Bluetoothで繋がったのは学校1の美少女でした。

穂村大樹

第89話 初対面


目を覚ました俺はベッドの上に座り、寝ぼけた頭で現在の状況を確かめる。
楓は俺より先に起床して出発の準備を進めていた。

髪は酷い寝癖が付き虚な目をした俺とは違い、着々と身支度を進めている。

「おはよ。ぐっすり眠れたみたいだね」
「……すまん。早く起きて準備しないといけないのに」
「いいよ。祐は男の子なんだから、女の子みたいに身支度に時間かからないだろうし」

そう言われてから楓の顔を見ると、普段の楓のメイクとは違いアイラインはいつもより微妙に長く、ファンデーションや口紅を濃く塗った日菜のメイクをしていた。

「女の子はメイクとかも時間かかるし、早く起きないと間に合わないんだよね。ほら、ボーッとしてないで寝癖直してきなさい」

楓に言われるがまま洗面所に向かい、寝癖を治して昨日買ってもらった服に着替える。

学生服だとチェックアウト時にホテルのスタッフに勘付かれるし、何かと行動に支障が出そうなので昨日の服のままで行くことにした。

マネージャーと待ち合わせをしているカフェは俺たちが宿泊したホテルから程近い場所にあるらしい。

昨日買っておいたパンを2人で食べた後でチェックアウトを済まし、ホテルを出た。

何を言われてもいいように気を強く持たなくてはならない。

10分程歩いて目的のカフェに到着すると、楓が指を刺す。

「あの人。あそこに座ってる人が私のマネージャーさん」
「ん? どの人だ?」
「あの人だよ。後ろで髪結んでる人」
「あ、マネージャーって女の人なのか?」
「そうだよ。むしろ何で男だと思ってたの」
「いや、無理にでも楓に学校辞めさせるような人だから、ゴリゴリの男の人かと思ってた」
「そんなわけないでしょ。普通に女の人だよ」

マネージャーが女性だと分かった瞬間、緊張は若干ほぐれた。
強面の男の人と対峙するより、女性の方が話も通じそうだ。

そして俺と楓はカフェの中へと入って行く。店員に待ち合わせをしていると伝えると、マネージャーが座っている席へと案内された。

「やっと東京に来てくれて嬉しいわ」
「……はい」
「約束通り学校はやめてもらうから」
「……」

このマネージャー、女性だと思って侮っていると痛い目をみそうだ。
冷たい眼光が楓に向かって浴びせられている。

「ところで横にいる男性は?」
「ほ、僕は楓さんの同級生です」
「楓って言うんじゃないわよ。この子は今日、日菜として私と打ち合わせをしに来たの。本名で呼んだら日菜の本名が周りに知られるかもしれないのよ?」
「……すいません」

た、だめだ。めちゃくちゃ怖い。

日菜とは違うグラマラスなボディでありながら、四肢は細々としており女性らしいラインを描いている。
それでいて鋭く冷たい目つきは何者も寄せ付けないと言ったやる気すら感じられる。

「それで、その同級生が日菜に何の用?」
「……学校を辞めさせないでください」
「ダメよ」

ですよねー。

分かり切っていたノーという返事に俺は肩を落とした。

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