チート(現代知識)×チート(魔法)×チート(武術)はチート∞(天災級)?!

もるもる(๑˙ϖ˙๑ )

第81話(みんなで旅行 3日目 飛竜と火竜)

 またやっちゃったなぁと思っていると、エストリアさんは冒険者の側に行き、快癒ヒールの魔法をかける。
「アナタに思うところがない訳じゃないけど……アルに殺人の重荷を背負わせたくないから」

 すでに山賊と冒険者を殺っちゃってる気がしないでもないが、アレも直接手を下した訳じゃないからなぁと遠い目をしながらエストリアさんの行動を見守る。

「ヨルムガリア家だ」
 少しは動けるようになったのか、冒険者は立ち上がりながらボソッと言う。

「今回のクライアントはヨルムガリア家だ。依頼人はツァーリ・フォン・ヨルムガリア。お前達に相当の恨みを持っているようだ。気を付けろ」
 フラつきながら立ち上がった冒険者はそう言い残すと、僕達に背を向けてヨロヨロと歩いていく。

「ツァーリか……」
 相当にプライドをへし折ったので、その恨みの矛先がエストリアさんに向いてしまっているようだ。そのせいでエストリアさんの家族にまで迷惑をかけてしまっている。早急に何とかする必要があるかもしれないと僕は思案する。

 冒険者を退けて屋敷の裏口に集まっていたエストリアさんの家族の無事を確認すると僕達は胸鎧ブレストプレートの冒険者が持っていた鞄を回収し、土鎖のアースチェイン束縛バインドで拘束している灼熱フレア飛竜ワイバーンの元に行く。

 キーナさんがずっと拘束していたらしく、灼熱フレア飛竜ワイバーンはおとなしくしていたようだ。僕が卵の入った鞄を持ってきたのを感知したのか、急に拘束を解こうと暴れ始めてしまう。
 僕は灼熱フレア飛竜ワイバーンの首が届く範囲まで入っていくと、卵の入った鞄を置くと、灼熱フレア飛竜ワイバーンは不思議そうな顔をしながら暴れるのを止めて僕と卵を交互に見比べる。

「あぁ、リア。悪いけど飛竜ワイバーンの傷を治してくれるかな」
 灼熱フレア飛竜ワイバーンの気を引き付けている間に、エストリアさんが快癒ヒールの魔法を使い、その傷を全て癒してくれる。

「みんな。悪いけど離れてくれるかな。そしてキーナ。僕以外のみんなが離れたら拘束を解いて」
 そう告げると、みんなは飛竜ワイバーンから離れて、キーナが土鎖のアースチェイン束縛バインドを解く。

 傷も治り自由になった灼熱フレア飛竜ワイバーンは警戒するように僕と卵を視界に入れながらいつでも攻撃できるように威嚇してくる。

「同じ人族として卵を盗んだ事、ごめんなさい」
 言葉は通じないだろうけど、精一杯の謝罪を込めて、頭を下げて謝る。

(謝ることないわ。人の子よ)
 するとどこからか女性の声が響く。キョロキョロと周りを見渡すと、今まで獰猛な瞳をしていた灼熱フレア飛竜ワイバーンの瞳が凄く理知的な光を灯した碧い瞳になっているのに気が付いた。

(今は灼熱フレア飛竜ワイバーンの身体を借りさせてもらっているの。私は火竜イグニット……ここより西にある険しき山に住むドラゴンよ。この度は私の眷属の卵を取り返してくれて、とても感謝しているわ)

「いえ……そもそも、僕達の撒いた種で灼熱フレア飛竜ワイバーンに迷惑をかけました。実際に盗んだのは冒険者でも、そのきっかけを作ったのは僕達です」
 そう告白した僕の話を聞いて、エストリアさん以外は、みんな訝しげな顔をする。

「今回の件、ツァーリの陰謀だったみたい」
 訝しげな皆に対しエストリアさんが伝えると、皆頷きながら納得する。

(仮にアナタ方に原因があろうと、さっきの戦いでこの子を殺せたはずですし、その卵も返さないという選択肢も取れたはずですが、この子も卵も救ってくれました。ですから私からの感謝を受け取って下さいね)

「わかりました。ではありがたく、感謝の言葉を受け取らせていただきます」
(でも、言葉だけでは感謝を表せないわね)
 僕がそう答えて話を終わらせようとしたのだが、火竜イグニットが言葉を繋げる。

ギュォォォォンッッ!!

 すると灼熱フレア飛竜ワイバーンが空に向かって一吼えする。すると空から赤色の光が雪のようにヒラヒラと舞い降りてきて、僕らの身体に触れるとスッと溶け込む。

(アナタ方に火竜の加護を授けさせて頂きました。熱/暑さ/寒さに対する耐性、炎の魔法適性、竜族への意思疎通の恩恵がある加護です。有効に活かして頂けたら嬉しいわ)

「こ、これは、とんでもないな……この加護は一つしかないといわれている魂魄が二つもあるようなものじゃないか」
 カイゼルさんを始め、みんなが驚嘆する。

(それでは、失礼させてもらうわね。後はこの子が卵を持って帰るから心配はいらないわ。さようなら、優しい人の子。私の棲家の近くに来たのなら歓迎させてもらうわ)
 そう伝えると、灼熱フレア飛竜ワイバーンの瞳が元に戻っていく。でも、襲ってきたときに比べると非常に穏やかな瞳だ。

(タマゴ……アリガトウ。モウ、ダメダト、オモッテタ)
 片言だが灼熱フレア飛竜ワイバーンの意志が伝わってくる。これが<竜族への意思疎通の恩恵>なのだろう。

「こちらも傷つけてごめんなさい。帰りには気をつけて」
(アリガトウ。ヒトノコヨ)
 僕が再度謝罪すると、片言でお礼を言うと卵の入った鞄を口に咥えて、翼をはためかせる。10mくらいはありそうな身体が、羽ばたくたびに、上へ上へと上がっていく。

(サラバタ。ヒトノコヨ)
 そして、ある一定の高さまで上がると、そう一言を残して西の空に羽ばたいていった。

「つ、疲れたよ……」
 僕らは灼熱フレア飛竜ワイバーンを見送ると腰が抜けたように草原に座り込むのだった。


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