Bluetoothで繋がったのは学校1の美少女でした。

穂村大樹

第68話 好きなところ


風磨の女嫌いを克服させるため、そして花宮の恋路を応援するために俺は花宮のいる陽キャグループの後を追い続けた。

花宮のいつもよりどこか不自然な笑顔に胸が痛む。

陽キャグループの班は沖田と榎田、そして花宮と委員長の4人で構成されている。

昔はあのグループの中に祐奈がいたのに、今は俺たちの班員になっているのだから驚きだ。

しかし、今はそんな事を考えている場合ではない。

俺は風磨にだけ内緒で、トイレに行ってくると言い残し花宮のところへと向かった。

「花宮、ちょっと良いか?」
「え、でも今みんなで散策してる途中だし……」
「渋谷は花宮に何か用があるんだろ? 行ってこいよ。また連絡してくれ。後で合流しよう」

そう言って俺をアシストしてくれたのは沖田。以前は陽キャグループリーダーとして俺と沖田は関わることは一切なく、むしろ軽蔑すらしていた存在だった。しかし、沖田が祐奈のことを好きと見抜いてアニメを見出してからは教室でも割と話す機会が増えた。

「本当に良いの?」
「気にせず行ってきてください‼︎」
「委員長……。ありがと。行ってくるね」

こうして花宮を連れ出した俺は両脇に店が立ち並ぶ賑やかな通路から逸れ、人通りの少ない裏路地へと花宮を案内した。

「どうだ? 調子は」
「良くはないかな。昨日もあの後全然眠れなかったし」

そう言う花宮の顔をよく見ると、目の下にはクマが出来ており目も腫れている。

俺たちの学校は校則が緩いこともあり、花宮は毎日バッチリメイクをしているが、今日は普段の学校で見るよりも相当メイクを濃くしている。
それでも、腫れた目と赤みがかった眼尻を完全に隠すことは出来ていなかった。

「そりゃそうか。風磨に振られた感想は?」

「あんた、よく前日に振られた女の子にそんなこと聞けるね……」

「デリカシーのかけらもないだろ? 無神経は裏返せば俺の長所みたいなもんだから」

「わけわかんないけどまあいいわ。振られた瞬間はもう目の前が真っ暗。私は風磨をずっと恋愛対象として見てきたけど、風磨にとって私はただの友達だったんだって考えたら余計に落ち込んだわ」

「だろうな。俺も日菜とかゆいにゃんに振られたら同じ気持ちになると思う」

「なんでそこの比較対象が声優なのよ。あんた声優に告白でもするつもり? というかもう告白する前から振られてるみたいなもんじゃない。そもそも声優と会うことなんて出来ないんだし」

「まぁ会えなくはないんだけど……。声優に告白するつもりは一切無いよ。特に好きな人とかいないから声優で例えただけだ。それで、これからどうするんだ? もう風磨を諦めるのか、それともまだ好きなままでいるのか」

「諦められるわけないでしょ。昨日まで好きで、告白して振られたからってはいもう好きじゃありませんなんてそんな軽い恋愛してきてない。中学校の頃からずっと好きだったんだから」

花宮は俺の質問に対して、俺が質問の全文を言い終えるよりも先に食い気味に返答をしてきた。

良いぞ花宮、その調子だ。

「花宮は風磨の顔が好きなのか?」

「今更嘘ついても仕方ないから言うけどそりゃあんなにかっこいい男の子中々いないって思うし顔は大好き。だけど私は風磨の事が顔がカッコいいから好きなわけじゃない」

「じゃあどこが好きなんだ?」

「全部好き、って言いたいところだけど。しいてゆうなら笑顔も好きだし優しいところも好きだし、授業中寝てるところも好きだし弁当早食いしてるところも好き。話しかけると笑って返事してくれるところとか、誰にでも優しいところとか、言い出したらキリがないよ」

「授業中寝てるとか早弁してるとかは関係なく無いか?」

「好きな人のことは目で追っちゃうから、どんなところでも好きになるのよ」

「本当に好きだったんだな。風磨のことが」

「……やめてよそんなこと言うの。また泣けてきちゃうじゃん」

「最後にもう一回聞かせてくれ。花宮は風磨のことが好きか?」

「答える必要もないでしょ。大好き。誰よりも風磨のことが好き。私は諦めないよ‼︎ これからもずっと風磨のそばにいたいし私を女として見て欲しい。だから私は自分を磨いていつか絶対風磨に好きになってもらう‼︎」

ここまできたら後は総仕上げだ。ここからは俺にはどうしようもできないところ。

今の花宮の言葉に少しでも心を打たれたなら、出てこいよ。

「よく言った‼︎ それに答えるべきやつがいるんじゃないか?」

「え、それってどういう……」

それに答えるべきやつがこの場に出てくるか出てこないかは賭けだった。

今の花宮の言葉に心を打たれれば出てくるだろうが、何も感じなかったのであればこの場に出てくる事はない。

これで何も感じないやつは男じゃねぇ。

しばらく間が空いた後で、路地の角から1人の生徒が出てきた。

「え、風磨……?」

よし、ちゃんと来てた。

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