Bluetoothで繋がったのは学校1の美少女でした。

穂村大樹

第12話 オタク魂

楠木に今日の予定を断られた俺は風磨と楓とアニメイロに来ている。

アニメイロに来るとクリアファイルや下敷き等学校でも使えるグッズを購入したくなるが、実際に学校で使用すると気持ち悪いと迫害されてしまうため、使いたくても使えない。

しかし、好きなアニメキャラや声優のグッズを身に付けたくなるのがオタクの性さが。

アニメ関係のグッズだということが気付かれないような物を身につけて、自分と同じオタクに自分はオタクだということを主張しているのだ。

何かめぼしいものはないかと店内を物色していると日菜の新作アルバムが目に入った。

「何見てるの?」

後ろからひょこっと現れ声をかけてきたのは楓。

楓は影が薄いため近くに寄ってきても気付かないことが多い。
日菜やゆいにゃんのようなキラキラした世界の人間とは対比の存在だ。

「日菜の新作アルバム、まだ買ってないなと思って」
「いつもならフラゲしたとか言って喜んでるのに」
「今月は財布がピンチでな。ライブも当たったし、チケット代も払ったからな」
「財布がピンチでもCDを買う。それが推しを応援するってことなんじゃないんですかー」

そう言い放つと楓は何故か不機嫌になりすぐに別のコーナーへと歩いて行った。
た、確かに俺のオタク魂は楠木と出会ってから薄れているのかもしれない。それを楓に見抜かれたということか。

俺は真のオタク。今まで日菜のグッズを購入するのにお金を気にしたことはない。
そんな俺がお金を気にするようになってしまった。それでいいのか俺。

……よし、買おう。

日菜の新作アルバムを手に取りレジに向かう。

その途中、ゆいにゃんのコーナーが目に入った。

今までであれば特別に好きな声優でも無かったのでCDを購入したことはない。
しかし、最近楠木のiPhoneから流れてくるゆいにゃんの曲を聴いてゆいにゃんを好きになっているのは事実。

俺は日菜のCDを購入するのに財布がピンチであることを気にして躊躇したというのに、ゆいにゃんのシングルをスッと手に取りそのままレジへと向かった。

別に楠木にシングルを買ったって報告をしたい訳ではない。それで喜んだ楠木の顔が見たいとか、そんなことはこれっぽっちも考えていない。

ただ、シングルはCDの単価が千円代と安価なため、気軽に購入出来る。それだけだ。

レジでお金を支払い、出入り口付近で風磨と楓と合流する。

「結局買ったんだ。日菜のアルバム」

呆れたように半笑いをする楓に、当たり前だろとドヤ顔で袋を見せつける。

「ん? もう一枚CD入ってないか?」
「ああ。ゆいにゃんのCDだよ。今度ライブに行くことになったからな」
「日菜のライブも行ってゆいにゃんのライブも行くのか。ゆいにゃんのライブも例の新しいオタク友達と行くのか?」
「まぁそんなとこだな」

明らかに俺に疑惑の目を向けてくる風磨と楓。

まあ今まで友達がろくに出来た事が無い奴が急に出来た友達とライブに行くなんて言いだしたら不思議に思うだろう。

「悪い友達じゃないんだな?」
「純粋なオタク友達だ」
「お前がそう言うなら信じるよ」
「心配してくれてありがとな」

俺は幸せ者だ。アニメを語り合える友達がいて、心配してくれる友達がいる。これ以上に幸せなことはない。これからもこいつらの事は大切にしていかなければ。

「どうする? ヨネダ珈琲でも行く?」
「そうするか。まだ時間も早いしな」

ヨネダ珈琲は俺たちがアニメイロに寄った後に決まって訪れる苦味と程よい酸味を兼ね備えたコーヒーが人気のカフェである。

ビルの3階にあるアニメイロを出て、階段を降り開けた通路に出る。

通路の両脇にはアパレルショップが立ち並び、オタクにはそぐわない通りとなっている。
しかし、アニメイロの向かい側のビルの2階にヨネダ珈琲があるためそこを通らなければならない。

開けた通路を向かい側に歩いて行こうとすると、ヨネダ珈琲の中に神田高校の生徒が入店していくのが見えた。

俺は特に気にすることもなくそのまま風磨と楓と3人でヨネダ珈琲に入店した。

入店すると店員がやってきて俺たちを席へと案内する。
制服を着ているためか、喫煙席から離れた禁煙席に案内された。
お、隣の席にさっきヨネダ珈琲に入店して行った神田高校の生徒がいる。
気にせず通り過ぎようとしたがちらっと顔を見る。

そこには今日はカフェに行くと言っていた楠木がいた。

そういえば今日は楠木はカフェに行くって……ここカフェか‼︎

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