Bluetoothで繋がったのは学校1の美少女でした。

穂村大樹

第44話 新事実

「ちょっと、急になんなのよ!」

楓の質問に返答している暇はない。

俺は質問を無視して無我夢中にショッピングモールの外へ出て、同じ敷地内にあるカフェの裏まで走った。

「ご、ごめん。ちょっと急に走りたい気分になって」
「そんな言い訳信じるわけないでしょ」

息を切らした俺はまともな言い訳も思い浮かばず、事実を伝えることにした。

「さっきの店の中に祐奈がいたんだよ。2人でいるところ見られたら勘違いさせるだろ?それに今は楓が日菜の格好してるんだから」
「た、確かに」
「確かにってお前な……。よくそれで今まで自分が日菜だってこと隠し続けられたな」
「私だって頑張って隠してるんだから。もし自分が日菜だってバレたら学校辞めさせられるし」
「……は?」

楓が声優だってバレたら学校をやめる?本当なのか?

「冗談だろ?」
「いや、本当だけど」

それが事実だとしたら楓はなんで俺に自分が日菜だとバラしてくれたんだろうか。

そんな危険があるならしらを切って俺から逃げることも出来たはずだ。

それにすでに俺に知られているのに学校を辞めなくても良いのか?

「え、じゃあ俺に楓が日菜だって知られてることは大丈夫なのか?」
「それは大丈夫だよ。噂が広まって学校中に知られることにな
ればやめなきゃいけないけど、祐が知ってるくらいなら問題ないでしょ?」
「そりゃそうだけど……。俺が誰かにバラすとは思わなかったのか?」
「うん。だって祐なら誰にも言わないもん」

確かに俺は口が硬い方だとは思う。隠して欲しいと言われれば言いふらすことはしない。

自分では自分のことを信用できるが、楓が俺のことをそこまで信用してくれていることが嬉しかった。

「そりゃどうも。でもバレたら学校辞めさせられるってのは問題だな」
「まあもう2年以上隠し通してる訳だし、多分大丈夫なんじゃない?」
「本人は意外と呑気なもんだな。俺の方がドキドキするよ」

2年間隠し通してきたとはいえ、さっきみたいに急に知り合いに出会うことだってあるだろう。

今日楓が日菜の格好をして買い物に来ることはリスクしかない。

何故楓ではなく日菜の格好をしてきたのだろうか。

「それならなんで今日日菜の格好してきたんだよ。日菜がこの辺に住んでるって知られたらみんなに知られる危険性が高まるんじゃないのか?」
「まぁそうなんだけどね。今日はたまたまそんな気分だったんだよ」

気分と言われてしまえば反論の余地はない。

まあ眼鏡もかけてるしな。そうそうバレることはないか。

とりあえず一旦落ち着くためにカフェに入ることにした。

カフェの裏側から入り口に歩こうとしたその時、ショッピングモールの方から陽キャグループが歩いてくるのが見えた。

「ちょ、あいつらなんでこんなとこに」
「うわ、本当だ」
「一旦裏側に戻るぞ」
「いや、今裏側に走ってったら不自然でしょ」
「ぐぬぬ、それもそうだな……」
「こうしたら良いんじゃない?」

そう言って楓は俺の腕を掴み思い切り自分の方へと引っ張った。

俺は壁に楓を押し付けるような形になり、いわゆる壁ドン状態になった。

「こうしてればバレないでしょ」

そ、そりゃバレないかも知れないが……。楓の息が俺の顔にかかる。日菜の格好をしている楓に俺は興奮していた。

ああ、日菜ファンの皆さん私だけこんなに幸せごめんなさい。

今日死ぬかも知れません。

そして陽キャグループのメンバーは俺たちに気づかないふりをしてカフェへと入っていった。

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