Bluetoothで繋がったのは学校1の美少女でした。

穂村大樹

第39話 仲間入り

祐奈が登校してくる日、祐奈が俺よりも先に学校に到着しないようにと俺はいつもより早く家を出た。

祐奈が俺より先に学校に着いてしまっては祐奈の居場所がない。

祐奈に気を遣わせない為にも、家を早く出る理由がないかを考えていた俺は丁度明日が日直当番だったことに気づく。
日直だからといって家を早く出る必要はないが、先生にお願い事をされているからと嘘をついて先に学校に登校することにした。

自分が日直であることしか知らなかったが、今日の日直は楓と2人だったようで、教室に到着すると何故か俺より早く楓が登校してきていた。

「おはよ」
「おはっす。なんでこんなに早く登校してんの?」
「多分祐と同じ理由だよ。私も放っておけないからね。同じオタクとして」
「まあ楓に関してはオタクというよりも声優本人だけどな」

楓が日菜本人である事を知って驚愕した次の日に祐奈の問題が起きた為、驚く暇も無かった。
やはり、俺の大好きだった声優の日菜が楓であるという事実は信じがたい。
学校にいる時はどこからどう見ても地味で控え目な女の子にしか見えない。

「楠木さん、ちゃんと学校くるのかな」
「昨日も来るって言ってたからな。気持ち悪いって言われてショックだったろうけど大丈夫だと思う」

続々と生徒が登校してくる中、俺は教室の入り口ばかりを気にしている。

祐奈が中々登校してこない状況に痺れを切らし教室を出ようと扉に向かおうとしたそのとき、ようやく祐奈が登校してきた。

俺と楓が話していることに気づくと、いつもの陽キャグループではなく、俺たちのところにトコトコと駆け寄ってきた。

「おはようございます」
「おはよ。大丈夫?」
「古村さん……。心配してくれてありがとうございます」
「そりゃ私たち、オタク仲間なんだから」

オタク仲間というよりも俺から見たらオタクとファンって構図なんだけどな。
2人の美少女が学校で会話をする初めての光景に思わず見とれてしまった。
楓に関しては見た目は地味なままだが、俺にとっては美少女以上に可愛く見えてしまう。

「よっ。元気だったか」
「はい‼︎ 祐くんのおかげで今日は学校に登校して来れました」

祐奈がそう言うと、机に肘を付いていた楓がガタッ‼︎ と音を立ててバランスを崩した。

「ど、どうした?」
「あ、いや、なんでもない。ちょっと手が滑っただけ」

特に怪我もないようなので気にせずに会話を続ける。

「祐奈が元気そうでよかった。これからよろしくな」

すると、また楓が、ガタァァァア‼︎ と先ほどより大きな音を立ててバランスを崩した。

「おい、本当に大丈夫か? 風邪でもひいてるのか?」
「う、うん本当に大丈夫。というか風邪をひいててもこうはならないでしょ」

まあ確かに、と楓の言葉に納得する。

「おはちゃすっす」

そうおちゃらけた挨拶で風磨が俺たちのグループに合流する。

「「おはちゃすっす」」

俺と楓はいつも通りおふざけの挨拶を返す。

俺たちの挨拶はたまにこうして変になるが、その変な挨拶をされた側も違和感を持たず、その挨拶で返事をするのが風習となっていた。

俺が目で、『ほら、祐奈も』と合図をすると祐奈は恥ずかしそうに、おはちゃっすっと挨拶をした。

「す、鈴木くん。これからよろしくお願いします」
「風磨でいいよ。俺も祐奈って呼ぶから」
「はい! 風磨くん‼︎」

こいつ、イケメンだからってさらっと祐奈と名前で呼び合いやがって。
俺だって頑張って下の名前で祐奈って呼んでるけどまだ呼びづらいんだからな。誰でも風磨みたいに簡単には挨拶できないんたからな。

そして後はまだこの教室に入ってきていない陽キャグループの登校を待つばかりとなった。

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