Bluetoothで繋がったのは学校1の美少女でした。

穂村大樹

第43話 好きの違い

楓は俺の質問を質問で返すと言う意外な返答をしてきた。

日菜のことはもちろん好きだ。大好きだ。アニメオタクで日菜の大ファンの俺が日菜のことを好きじゃないわけがない。

じゃあ楓に対する好きという感情は俺が日菜に向けている好きという感情と同じなのか? と聞かれればそれは全く別物だと答える。

日菜に対する好意は憧れのようなものでファン目線の好意だ。恋愛関係になりたいとも友達関係になりたいとも全く思わない。
それに対して楓に対する好意はは、オタク友達としてのもの。一緒にアニメの話をするのは楽しいし、楓の人間性にも惹かれている。

どちらが好きかと聞かれても、「カレーと野球どっちが好き?」と聞かれているようなものなのである。

「カレーとシチュー」や「野球とサッカー」のように同じジャンルにあるものでどちらかを比較するということはあっても、ジャンルの違うものを比較することは無意味だと思う。

だから楓と日菜のどちらが好きかと聞かれても順位をつけがたい。
仮にそれが「日菜とゆいにゃん」という比較対象なのであれば俺は迷わず日菜だと答える自信がある。
ゆいにゃんのことが嫌いなわけではなく、日菜のことが圧倒的に好きなのだ。

そもそもどちらの方が良い悪いと順位付けするのは趣味ではない。

俺は楓からの質問をあしらうように話した。

「日菜に対する好意と楓に対する好意は全然種類が違うよ」
「え、楓にも好意があるの?」
「こ、好意って言ってもあれだからな! 友達としてって方だから。恋愛感情的なものではないから‼︎」
「ふーん。そっか」

そんな難題を上手くかわした後は順調に買い物を進めた。

日菜がショッピングモールにあるありとあらゆる服を試着し可愛いさに磨きがかかる。

日菜から「これはどう?」と試着した服の感想をを聞かれるたび、シャイな俺は楓の顔を正面から見ることは出来ず、別の方向を見て「あー良いんじゃないか」と味気ない感想しか言うことが出来なかった。

そんな感想で満足しているのかと思い楓の表情を伺うが、いささか楽しそうである。

何がそこまで楓を満足そうな表情にさせるのだろうか。

まあ楽しいならそれで良いか。

楓がレジで服を購入している間はやる事がないので店の外に出ることにした。

店の中を通路に向かって歩いていると、服が陳列されている細い通路から女の子が飛び出してきた。

俺は止まり切れずにその女の子と衝突し、女の子は地面に座り込んだ。

「あ、ごめんなさい」

こけた女の子に手を差し伸べる。ちらっと顔を見るとそこにいたのは祐奈だった。

あー。これはダメなやつだ。うん。ダメだ。ダメダメ。

「あ、ありがとうございます」
「はい」

手を差し伸ばした後で衝突した女の子が祐奈だったということに気づき、手を引くわけにもいかず顔を晒した。

「あのー、なんで顔背けてるんですか?」
「なんでもないよ。それじゃあ僕は行くね‼︎」
「あ、ちょっと! なんで裏声で逃げるんですかぁ〜‼︎」

俺はレジで購入を済ませ店の外に出てきた楓の手を握り、ダッシュでショッピングモールの外へと逃げてきた。

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