Bluetoothで繋がったのは学校1の美少女でした。

穂村大樹

第55話 思い出作り

「ついて来てくださいって言ったか?」
「……はい」
「さっきバラバラになろうって言わなかったか?」

それはそうなんだけど、と困り顔をする祐奈。

そんな祐奈を微笑みながら暖かい目で見つめる。

1人だと心細いから一緒にお土産を買いに行ってくださいってことか。

「行きたいところがあって……。他の2人には言い出しづらいので祐くんにお願いしようと思って」
「おう。祐奈のお願いならなんでもきくぞ」

行きたいところか。アニメ好きな祐奈のことだ。俺と一緒でアニメの聖地で写真が撮りたいとか、そういう事だろう。

「とりあえずついてきてもらってもいいですか?」
「了解」

俺は祐奈の後について祐奈が向かう方向へと歩いていく。
さあ、一体どんなところへ連れて行ってくれるんだ祐奈よ。

「到着です」

もう着いたのか。意外と早かったな。俺たちが到着したのは風情溢れる古民家の前。こんなところが聖地なのか?

「とりあえず入りますね」

あれ、中にはいるの? ……分かった‼︎ この家がアニメキャラクターの自宅のモデルになったとかだなきっと。

「すいませーん」

祐奈がそう言うと、奥から出てきた店員さんが一言。

「とりあえず制服の上は脱いでくださいね〜」

え、脱ぐの? 何するお店なのここ? 俺たち今からどうなっちゃうの? 祐奈は一体何がしたいんだ。

もしかして、あんなことやこんなことをするお店だったり……。

疑心暗鬼状態の俺は店員に案内され、何やら丸いバケツのような物の前に置かれた椅子に座り、俺の横に祐奈も座った。

「え、祐奈さん。これは一体?」
「はい? 陶芸ですけど?」

陶芸? え? 全くわからんぞ?

そして店員が俺の前にドンっと大きな黄土色の塊を置く。

「今から湯飲みを作ります。作り方はレクチャーするので、どんどんやっていきましょー」

そして俺と祐奈の陶芸体験が始まった。

俺の目の前で湯飲みになる予定の粘土がぐるぐると回っている。

この回転する機械はろくろというらしい。ろくろの上で球体の粘土を少しずつ手を触れ形を整えていく。

すると、みるみるうちに穴が開き、湯飲みの形が形成される。

「祐くん上手いですね‼︎ 私全くセンスが無いみたいで……」

祐奈の粘度を見てみると、かろうじて湯飲みの形状はしているものの、ガラスのコップの様にペラペラになってしまっていた。

「ははっ。なんだその形」

思わず笑う俺の前で店員が、失礼しますねと言い祐奈の粘土に手を触れ、一瞬で形を綺麗な状態に戻す。

スゲェな職人。

俺と祐奈は綺麗な形を作るのに四苦八苦していると言うのに。

というか本当何この状況。未だに理解出来てないんだけど。

「よかったらお二人の写真撮りましょうか?スマホを貸してもらえれば撮りますよ」

な、なんだって⁉︎ また祐奈と2人で写真を撮れるのか⁉︎

しかし、俺がここで二つ返事でハイと言えばあたかも俺が祐奈と写真を撮りたがっているみたいではないか。

いや、撮りたがってるんだけどね。

「はい。お願いします」

え⁉︎

祐奈は俺の予想に反してすんなりと返事をした。

そして祐奈がスマホを店員に手渡す。

「それじゃあ撮りますよー」

あまりにも事が早く進むため準備をする時間が全くない。

そして無情にも、俺の準備が整う前にカメラのシャッターが切られた。

後でどんな顔してるか確認しておこう。大事故になってないといいが……。

そして俺たちは各々違う形の湯飲みを作った。

俺は途中で口が大きくなっている湯飲み、祐奈は湯飲みの真ん中を押さえ、お酒を飲みたくなる様な湯飲みを作った。飲んだことないけど。

今日俺たちが作った湯飲みは後日、自宅に配送されるらしい。

「楽しかったぁ。私、テレビで見てどうしても陶芸をやってみたかったんです」
「陶芸なんて地元じゃ出来んしな」
「本当に楽しかったです。ありがとうございます‼︎」

俺はこうして祐奈と一緒に作った湯飲みを手に入れたのである。

満足そうに笑う祐奈を見て俺も満足した。お土産は買えなかったけど、自分には最高のお土産になったな。

これって、お揃いだよな……。

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