが立ちはだかる。

「シュルラ!お前がスライムを倒せ!」

「はい!分かりました!」

シュルラはスライム目掛けて、ノーマルソードを抜く。

「はぁぁぁぁーー!!」

シュルラの剣さばきにより、スライムは真っ二つに。

「やりました!念願の剣でモンスターを倒しました!」

と、戦った後の達成感を感じたシュルラ。

「こんな感じなんですね。凄い気持ちいいです!」

それと共に、シュルラのステータスが上がった。

どうやらゲームと同じ仕組みで、モンスターを倒す毎にステータスが上がるのだろう。

これなら、すぐに中級冒険者になれる。

その光景を見ていたサラサが

「サラサも……戦いたい……!」

戦いたい欲求が溢れてきた。

「分かった分かった。サラサもスライム倒してくれ」

「うん……」

すると、サラサの前にもスライムが。

「レイナから貰った……この短剣で……サラサも……」

そう言い、目にも止まらぬ速さで、サラサはスライムを真っ二つに。

す、すげぇー。

サラサこんな特技持ってたんだな。

「サラサ、お前凄いな」

サラサにそう、褒めると

「へへ……リョウ様に……褒められた……」

嬉しそうな表情をした。

「ちょっとサラサちゃん!あんな特技持ってるとは聞いてないですよ!」

「だって……聞かれてないもん……」

「むぅ……だったら、私とどちらがスライムを多く倒せるか勝負しましょう!」

おいおい、シュルラが対抗心燃やしてきたぞ。

「本当にいいのか?そんな無謀な勝負」

「無謀なわけありません。私は不可能を可能にしますから」

凛々しくなったなシュルラ……。

「シュルラちゃんが……いいって言うなら……勝負する……」

「はい!望むところです!」

今からシュルラとサラサの勝負が始まるのか。

見届けたい気持ちはあるが、俺にはやらなきゃいけないことがある。

「俺は、周りにいる雑魚モンスターを倒す」

「リョウ様も頑張ってください!私ももっと頑張りますから」

「じゃあ……始め……!」

2人一斉に走り出し、物凄いスピードでスライムを倒すサラサ。

そして、不利な状況でも一心不乱に戦い続けるシュルラ。

どう見てもサラサの方が上だが、それでも尚、剣を振るい続けるシュルラ。

その光景を見ていた俺は、クライアントとの銃撃戦を思い出した。

くっ……。

あぁもう鬱陶しい……!

「おいゴブリン、俺のこのブーストナイトソードで一網打尽にしてやるっ!」

ゴブリンを挑発する。

「行くぞ!はぁあああああーー!!」

シュルラとサラサの勝負を見て、火が付いたのか俺も負けじと剣を振るう。

やがて、スライムやゴブリン等の雑魚モンスターは倒されていき、最終的には1階層に蔓延るモンスターを全部倒した。

「これで、1階層のモンスター全部倒したな」

「そのようですね」

「勝負……どっちが……勝った……?」

「私、気になります!」

さて、勝負の行方は……。

「引き分けだな」

スライムを多く倒した方が勝ちというこの勝負は、ステータスを見れば勝敗は一目瞭然で分かる。

2人のステータスを見たら、2人とも同じだったのだ。

「そ、そんな……」

「せっかく……頑張ったのに……」

酷く落ち込むシュルラとサラサ。

「まぁ、これが結果だからな。しゃーねぇよ」

「サラサちゃんに勝ちたかったです……」

「私も……シュルラちゃんに……勝ちたかった……」

2人とも結構頑張ってたから、これは後で勝敗つける為に別の勝負をした方がいいな。

そう思いつつ、俺達は2階層へ行くことに。








2階層

アンデッドの溜まり場とされる2階層。

雰囲気が怪しく感じる。

「何だか不気味です……」

「リョウ様……怖い……」

あまりの恐怖に怯える2人。

そんな2人を見て、俺は

「大丈夫だ2人とも、俺がすぐに片付けてやる」

と、意気込む。

目の前にゾンビやスケルトンが現れたと共に、すぐにブーストナイトソードでたたっ斬る。

多少、攻撃が当たったとしてもこのハードゥンアーマーの防御力のお陰で全然効かない。

「相変わらずリョウ様は凄いです!」

「さすが……リョウ様……」

感心する2人。

すると、2人の目の前にアンデッドの大群が襲い来る。

「シュルラ、サラサ、危ないっ!」

2人を助けようと駆け寄るが、アンデッドの大群が次々と倒されていく。

「私も、負けません!」

「リョウ様……心配しないで……サラサ……強いから……!」

お前等……。

「頼りにしてるぞ」

「はい!私とサラサちゃんでリョウ様を援護します!」

「任せて……」

2人の援護のお陰でスムーズに2階層のモンスターを次々倒していく。

そしていよいよ3階層に繋がる階段を見つける。

「次からは、中級冒険者向けの階層だから、気を抜くなよ」

「はい!」

「頑張る……!」

意気込む2人。

すると

ガブッ!

「っ!!リョ、リョウ様っ!」

「シュルラ、お前どうした!?」

シュルラの後ろを見ると、なんとヴァンパイアがシュルラを襲い、血を吸ったのだ。

「チッてめぇーーー!!」

俺がヴァンパイア目掛けて、ブーストナイトソードを振るう。

しかし、攻撃が当たらず消えていった。

サラサが

「聞いた事ある……この世界のヴァンパイアは……ゴーストだって……」

と、怯えながら言う。

何!?

にしても何故、ダンジョンにヴァンパイアが?

そもそもヴァンパイアがゴーストだって聞いてねぇぞ。

全然気付かなかったぜ。

いや、今はそれどころじゃねぇ。

シュルラの容態は……。

「リョ、リョウ様……苦しいです……体中にヴァンパイアの毒が回り……」

何だって!?

普通ヴァンパイアって血を吸うだけの怪物じゃねぇのかよ!

サラサがまたしても

「リョウ様……この世界のヴァンパイアは……血を吸い、更に……自分の毒を入れるって……」

と、怯えながら言う。

マジかよ……。

この世界のヴァンパイアおかしいだろ。

「サラサ、お前解毒剤持ってるか?」

「……持ってない……」

チッやっぱりか。

このままヴァンパイアを探して倒しても、シュルラの体はもう……。

そう悩んでいると

グワァ!

「リョウ様……危ない……!」

え?

「……うわぁぁぁ!!」

なんと、俺が悩んでいる隙にゾンビやスケルトン等のモンスターが俺目掛けて襲い掛かり、サラサが抜群の速さでその攻撃を体で止めたのだ。

サラサお前、庇ったのか……。

サラサの体にスケルトンの矢が刺さり、更にゾンビに噛まれたのだ。

「痛い……痛い……」

くっ……。

自分を犠牲にしてまで俺を守ろうと……。

シュルラは毒に苦しみ、サラサは体中の痛みに苦しんでいる。

一体、どうすればいいんだ……!

すると

「リョ、リョウ様……」

瀕死の状態で喋りかけるシュルラ。

「シュルラお前は喋るんじゃねぇ!」

「私のバッグに……解毒剤……入ってます」

「本当か!?」

そう言われ、俺はシュルラが持つバッグの中身を漁る。

中には、回復薬と解毒剤入りのポーションが沢山入っていた。

「これか」

「はい……」

「よしっ」

俺は、バッグから解毒剤入りのポーションを取り出し、シュルラに飲ませる。

「ゴクゴクゴク」

「これで、少しはマシになっただろう」

「はい……休めばあとは何とか……」

そして、シュルラを隅に寝かせた。

よし、シュルラの件は何とかなりそうだ。

後は、サラサか……。

「痛い……痛いよ……リョウ様……」

痛みに苦しむサラサを見てると、クライアントに殺される俺が脳裏に浮かぶ。

くっ……。

あぁもう何なんだよ……!

俺は、サラサの方に行き、回復薬をサラサに飲ませる。

「ゴクゴクゴク」

「サラサ、大丈夫か?」

「……まだ、痛い……」

チッこうなったら

「痛いだろうけど、我慢してくれ」

俺は、サラサの体に刺さった矢を抜く。

それとと共に、サラサの体から大量の出血が。

「あぁぁぁぁ!!!」

というサラサの悲痛な叫び声。

「すまんな、サラサ」

謝りながら、俺は全部の矢を抜く。

辛いだろう……。

苦しいだろう……。

でも、我慢してくれ。

見るに堪えない状況でも、俺は躊躇なく矢を抜く。

そして、サラサの体に刺さった矢は全部抜かれた。

ハァ……ハァ……

これで後は、ゾンビに噛まれた怪我をどうするか……。

息を切らしながら考える。

すると、

「……もう……止めて……!」

サラサがそう言った。

「何故だ?」

「……ゾンビに噛まれた人は……その人も……ゾンビになるから……もう……手遅れ……」

チッ何故この世界のゾンビは普通なんだよっ!

「諦めるんじゃねぇ!サラサ!お前はゾンビになんてならせねぇ!いや、ならせてたまるかぁ!!」

俺は、サラサの体に回復薬をぶち撒ける。

回復薬全部使い切るまで、俺は撒き続ける。

頼む……!

回復薬まだあってくれ……!

そう、願い続けた。

 







クソ……!

回復薬全部使い切っちまった……!

サラサの体から未だに血が噴き出している。

「……痛い……痛い……リョウ様……シュルラちゃん……助けて……」

またサラサが痛い目に遭っている。

そんな状況、放っておけねぇけど今、俺は何も……。

残酷すぎるだろ……!

落胆する俺の前に、現れた1人の女神。

「リカバーンドヒール!!」

「っ!!」

突如、現れた女神により、シュルラとサラサの体はあっという間に全回復した。

「お、お前っ!!」

「これでよしっと」

何なんだ今の回復魔法は……。

そして、この女神は一体誰なんだ?

「んー2人とも無事みたいね。あたしがいなかったら危なかったわ」

「お前、誰なんだ?」

「あーあたし?そうね。あたしは、通りすがりの女神よ!」

ウソ……だろ……?

「あたし、この階層である薬草を取りに来たんだけど、ちょうど瀕死の人と眠っている人、そして絶望に打ちひしがれているあなたを見かけて、このあたしの華麗な回復魔法で回復したってことね」

説明している彼女に対し、俺は沈黙する。

「…………」

沈黙を貫き通している俺に気付いた彼女は

「んー聞いてるの?」

と、聞いてきた。

「……感謝する」

俺がそう言ったら、彼女は動揺した。

「えー!!急になに!?びっくりしたんだけど!!」

そして俺は、続ける。

「お前がいなければこいつらは……こいつらは……。くっ……本当に感謝する……!!」

「分かった分かったわよ。つまりあたしは、あなたの女神でもあり救世主でもあるってことね」

「あぁ、そういう事だ」

「良い響きね。ふふっ助けた甲斐があったわ」

「あぁ……」

「それにしてもあなたたち何故あんな状況になったのかしら」

彼女の質問に俺は、こう答える。

「俺にも分かんねぇよ……!」

悔しさと絶望に叩き落とされたような声色と表情をした。

「ふ~ん、まぁいいわ。2人とも安静にしてた方がいいわね」

「そうだな……でも……俺は……まだ……戦える……」

「駄目よ。あなた結構疲れたんじゃない?あなたも休憩したら?」

「いや……俺は……まだ……」

彼女の誘いを断る俺。

すると

「ハァ これあげるから、あなたも休憩して」

俺に、回復薬入りのポーションをあげた彼女。

「……いいのか?」

「えぇもちろん。あなたたち回復薬無いんでしょ?代わりにあげるわ」

「本当に感謝する……!!」

「はいはい。どれだけ感謝してるのよ。じゃ、この先危険だから気を付けて行ってね」

「あぁ」

「あーあと、またあんな状況になっても、あたしもう助けないからね。あなたが命を賭けて守るのよ」

「あぁ、絶対に守ってやる……!」

「顔つきが変わったわね。それなら安心」

そう言い、彼女は去っていった。

俺は、人に助けられてばっかりだ。

元・殺し屋で、最強の武器・防具を装備、装着しているのに……。

くっ……。

俺は、2人を助けられなかった。

1人で守るって言ってたじゃないか。

俺は……バカか……!

そう思いつつ、俺は彼女に貰った回復薬を飲み、やがて眠りについた。








数時間が経ち、俺は目覚める。

「ん……」

また知らない天井だった……。

そうか。

俺は、モンスターがいないダンジョンの隅で寝ていたのか。

すると、シュルラとサラサも目を覚ました。

「あれ?私、ヴァンパイアに噛まれて毒に苦しんでいた筈なのに……」

「……私……リョウ様を守ろうと思って、飛び出したら襲われて……」

2人は困惑する。

覚えてないんだな。

そりゃそうか。思い出たくないもんな。

「お前等、元気そうだな」

「リョウ様も元気そうでなによりです!」

「リョウ様が……サラサたちのこと……助けてくれたの?……」

サラサの質問に対し、俺は嘘で誤魔化す。

「あぁ、俺が助けた」

「本当……ですか?」

「あぁ、そうだ」

「リョウ様……」

強く抱きついてくるシュルラとサラサ。

痛い痛い痛い。

これは、デジャブか。

「私達を助けてくれて、ありがとうございます!」

「リョウ様……ありがとう……!」

シュルラとサラサは満面の笑みだった。

俺は、この笑顔を一生守りたい。

シュルラとサラサを死なせたくない。

元・殺し屋にあってはいけない感情が湧き上がってくる。

異世界転生した目的は、多分この2人を守る為だと思う。

その目的、いや任務、俺が必ず遂行してやるっ!

何がなんでもこの2人を救ってやるっ!

俺は、固く心に誓った。

そして俺達は、もう一度目を瞑り、静かに眠った。

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