Bluetoothで繋がったのは学校1の美少女でした。

穂村大樹

第102話 暗い影

俺と楓は風磨と花宮が先ほどキスしていた場所を離れた頃にもう一度イルミネーションを見に行く事にした。

風磨と花宮のキスを目撃したことで、俺と楓の間には微妙な空気が流れている。
こんな空気のままでは告白もへったくれもあったもんじゃない。

「今のキスは見なかった事にしよう」

俺は楓に風磨と花宮のキスを見なかった事にしようと提案した。そうすれば微妙な空気は元通りになると考えたからだ。

「そうだね。風磨と花宮さんにも申し訳ないし、見なかった事にして忘れよう」

楓が俺の提案をすんなり承諾してくれたおかげでその後は楓と普通に話せる様になった。

予想もしていなかったまさかのハプニングだったが気を取り直してイルミネーションを楽しむことにしよう。

俺たちは風磨と花宮のキスを目撃したイルミネーション本会場へと戻ってきた。

「やっぱ綺麗だなぁ」
「ほんと、すごい綺麗」

辺り一面見渡す限りのイルミネーション。クリスマス仕様に赤や緑で光る電飾に加えて聞き馴染みのあるクリスマスソング。デートにはもってこいだな。

イルミネーションの光りは小さなライトの集まりで出来ている。一つで光らせればちっぽけな光も、大量に集まればこれほどまでに綺麗に輝くと考えると侮れない。

この景色を楓と一緒に見られて良かった。横にいるのは間違いなく楓であり声優の日菜なのだから、嬉しくないわけがない。

それに、楓は高校を卒業したら上京してしまう。最後に貴重な思い出を作ることが出来た。

あとは俺が楓に告白の返事をするだけ。

こんなところまで来てまだ答えが出ないだなんて、優柔不断にも程があるな……。

「あ、ちょっと電話出てくる。そこで待ってて」

楓は急にかかって来た電話に出るために楓はこの場を離れた。
告白の返事が決まっていなかった俺には丁度良い時間だ。

長くても5分程度で戻ってくるかと思い焦って告白の返事を考えていたが、楓は10分を過ぎても元の場所に戻って来ない。

迷子にでもなったか? 心配になり探しに行こう1歩踏み出した瞬間、楓が小走りで戻ってきた。

「遅かったじゃないか」
「祐‼︎ 大変」

トイレから戻って来た楓は息を切らしている。大変とは何事だ?

「大変? トイレ間に合わなかったか?」
「そゆことじゃない。祐奈ちゃんが急に倒れて病院に運ばれたらしいの」
「え、祐奈が⁉︎」
「うん。駅前の病院に運ばれるらしい。風磨にも連絡して病院に行くように言ってあるから早く行ってあげて」
「わ、分かった。楓は行かないのか?」
「私もすぐ行くから、先行ってて」
「え、でも一緒の方が……」
「早く行って‼︎」
「わ、分かった。じゃあ先行くわ」

楓から急に聞かされた事実は衝撃的だった。

俺は状況もを飲み込めないまま急いで病院に向かった。

祐奈はなぜ急に倒れたのだろうか。理由も病状も全く分からない。
情報が足りなさすぎる。

祖父母も両親もまだピンピンしている俺は誰かの死を経験したことがない。
流石に生死に関わるほどの病状ではないと思うが、不安でならない。

無事でいてくれ……。

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