Bluetoothで繋がったのは学校1の美少女でした。

穂村大樹

第73話 急な告白


バスに揺られながら隣の席に座っている楓との会話を楽しんでいる。

何故祐奈に変わって楓が俺の隣の席に座る事になったのかは分からないが、最初は気まずかった雰囲気も楓から俺に話しかけてくれた事で話しやすくなり楽しい時間を過ごすことが出来ている。

祐奈はと言うと、後ろの席で風磨に花宮の話を色々と聞き出していた。

好きなところはどこか、どんな仕草が好きか、顔はタイプか等々、気になるところは根掘り葉掘り聞いている。

祐奈が風磨と和気藹々とした雰囲気で話す姿に嫉妬しているが、気を紛らわす様に楓とアニメの話をしていた。

楓には声優の仕事のことや、仕事仲間の他の声優の事について聞きたいが、バスの中でその話をしてしまうと他の生徒に聞かれてしまう可能性があるため聞くことが出来ない。

そのため、それ以外の話をするしかなくアニメの話をしていた。

すると楓が唐突に質問をして来た。

「祐はさ、好きな人いないんだよね?」
「いない、と思う」

楓からの急な質問に、焦る気持ちを抑えてなんとか返事はできたが、内心めちゃくちゃ焦っている。

俺にとって祐奈と楓が他の女子とは違って特別な存在であるのは間違いない。

その1人である楓から、直接好きな人を聞かれるとは思わなかった。

「と思う? なんかはっきりしないなぁ」
「な、なんでも良いだろ」
「まあいいけど。私は好きな人いるから」
「えっ⁉︎ だ、誰なんだ?」

あまりに急な宣言に、思わず誰が好きなのかを聞いてしまった。

「誰だと思う?」
「そんなこと急に言われてもな……。楓だったら学校以外の出会いもいっぱいあるんじゃないか?」
「そんな事ないよ。同年代の仕事仲間は少ないし、年上は趣味じゃないしね」

そうか、日菜は声優業界の中でも第一線で活躍している大人気声優だが、同世代で活躍している男性声優はあまりいないもんな。

楓の好きな人か……。俺には結婚しても良いと思うとは言っていたが、結婚相手と付き合う男性は全く別物だと話していた。俺のことが好きって事はないだろう。

それこそ、今ここでそんな話をするって事は風磨のことが好きだったんじゃないか?

好きと伝える事も出来ずに楓の恋が終わってしまったのだとしたらなんと声をかけたら良いか……。

「俺も年上は興味無い。同年代か年下の方が良いな」
「祐も同年代はOKなんだね。年下が良いとか年上が良いとか、こだわりはないの?」
「別にないよ。オネェさんタイプは苦手だし、年下も自分が引っ張って行かないといけない気がして大変そうだからな」

失恋をしてしまったであろう楓になんと声をかけたら良いか、腕を組んで目を瞑って考える。

「祐が好き」

俺の耳元で周囲には聞こえない音量でささやいた楓の言葉に耳を疑う。

「え、俺が好き?」
「ちょちょちょい‼︎ 声が大きいって」

声の大きさを指摘された俺はジェスチャーで、楓の方を指差した後、自分を指差し、ハートを作って首を傾げた。

すると楓は、小さく頷いた。

「ま、また今度でいいから返事欲しいな」

「へ、返事な、返事。わ、わ、わかった」

今まで賑やかに会話をしていた俺と楓はこの後、学校に到着するまでの残り30分ほどの道のりを無言で帰ることとなった。

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