Bluetoothで繋がったのは学校1の美少女でした。
第92話 お詫びと激励
東京から帰宅した次の日の朝、俺はいつもの通学路をいつもより背中を丸め、肩を落として登校中だ。
昨日家に帰宅した時間は思っていたよりも早く、寝る時間は大いにあったので東京で疲れていた体を存分に休めることが出来た。
しかし、疲弊した心までは回復しなかったようで姿勢が悪くなっていると言うわけだ。
老人のような姿勢のまま、駅のホームで電車を待っている。
俺が乗ろうとしている扉の隣の列には祐奈がいる。
俺と祐奈は学校で話すようになってからも一緒に通学することはなく、何故か今でも電車の中でBluetoothを繋ぐ関係が続いている。
試しに祐奈のBluetoothに俺のスマホが接続できるか試してみるが、未接続のまま、表示が接続済みに変わる事はなかった。
やはり俺が約束を破って屋上に行かなかった事を怒っているのだろう。
せめて連絡くらいしてくれても良いだろうと思うのが当然だからな。
俺は楓を地元に残らせることに成功したが、祐奈との関係は悪化してしまった。
ショックを受けたが、悪いのは自分なのでショックよりも納得の方が大きかった。
教室に到着した俺は教室を見渡すが楓の姿は見当たらない。
俺より先に教室にたどり着いていた風磨に話しかける。
「心配かけたな」
「お前すげぇよ。よくやった。楓がいなくなったらあと半年、不完全燃焼って感じだからな」
「運が良かっただけだよ」
風磨との会話よりも楓が教室に入ってきたときに、大騒ぎにならないかが心配で、教室の入り口をチラチラと確認している。
「そんなに気にしなくても大丈夫だぜ」
「何が大丈夫だって?」
そして楓が教室に入ってきた。
すると会話をしていたクラスメイトは一度楓の方を見るが、何事もなかったかのように会話を再開した。
「おはよ」
「お、おう。おはよ」
楓はみんなに囲まれることなく俺たちの元へとたどり着いた。
俺はあまりにもあっさりとしたクラスメイトの反応に呆然とした。
「なぁ風磨、もうみんなは楓が日菜だってこと知ってるんだよな?」
「ああ。知ってるとも」
「じゃあなんでこんなに静かなんだ?」
「祐奈ちゃんのおかげだよ」
「祐奈のおかげ?」
祐奈は俺が約束を破って屋上に行かなかった事に腹を立てていると思っていたのだが、祐奈は何をしてくれたんだ?
「お願いだから、楓さんが学校に戻ってきても皆さん普通に接して下さいってあちこちお願いして回ってたよ。あと半年の学校生活を普通に過ごしてほしいからって。もちろん俺も協力したけどな」
そのお願いを全校生徒にしようもんならよほどの体力と時間がいる。
勝手に祐奈は怒っているのだと思っていたが、そういうわけでもなさそうだ。
放課後に、祐奈と話をしよう。
そして放課後、俺は勇気を出して祐奈に声をかけた。
休み時間はビビって声をかけられなかったのは内緒の話。
「ゆ、祐奈。一緒に帰らないか?」
冷たい目で見られるのではないかと目を閉じたくなるが俺は笑顔を保った。
しかし祐奈は、俺の思っていた反応とは180度違う反応をしてくれた。
「はい‼︎ 一緒に帰りましょう‼︎」
え、なんでそんな元気なの?
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