好きな人が出来たと俺に別れを告げた元カノの想い人は俺じゃないけど俺だった

穂村大樹

第14話 親友への相談

坂井くんと付き合って一週間が経過した頃、お昼休みに梨沙とご飯を食べていた私は正直に梨沙に私の状況を説明するか悩んでいた。
私の話を聞けば梨沙が怒るのは避けられないだろうし、最悪友達ではなくなってしまう可能性もある。

いや、逃げちゃダメだ。梨沙は親友なんだし隠し事をしたくはない。私は意を決して梨沙にこれまでの事を話す事にした。

「あのさ、ちょっと言いたい事があるんだけど……」

「どした?」

「ティモの店員さんと付き合えたの」

「え、よかったじゃん‼︎ まあ結衣くらい可愛かったら誰だってオッケーしてくれるか」

梨沙は私が坂井くんと付き合えた事を喜んでくれたが、私が本当に伝えたい部分はそこではない。
話す順番を間違えただろうか。余計に話しづらくなってしまった……。

「ティモの店員さん、坂井くんっていうんだけどね。私、坂井くんと付き合う前に榊くんと付き合ってて……」

「……え⁉︎ 榊って前まで隣の席だった榊の事⁉︎」

梨沙ならもしかしたら私が榊くんと付き合っていた事に気がついているかもしれないと思っていたが、梨沙の反応を見る限り流石に気がついていなかったようだ。

「そ、そうだけど」

「なんてまたタイムリーな……」

「え、なに?」

「なんでもない。何で榊と付き合ってたの? 別段カッコよくもないし、どちらかと言えばかなり地味な方だけど」

「……優しかったからかな。優しいって言っても上辺だけの優しさじゃなくて、本当に優しい人なんだなって思ったんだよね」

「そうなんだ。結衣がそうやって言うなら本当に優しいんだね」

「……え、梨沙は怒らないの?」

私がこの話をした瞬間、梨沙は私を怒るのではないかと覚悟していた。それなのに、梨沙は私を怒るどころか私の話を否定せず肯定してくれた。

「そりゃ褒められた行動ではないけどね。でも私だって女の子なんだよ? 結衣の気持ちも理解出来るし、しょうがないんじゃないかな。まぁ榊には申し訳ないなとは思うけどさ」

「梨沙……」

「え、ちょっと何泣いてんの⁉︎」

梨沙が私の話を否定しなかった事に安堵した私は思わず涙をこぼしていた。私が涙をこぼした理由はそれだけではなく、一人で抱え込んでいたこの悩みを梨沙に話す事で気持ちが楽になったからだ。
話しづらい悩みを抱えている人は多いくいるだろうが、やはり悩みは誰かに相談するべきだな。

「ごめん……。もう泣くのやめるっ。頑張る」

「あんたなりに色々考えてたのね。私はどんな恋でも結衣を応援するよ。まぁ流石に相手がダメ男なら止めるけどね」

「ありがと……」

「そうそう、榊って言えば最近学校で話題になってるんだけど知ってる?」

「え、あの地味な榊くんが?」

榊くんが話題になるとすれば私が榊くんと付き合っていたが別れてしまったという話だろうか。いや、でもこの話を梨沙は知らない様子だったし、梨沙でも知らない話を一般生徒が知っているとは考えづらい。
とはいえ、他に理由も思い浮かぶ訳でもない。榊くんが話題になる内容ってなんだろう……。

「そうそう。最近お昼休みに中庭で一年生の女の子と一緒に弁当食べてるらしくてさ」

「……へぇ。その女の子はなんて名前の子?」

「真野って子だよ。めっちゃ可愛くて同級生からも先輩からも大人気の子なんだけどさ、なんでそんな子が榊なんかと一緒にいるのかーって話題になってるみたい」

真野……? どこかで聞いたことがあるような無いような……。でも私の記憶に無いということは恐らく私の知らない後輩なのだろう。

「そうなんだ。そんな可愛い子が一年生にいるんだね」

「いやいや、結衣も絶対見たことあるよ?」

「え、なんで?」

「だってティモでバイトしてるじゃん」

「--え⁉︎ あのめちゃくちゃ可愛い子が真野ちゃんっていうの⁉︎」

ティモでバイトをしている女の子、私はその姿をよく覚えている。
身長が低くてフリフリとした服を見に纏い、子供の様にとても可愛らしい童顔で、ザ、女の子という雰囲気だったのをよく覚えている。

「そ、そうだけど。だから結衣の彼氏とも一緒に働いてる事になるね」

「た、確かに……」

坂井くんがその真野って子と一緒に働いてるのか……。
そんな可愛い子と一緒ならもしかしたら坂井くんはその子の事が好きになるかも……。いや、ちょっと待って。私が目にしてしまった坂井くんが抱きついているように見えた女の子って真野って子なんじゃない⁉︎

これはややこしくなってきた……。

それに、私と別れたばかりの榊くんがお昼休みにそんなに可愛い女の子と二人で毎日弁当を食べているという話の真相も気になる。
今となっては席も隣ではないので、私から榊くんの元へ行き真相を確認するしかこの状況を把握する方法は無いだろ。

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