Bluetoothで繋がったのは学校1の美少女でした。

穂村大樹

第40話 終結

さっき楓が祐奈の体調を確認してくれたが、無理をして登校してきたであろう祐奈を心配してもう一度体調を確認する。

「本当に大丈夫か?」
「はい。今まで一緒のグループだった沖田くんとか榎田くんが私のことをどう思っているのか気になるのは事実です。でも、祐くんたちが一緒にいてくれるので問題ありません‼︎」

そう言って笑う祐奈の姿からもう不安は感じられない。

後は陽キャグループがどんな反応をするかだ。

俺たちがしばらくアニメの話で盛り上がっていると、陽キャグループが全員登校してきた。
すると、まずはリーダー的存在の沖田が俺たちのグループの方に歩いてくる。

神妙な面持ちで近づいてきた沖田は祐奈に話しかけた。

「ゆいにゃん……、いいな」
「……え?」

沖田の口からゆいにゃんという名前が発せられた瞬間、祐奈は何が何だかわからないと眉を寄せ困った表情を見せる。

それも当たり前だろう。2日前に気持ち悪いと言われた奴らが急にゆいにゃんのことを褒めているのだから。

「ゆいにゃんがヒロインを演じてるアニメ、どうしてもって言われて見たんだ」
「誰にそんなこと言われたんですか?」
「渋谷だよ。まあ色々と丸め込まれたところはあるが……」
「え、渋谷くんに?」
「とりあえず5話まで見てみろって説得されたから、5話まで見た。1話から4話まででも引き込まれてたけど、5話のゆいにゃんのあの演技は誰が見たって感動するし引き込まれる」
「そ、そうですよね‼︎ 私もあの演技には感動しきりでした」

祐奈と沖田が楽しそうに見ているのを見て後から陽キャグループ全員が俺たちがいる場所に歩いてきた。
沖田が一旦引き下がると次に前に出てきたのは榎田。こいつは祐奈に対して気持ち悪いというとんでもない暴言を吐いた張本人だ。

「……ごめん」
「そ、そんな、謝らなくても大丈夫です」
「いや、ほんっとに俺が悪かった。俺も昨日沖田と一緒におんなじアニメを見たんだけどさ。今までバカにしてた自分が恥ずかしい」
「わざわざ貴重な時間を使ってアニメを見てくれたんですか?」
「ああ。渋谷に教えられたんだよ。アニメは30分って思ってる奴が多いけど、コマーシャルと曲を飛ばせば20分程度で1話が終わるって。20分なら簡単に見れるなと思ったから」

祐奈は俺の方を振り返って若干涙ぐんでいる。

「ごめんね祐奈。今までずっと好きなアニメのこと隠してたんでしょ? 辛かったよね。これからは私もたくさんアニメみようと思う」
「咲良……」

今回の作戦は賭けだった。どれだけアニメが面白いとしても人それぞれ好き嫌いがある。
だから万人ウケするアニメでゆいにゃんが出演しているアニメの中から俺が一番面白いと思うアニメを選定した。

結果的には上手くいったから良いようなものの、陽キャグループのメンバーがアニメを見てくれなかったら意味がない。
陽キャグループのメンバーが素直にアニメを見てくれてよかった。

今まで俺は何事でも一度経験をして、偏見を持たずに物事を考えるようにしていたつもりだった。
しかし、いつのまにか俺の中でもスクールカーストの頂上にいる陽キャグループのメンバーに対して偏見を持ってしまっていたのかもしれない。

沖田にしろ榎田にしろ、アニメを見た後は素直に面白いと言い、祐奈に話をしにきた。
俺が思っていた以上に沖田も榎田も素直な奴だった。

俺ももう一度自分の考えを改めたほうが良いだろうな。

楽しそうにアニメの話をしている祐奈と陽キャグループのメンバーを見て親心のようなものが込み上げてくると同時に、陽キャグループとアニメの話を見ている姿を見て寂しさも感じていた。

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