Bluetoothで繋がったのは学校1の美少女でした。

穂村大樹

第19話 開演

ヤイゼリヤで放課後のように今期のアニメの感想や来季から始まるアニメの会話をしていると時刻は15時30になった。

楠木と会話をしているとあっという間に時間は過ぎていく。

「もう時間だしそろそろ行くか?」
「あ、ちょっと待ってください。これに着替えてきても良いですか?」

楠木が物販の袋の中から取り出したのはライブTシャツ。俺達はファミレスでの会話に夢中でライブTシャツに着替えるのをすっかり忘れていた。

ライブまで時間もないという事で仕方がなくヤイゼリヤの化粧室で着替えることにした。

2人で席を立ち化粧室でTシャツを着る。俺はLサイズのTシャツを購入しサイズは丁度良かった。

ライブTシャツとはいえ楠木とお揃いか……。これで2人で写真で撮ろうものならカップル確定だ。

着替えを済ませた俺は化粧室を出て席に戻る。楠木はまだ席に戻っていない。
女子は準備に時間がかかるって言うし気長に待とう。

それから5分後、俺と色違いのTシャツを着た楠木が席に戻ってきた。

「お、お待たせしてすいません」

楠木はゆいにゃんのライブTシャツを見事に着こなしていた。
白いシャツから若干透けているキャミソールが微妙にエロいがあまり気にしないようにしよう。気にすればするほど目をその部分に向けてしまう。

「ライブTシャツ来たらやる気出て来た。隣で大声でコールとか叫んでても引くなよ?」
「引くわけ無いじゃないですか‼︎ 私もコールはバッチリ予習済みです」

開演は17時だが開場は16時。俺達は会場に向かって歩き出した。

ライブ会場はヤイゼリヤの真横に位置しているため、16時の開場に向けて列を形成しているゆいにゃんファンの姿が目に入る。

今回のライブは指定席で自分の席は確定していると言うのに、ゆいにゃんファンは開場前から長蛇の列を形成している。

早い時間から並ぶ必要はないが、早く会場に入りたいと言うファンの気持ちはよく分かる。

ライブ会場は薄暗く、控えめな音量で流れている演者の曲はライブ前から気持ちを昂ぶらせてくれる。
そんなライブ会場には誰でも早く入りたくなるだろう。

俺達も開場を待つゆいにゃんファンの列に並んだ。

「いよいよ開場ですね」
「ああ。それにしてもすごい列だな」

ライブ会場には俺たちが午前中に物販を購入した時の何倍もの人が集結していた。

たった1人の声優がこれほどまでの人を集められるのか。

勿論、ゆいにゃんのファンはこの会場にいるファンの何倍、何十倍、何百倍といるだろう。
人に夢を与えられる職業というのは本当にすごい。

開場時間の16時を過ぎ、列は少しずつ前へと進む。

会場の入り口が近づくにつれて気持ちも昂ぶる。

入り口手前で行われている荷物検査をクリアし会場へと入場した。
チケットに記載された番号を元に指定された席へと歩いて行く。

「思ったより舞台が高く感じますね‼︎ これならゆいにゃんからも私達のことが見えますかね?」
「ああ。ライブに来ると声優と目があったって勘違いして喜んでる」
「それは分かります。勘違いでも喜んだもん勝ちですよね」

喜んだもん勝ちか……。それなら今日は俺の勝ちだ。
楠木はゆいにゃんのライブに同級生の男の子と来ているだけと思っているかもしれないが、俺は折角の学校1の美少女とのライブデートをすでに楽しんでいる。

そしてついに会場内は暗くなり、割れんばかりの大歓声が沸き起こった。

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