Bluetoothで繋がったのは学校1の美少女でした。

穂村大樹

第47話 恋愛相談

唐突に修学旅行の班分けが決定したその日、俺は家に帰って妹のモカに楓の発言の真意を聞いてみた。

産まれてこのかた、誰かに恋愛相談などしたことは無い。ましてや妹に恋愛相談だなんて恥ずかしくて出来やしない。
そう思っていたが、この心のモヤモヤを取り除くにはそうする以外方法はなかった。

「なぁモカ。女の子って、この人なら結婚しても良いって思ってもその人とは付き合えなかったりするもんなのか?」
「え、なにそれ恋愛相談?」
「んーまあそういうことになるのか」

俺が恋愛相談をした事に心底驚いた様子のモカは身体を一瞬硬直させた後でこちらを向き一歩後退りした。

「お兄ちゃんから恋愛相談だなんて驚いた。お兄ちゃんのためとあらば仕方がない。恋愛下手なお兄ちゃんに女心を教えてあげよう」
「頼みますモカ先生」
「高校生とか大学生にかけての年齢はまだまだ遊びたい盛りでしょ?」
「俺はそう思った事は一度も無いけどな」
「そんな時期に結婚しても良いって思う相手に出会うと、出会うのがもう少し遅かったらなー、なんて思う訳ですよ」
「そう思った事は一度も無いけどな」
「黙って聞いてなさい」
「はい。ごめんなさい」
「だから、結婚はしても良いって思う人でも、付き合えなかったりするのです」

モカの話は恋愛を一度もしたことが無い俺にはレベルが高すぎる。モカがなにを言っているのか全く分からない。

「え、ちょっと待って。そんなこと聞いてくるって事はお兄ちゃんに対して、結婚しても良いなって思ってくれてる人がいるって事?」
「まあそうなる。嘘ついてるようには見えなかったからな」
「……。いくらなんでも嘘はいけないよお兄ちゃん。いくら女の人と関わりが無いからって……はははは」
「本当だぞ」

俺が楓に言われた一言は衝撃的だった。信じられないのも無理はない。俺自身信じられないのだがら。

「しいて言うなら、一個だけその女の人がそうやっていった理由ってのが思いつかなくはないけど……」
「え、なにそれ教えて。俺は皆目見当もつきません。あなただけが頼りなのです」

俺がどれだけ考えても導き出せなかった答えをモカはいとも簡単に導き出したようだ。流石俺の妹。

「でも多分これ、教えないほうがいいやつだよ」

「――は?」

「私が教えたらその人の頑張りが水の泡だからねぇ」
「そ、そんないけずなこと言ってないで教えてくださいよー」
「お兄ちゃんなりにもう少し考えてみたら? お兄ちゃんが悩んでるのは妹的には嬉しくないけど、私がその女の人の立場だったら嬉しいだろうし」
「俺が悩むのが嬉しいのか?」
「ドSだとかそう言う話じゃなくてね。もっと恋愛的な話」

なんだよそれ。目の前に答えがあるのにそれを知ることが出来ず気を落とすが、無理やり妹から聞き出すのも兄としての威厳が保たれない。

「とりあえず、話聞いてくれてありがとな。モカの言う通りもう少し悩んでみるよ」
「そうやって素直なお兄ちゃんがモカは大好きだよ」
「よせよせ。冗談でも顔がにやける」

こうして俺の初めての妹への恋愛相談は答えを聞き出せないまま終わった。

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