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Bluetoothで繋がったのは学校1の美少女でした。

穂村大樹

第23話 同志

役者は揃った。ヤイゼリヤの4人掛けの席には俺と風磨と楓、そして楠木の4人が相見えている。

皆言葉を発さず黙り込み、重い空気が漂う。果たした沈黙を破り会話を始めるのは一体誰なのか。

「ーーさっきはごめんなさい。驚かせちゃって」

沈黙を破り喋り始めたのは楓だ。楠木を驚かせてしまったことを反省しているようだが、反省して謝るならくらいなら最初から驚かせなければいいのに。
しかし、その気持ちを口にすれば楓の機嫌を損ねそうなので口にはしなかった。

「楠木さんの緊張がほぐれるかと思って」
「気を抜いていた私も悪いので……。確かに少し緊張がほぐれました」

楓と風磨という初めて言葉を交わす2人との会話に気疲れをしているのか、楠木はぐったりした様子。
気を抜いていた楠木は何も悪くないぞ。むしろあの状況で気を抜いていない奴がどこにいる。

あれは明らかに楓が悪い。

次に言葉を発したのはイケメンオタク風磨。
楠木と一番話したがっていたのは風磨だからな。いくらアニメオタクとはいえ風磨は見た目だけは陽キャの中でもイケメンの部類に入る。
見た目も中身もオタクな俺は女子と話したいとはあまり思わないが、イケメンの風磨なら可愛い女の子と話をしたいと思うのも頷ける。

「それより、本当に楠木さんってアニメ好きなの? 俺たちは3人ともアニメオタクだけど楠木さんはそう見えないからさ」
「は、はい‼︎ 普段はオタクだってことを隠してるんですけど本当はアニメが大好きです。鈴木くんもアニメオタクさんには見えないですよ」

おい、俺はそんなこと言ってもらったこと無いぞ。要するに見るからにオタクってことなのか……。今更そこまでショックも受けないけど。

「楠木さん本人が言うなら間違いないな。これからよろしく頼んだぜ」
「こちらこそよろしくお願いします」

俺が必死に説明しても信用しなかったくせに、楠木が一言自分はオタクですと言えばすぐに信用するあたり俺は信頼されていないのだろうか。
何気にショックを受けている。

「2人でゆいにゃんのライブに行ったんでしょ? どうだった?」
「あ、はい。2人で同じライブTシャツを着たりいつも通りファミレスに行ってご飯を食べたり、渋谷くんと遊ぶのはすごく楽しいです」
「……私が聞いたのはライブの感想なんだけど」
「あ、そ、そっちですか。で、ですよね。そっちですよねははは……」

楓の的確で理不尽な指摘に楠木は急激に顔を赤くし黙り込んでしまった。

楠木の顔も赤いが、俺も楠木の放った言葉に顔を赤面させた。

俺も恥ずかしいが必死になって楠木のフォローをする。

「そういえば結局ゆいにゃんのライブの感想は話してなかったよな。ゆいにゃんすげぇ良かったぞ。日菜のライブも良いがゆいにゃんのライブは日菜のライブとは違う良さがあるな。まあ日菜のことは大好きだし乗り換えるとか浮気してるとか、そういう訳じゃないけどな」
「そうなんだ……。日菜のライブも2人で行くの?」
「その予定だ。楠木と2人で日菜のライブに行くつもりだよ」
「そっか……」

おっと。ゆいにゃんのライブの感想を今から熱く語ってやろうかとおもったが、とりあえずは楠木が風磨と楓と仲良くなれるように話をしなくては。ど、どうしようか。
そう思っていた矢先、楠木が今期のアニメの話を始めた。

普段は話すことのない高嶺の花と楽しそうに話す風磨と楓、それに俺以外の人とアニメの話を楽しそうに話す楠木。

とんだお節介だったか。何も心配する必要は無かったようだ。

やはり同じアニメが好きなもの同士、仲良くなるのに必要な行程は多くはなかったようだ。

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