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Bluetoothで繋がったのは学校1の美少女でした。

穂村大樹

第88話 再確認

楓が入浴している間、俺は大音量でテレビを見て心頭滅却していた。
心頭滅却すれば火もまた涼し。煩悩を消し去らなければ。

「何やってんの? 正座して大音量でテレビ見て」

風呂から上がった楓が部屋に戻って来た。風呂場から石鹸のいい香りが漂ってくる。

「テレビの音が聞こえづらくてさ……」

楓は薄緑色のパジャマを身につけ、濡れた髪を丁寧にタオルで拭きながら部屋に出てきた。

「どしたの?」
「あ、いや、なんでもない」

濡れた髪をタオルで拭いている楓の姿に見惚れてしまったと言えるわけもなく、楓の後で風呂に入った俺は心の中で心頭滅却の言葉を繰り返した。



風呂から上がると楓はベットに寝転んでスマホを弄っていた。

「エゴサーチか?」
「んーまあね。日菜だって事はばれちゃったわけだし、どんな反応されてるのかなって」
「どうだ?何か書かれてるか?」
「うん。同じ学校の生徒もみんな驚いてるみたい」
「驚かれちゃ困るんだけどな……」

みんな驚いている、という事はやはり楓が日菜だという事実はすでに広まっている。
マネージャーに気づかれる前に運良く外堀が冷めないかと淡い期待を抱いてはいたが、その期待はあえなく散った。

「そろそろ寝る? 明日も早いし」
「そうだな。特にやることもないし」
「へぇー何もしないんだ」
「な、なにもしねぇよ!!」

何もしないという言葉とは裏腹に、俺は自分の欲を抑えつけるのに専念していた。
俺と楓は同じ布団に入る。ダブルベッドのため、掛け布団も1人分しかない。
楓に触れてしまわないように出来るだけ布団の端に寄った。

「電気消すぞ」
「はーい」

電気を消すと、外から差し込む街頭の淡い光以外はほぼ何も見えない。横に寝ている楓の顔が薄らと目に写る程度だ。
狭い部屋の中で、俺が寝ているベッドの横には大人気声優の日菜が寝ている。

しばらくすると楓の寝息が聞こえてきた。

楓の寝顔が気になった俺は慎重に、気付かれないように楓の方を見て目を瞑って寝ている姿をしばらく見つめ続けた。

「こんばんわ」
「うわっ。まだ起きてたのか」

閉じていた目が急に開き、俺の方をまっすぐ見つめる。
寝たフリをして俺が楓を見た瞬間に目を開けるという作戦は成功し、したり顔をしている楓は幼少期の悪戯っ子のようだ。

「うん。なんか眠れなくてさ」
「起きてるなら最初から言ってくれ。びっくりしただろ」
「ごめんごめん。……ありがとね。こんなところまでついて来てくれて」
「むしろ迷惑じゃなかったか? 気を遣わせてるだけなんじゃないかと思って」
「そんなわけない。本当に嬉しい。自分でも気づかないうちに誰かの手助けをしてる祐が私は大好き」

改まって好きと言われると気恥ずかしく、顔を背けてしまう。
大好きだった日菜に告白されて、好きだと言ってもらえた。こんな幸せは他にない。

「俺は自分を優しいと思った事は1回も無いけどな」
「私はそう思うよ」

真っ暗でお互いの姿が見えづらいせいか、普段は言いづらいこともすんなり話すことが出来た。

「手握っていい?」
「は? な、なんで?」
「いいでしょ?」
「……まあいいけど」

楓に手を握られる前に、手汗を拭いた俺は楓の前に手を差し出す。
楓の手は男ではありえない程柔らかくてか細い。
何故か冷え切っているその手を俺はそっと握り返す。

「俺さ、楓が学校からいなくなるのが本当に嫌なんだよ」
「……うん」
「楓がいない日常を考えても全然楽しく無いんだ。風磨も祐奈もいるけど、誰か1人が欠けてしまったら成り立たないっていうか……」
「ありがとね。そう言ってくれて」
「明日は絶対楓が学校に通えるように説得する」
「ありがと。祐を好きって気持ちを再確認出来た。本当に祐を好きになって良かった」

柄にも無い事を口にしている自分に対して疑問を持つ事はなかった。

暗闇の中で会話をしていた俺たちは話疲れたのか、すっと眠りについていた。

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