Bluetoothで繋がったのは学校1の美少女でした。
第94話 譲れないもの
下校するにも手袋とマフラーが手放せなくたってきた12月初旬、私はいつも祐くんと一緒に行くヤイゼリヤにいた。
季節は完全に冬へと移行し、窓の外に見える空は雲で覆い尽くされ今にも雪が降り出しそうだ。
「……なんの用? 急に2人で話がしたいって」
私の前にはいつも通り学校モードの楓さんがいた。
楓さんが声優の日菜だと知った時は流石に嘘だろうと決め付けていたが、楓さんが学校に戻ってしばらくしてから実際に声を聴かせてもらった。
祐くんと一緒に日菜のライブに行った私が日菜の声を聞き間違えるはずがない。それは間違いなく本物の日菜の声だった。
ファンとして本物の日菜の声を目の前で聞けた嬉しさは確かにあった。
その反面、あまりにも強力なライバルの出現に思わず後退りしそうになる。
楓さんはおそらく祐くんに恋をしている。私の予想が当たっているかどうかを確認するため、私は楓さんをヤイゼリヤに呼び出した。
「唐突でごめんなさい。……楓さん、祐くんの事が好きですよね?」
「うん。好き」
私の質問に間髪入れずに肯定をした楓さんは頬を赤らめつつも柔らかく微笑んでいた。
その表情はいつもの楓さんでもなく、日菜でもなく、恋をしている女の子そのものだった。
「祐奈ちゃんは? 祐のこと好きじゃないの?」
「……好き……です」
予想以上に鋭いカウンターに反応が遅れてしまう。
祐くんを好きだと言う事を恥ずかしがっている時点で楓さんに負けているような気がしたが、他人に異性である祐くんを好きだと言っているというのに恥ずかしがらずにはいられなかった。
「じゃあ私達、ライバルだね」
「そう……なりますね」
私が今日楓さんをヤイゼリヤに呼び出したのは、楓さんが祐くんを好きか否か確認するだけではなく、もう一つ伝えたい事があった。
「私、楓さんが上京するために学校を休んでいた日、祐くんを屋上に呼び出していたんです」
「……へぇ。告白したの?」
「いえ、告白はしていません。祐くんは屋上に来なかったので……。でも、祐くんが屋上に来なかったのは楓さんを連れ戻すためだったんですよね。それなのに私、祐くんの事を責めてしまって後ろめたさがあるんです」
私は未だに、祐くんと楓さんが付き合っていると勘違いして2人の事を一瞬でも嫌いになった自分を許せていなかった。
まずは楓さんに謝罪をしなければ、そして伝えたいことはもう一つ。
「それは私も悪い事をしちゃったね。ごめん」
「いえ、私は祐くんと楓さんに申し訳ない事をしたんです。どれだけ謝っても謝りきれません。だから……。ク、クリスマスは楓さんに譲ります」
そう、私が楓さんに言いたかった事、それはクリスマスを祐くんと一緒に過ごす権利を楓さんに譲る事だった。
「いいの? 私、遠慮なく譲られちゃうけど」
「はい。大丈夫です」
「本当に? 祐奈ちゃんにとってそれは譲れないものなんじゃないの?」
「譲れ……ないです。でも譲ります」
「……そう。覚悟はしてきたんだね。でも、祐がクリスマスに予定があるって事もあるんじゃない?」
「いや、祐さんに限ってそれはないです」
「……だね」
最後に楓さんと2人で祐くんをディスった私は、どこかで祐くんがくしゃみをしているような気がした。
季節は完全に冬へと移行し、窓の外に見える空は雲で覆い尽くされ今にも雪が降り出しそうだ。
「……なんの用? 急に2人で話がしたいって」
私の前にはいつも通り学校モードの楓さんがいた。
楓さんが声優の日菜だと知った時は流石に嘘だろうと決め付けていたが、楓さんが学校に戻ってしばらくしてから実際に声を聴かせてもらった。
祐くんと一緒に日菜のライブに行った私が日菜の声を聞き間違えるはずがない。それは間違いなく本物の日菜の声だった。
ファンとして本物の日菜の声を目の前で聞けた嬉しさは確かにあった。
その反面、あまりにも強力なライバルの出現に思わず後退りしそうになる。
楓さんはおそらく祐くんに恋をしている。私の予想が当たっているかどうかを確認するため、私は楓さんをヤイゼリヤに呼び出した。
「唐突でごめんなさい。……楓さん、祐くんの事が好きですよね?」
「うん。好き」
私の質問に間髪入れずに肯定をした楓さんは頬を赤らめつつも柔らかく微笑んでいた。
その表情はいつもの楓さんでもなく、日菜でもなく、恋をしている女の子そのものだった。
「祐奈ちゃんは? 祐のこと好きじゃないの?」
「……好き……です」
予想以上に鋭いカウンターに反応が遅れてしまう。
祐くんを好きだと言う事を恥ずかしがっている時点で楓さんに負けているような気がしたが、他人に異性である祐くんを好きだと言っているというのに恥ずかしがらずにはいられなかった。
「じゃあ私達、ライバルだね」
「そう……なりますね」
私が今日楓さんをヤイゼリヤに呼び出したのは、楓さんが祐くんを好きか否か確認するだけではなく、もう一つ伝えたい事があった。
「私、楓さんが上京するために学校を休んでいた日、祐くんを屋上に呼び出していたんです」
「……へぇ。告白したの?」
「いえ、告白はしていません。祐くんは屋上に来なかったので……。でも、祐くんが屋上に来なかったのは楓さんを連れ戻すためだったんですよね。それなのに私、祐くんの事を責めてしまって後ろめたさがあるんです」
私は未だに、祐くんと楓さんが付き合っていると勘違いして2人の事を一瞬でも嫌いになった自分を許せていなかった。
まずは楓さんに謝罪をしなければ、そして伝えたいことはもう一つ。
「それは私も悪い事をしちゃったね。ごめん」
「いえ、私は祐くんと楓さんに申し訳ない事をしたんです。どれだけ謝っても謝りきれません。だから……。ク、クリスマスは楓さんに譲ります」
そう、私が楓さんに言いたかった事、それはクリスマスを祐くんと一緒に過ごす権利を楓さんに譲る事だった。
「いいの? 私、遠慮なく譲られちゃうけど」
「はい。大丈夫です」
「本当に? 祐奈ちゃんにとってそれは譲れないものなんじゃないの?」
「譲れ……ないです。でも譲ります」
「……そう。覚悟はしてきたんだね。でも、祐がクリスマスに予定があるって事もあるんじゃない?」
「いや、祐さんに限ってそれはないです」
「……だね」
最後に楓さんと2人で祐くんをディスった私は、どこかで祐くんがくしゃみをしているような気がした。
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