Bluetoothで繋がったのは学校1の美少女でした。

穂村大樹

第72話 最終日

今日は修学旅行最終日。

最終日と言っても、1日目、2日目の様に観光名所を巡る予定は無く、学校に向かって帰るだけとなっている。

荷物をまとめ出発の準備を終えた俺と風磨は集合場所であるホテルのロビーにやって来た。

「おはようございます‼︎」

今日も天使の様に満面の笑みを浮かべ挨拶をしてくる祐奈に癒される。

「おはよ」
「おはよう。楓、なんか疲れてないか?」
「な、なんでも無い。元気だよ」

楓の元気が無い事に気がついた俺は、気になってもう一度祐奈の顔を見る。

よく見ると、目の下にクマがあり身だしなみもいつもより雑な気がした。

「2人とも大丈夫か? 昨日なんかあったか?」
「なにもなかったですよ」
「うん。なにもなかった」

この2人の反応を見てなにもないと言う言葉を信じるやつがどこにいるんだ……。
まぁ話したくない事もあるだろう。問い詰めるのはやめておこう。

学年全員がホテルのロビーに集合してから、ホテルの前に停車しているバスに乗るためホテルを出た。

今日が祐奈の横に合法的に座れる最後の日か。バスの中で祐奈の隣の席に座る事は金輪際ないかも知れないと考えるとやはり寂しい。

「あ、そういえば今日は私が祐の隣に座るから」

……え? と思わず口走ってしまいそうになる。

祐奈が隣じゃない事が悲しい、という感情が無いかと言えば嘘になるが、楓に失礼なためその感情は押し殺した。

それよりも昨夜、ベッドの中で思い出した楓との関係性の方が問題だ。
ここ最近、話しかけるのも気まずい雰囲気だったというのにバスの中で隣同士で過ごすのは難儀なミッションだ。

「そうか。祐奈と代わったのか?」
「色々あってね」
「色々か」
「うん。色々」

その色々が一番大事な部分なんだよ。何故席を代わる理由を隠すのだろうか。
何かを隠されると気になって仕方がないので、出来れば俺に隠し事はしないで欲しいもんだ。

俺たちはすでにバスの前で荷物を積んでいるため、心の準備も出来ないままバスに乗り込み、楓と隣の席に座った。

バスが出発して10分、気まずさから楓と一言も会話を交わさないまま、バスは学校へ向かっていく。

気まずい。何か話しかけた方がいいのだろうか。

「祐、私といるの気まずいと思ってるでしょ」
「は⁉︎ そ、そんなこと思ってないし」
「良いよ誤魔化さなくて。まあ私があんな事言ったのが原因なんだし」
「そ、それは……」
「あの発言は無かったことにしていいから。気楽に話しかけてよ」
「それはダメだ‼︎」

俺は条件反射で楓の言葉に返答をしていた。

「俺となら結婚しても良いって言ってくれたのは嬉しかった。だからあの発言を無かったことにはしたくない。勝手に気まずい空気を作ってたのは俺だから」
「そ、そう。じゃあ無かったことにしないね」

楓は楓の姿でいるときには見せないしたり顔で俺の方を見ている。

「な、なんだよ」
「なんでもないよ。ふふっ」

楓の言葉に振り回されていた俺は頭からその言葉を消し去ろうとしていたが、無かった事にすると言われるとそれはそれで嫌な気分になった。

今こうして話しているとやはり楓もあえて地味な見た目をしているが祐奈と並ぶ超絶美少女。

俺が祐奈に対しても楓に対しても他の女子には抱いていない特別な感情を抱いていることは間違いない。
しかし、あまりにも可愛くて優しい2人のせいで俺は祐奈が好きなのか楓が好きなのか、本格的に分からなくなってきた。

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