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穂村大樹

第78話 卑怯、客観的に見ても

俺と蒼乃は特に会話することも無く、立ち並ぶ店を順番に、淡々と見て回っていた。

会話がないのも苦しいので、たまに声をかけては見るのだが……。

「その服可愛いし似合いそうだな」
「……ありがとうございます」

これで会話が終了してしまい、言葉のキャッチボールが出来ていない。

蒼乃が手に取って見ている服は本当に可愛いし、蒼乃が着ればよく似合うだろうと言うのは間違いない本音だ。

緑彩先輩を好きだと言っておいて、蒼乃に可愛いと言う自分もずるいとは思う。
だが、緑彩先輩を好きになった上でも、蒼乃とはこれからもずっと一緒にいたいと思う。恋人という形ではないにしろ、良き友人という形で付き合って行きたい。

しかし、このままでは俺と蒼乃の関係はここで終わりを迎えてしまう。

いったいどうすれば……。

その時、俺の心の中で何かの糸が切れる音が聞こえた。

うん、なんかもう吹っ切れたわ。俺がとる行動が最悪でもなんでもいい。俺はやりたいようにやる‼︎

「ちょ、ちょっと、何やってるんですか⁉︎」

驚く蒼乃を他所に、俺は蒼乃の手を握った。

「いつもこうやってただろ」
「で、でも白太先輩は緑彩先輩のことが好きなんですよね? それなら私の手を握るなんて……」
「自分が最低なのはわかってるし、俺自身自分の行動には疑問しかない‼︎ でも、今はとりあえずこうしたいって思ったんだ。このままだと蒼乃との関係が悪化する一方だからな……。それは嫌だ」
「嫌だって……そんな子供じゃないんですから」
「蒼乃はいいのか? このまま仲が悪いままで」
「それは嫌ですけど……」
「よし、ならこれで行こう」

それから俺は蒼乃の手を握ったまま、普段は蒼乃が引っ張っていた俺の腕を今日は俺が引っ張っている。
いつもは引っ張られて連れ回されていると言うのに、それが逆になる日が来るなんてな。

「今までは逆だったのに、なんか不思議ですね」

俺と同じ事を考えていた様子の蒼乃はクスッと小さく笑い、少しずつ元気を取り戻して来たようだ。

「仲が悪いままだと部活でもみんなに迷惑をかけるし、それに、俺自身が一番蒼乃と仲良くしたいと思ってる」

自分が言っていることがどれだけ卑怯か、客観的に見れば分かる。

自分勝手過ぎる発言に蒼乃は俺のことを嫌いになるだろうか。

「本当卑怯ですねっ。でも、私から白太先輩に仲直りをしようって言い出す勇気は無かったですし、私も以前のように仲良くしたいって思ってたので嬉しいです」

蒼乃は俺のことを嫌いになるどころか、自分も仲良くしたかったと言ってくれた。

久々に蒼乃とまともに出来た会話。今までならなんでもない会話に、俺は感動してしまっていた。

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