Bluetoothで繋がったのは学校1の美少女でした。
第79話 捜索
俺は今から学校の屋上に祐奈の話を聞きに行かなければならない。
しかし、屋上に向かう途中でとんでもない事実を耳にしまった。
楓が声優の日菜として仕事をしている事が知れ渡っていたのだ。
風磨に声優の日菜がこの街に住んでいるという噂があると聞いた時、まさかそれが楓の事だと気付かれる事はないだろうと楽観的に考えていた。
この噂がどこまで拡散されているのかは分からないが、噂は光の速さで広まるもの。
今はまだ数人しかこの事実を知らなくとも、1日経過すれば楓が声優の日菜として活動していると言う事実は全校生徒に広がると言っても過言ではない。
とりあえず、楓に連絡を……。
そう思って電話をかけてみるが楓は電源を切っているようだ。電話が繋がらない。
何が出来るわけでもないがとりあえず楓に会いに行こう。
その前に祐奈に声をかけていかないと。
いや、でもなんて声をかける?
急に用事が、なんて言っても嘘くさいし、楓が日菜だと知られてしまい学校を辞めてしまうかもしれない、なんて言っても信じてくれるかどうか分からないし、細かく説明している時間もない。
……ごめん祐奈。また後で説明するから。
俺は心の中で祐奈に謝罪し、断腸の思いで飛び出した。
階段を1段飛ばしで降り、ダッシュで駅まで向かう。
楓がどこにいるのかは分からないが、今は何も考えずに急いで楓の家に向かおう。
駅に到着し、電車に乗り込む。全力で駅まで走ったおかげでいつも下校で使っている電車よりも1本早い電車に乗れた。
夏も過ぎ、季節は秋めいていると言うのに俺の体温は真夏のように上昇している。額を滴る汗を手で拭った。
楓の家を知らないとなれば打つ手は何も無かったが、幸い俺は楓の家を知っている。
楓の家に行っても楓が家にいるとは限らないし、むしろ家を出て行っている可能性が高いと思う。
それでも俺は楓の家に向かうしかなかった。
電車は楓の家の最寄駅に到着し、俺は改札に定期を通してホームを出る。
頼むから家にいてくれよ。
そう思いながら駅を出ようとしたその時、サングラスをかけて、男性用と思われる大きなマスクを装着し、キャリーケースを転がしながら駅の改札へと向かう女性とすれ違った。
俺は何故かその女性が気になり後ろを振り向く。
……もしかして?
俺はその女性の後を追った。
するとその女性は一度こちらを振り向き、歩くスピードを早めた。
それでも、キャリーケースを転がしている女性とスクールバックしか持っていない俺とではその速さの違いは歴然。
俺はすぐその女性に追いつき、肩を掴んでこっちを振り返らせた。
「どこいくんだよ。楓」
サングラスをしていても、顔をマスクで覆っていても、毎日一緒にいる俺の目は誤魔化せないぞ。
「……違う。楓じゃない」
「いや、楓だ。俺には分かる。あと……いやまあそれはいいけど、楓なんだろ」
俺は楓からいつも香る匂いと同じ匂いがする事に気付いていた。
それを楓に伝えようとしたが、自分でも気持ち悪いと思い途中で言うのをやめた。
「私は楓じゃない。私は日菜」
「どうした? 自分が日菜だって事は隠してたんじゃないのか?」
「私はもう楓としては生きられないの‼︎ みんなに私が声優の日菜として活動していることがバレてしまった以上、私はあの学校に残ることはできない」
「……そうか。今からどこにいくんだ?」
「東京。私、もう上京して声優活動に励むの」
「待て。俺もついていく」
「……へ?」
俺の方から自然に出た言葉に楓は呆気に取られた顔をしていた。
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