チート(現代知識)×チート(魔法)×チート(武術)はチート∞(天災級)?!

もるもる(๑˙ϖ˙๑ )

第59話(決勝戦 中盤 試合場)

 眠りから覚めたが、麻痺が取れていない重戦士。オスローに足止めされている軽戦士、翠にまとわり付かれている魔術士。オスローをフォローするために戦局を見極めているエストリアさん。重戦士を更に足止めすべく魔法詠唱をしているキーナさん。

 ツァーリまでの壁はすべて排除されている今が最大の好機だ。

 僕は矢のように駆け出すと、前衛と中衛の間を抜けツァーリに肉薄する。

「数的優位に持ち込んだ1年生Aチーム!リーダーのツァーリ選手に近接戦を挑もうというのか!!」

「こ、この平民がぁっ!!炎の礫!!」
 ツァーリはそれに反応して魔法を放ってくるが、その程度の魔法は自動追尾型の魔法を回避する特訓をしていた僕には難なく躱せるレベルだ。ツァーリを射程に収めていた間合いで、左足を中心に外側に沈み込みながら回転する事で回避する。ツァーリには一瞬僕が消えたように見えただろう。

ザシュッッ!!

 その回転力と伸び上がる力を利用してツァーリの右側面に沈み込んでいた僕は、ツァーリの背面に向けて身体を伸ばしながら小剣を袈裟斬りに斬り上げる。

パキィィィィン!!

 僕の小剣は狙い通りツァーリのポーチを切り裂き、そこに入っていた魔石を破壊すると甲高い音と強烈な光を発する。

「アルカード選手、見事な動きでツァーリ選手の魔法を躱すと一撃を叩き込んだーっ!!」

「きっ!貴様!!知っていたのかっ!!」
 ツァーリは驚愕と怒りが入り混じった顔で僕を見ながら手に持った杖を打ち下ろしてくる。

 戦闘訓練を積んでいない魔術師の杖の一撃など、かするはずもなく難なく回避する。ツァーリはがむしゃらに杖を振り下ろしてくるが、僕は余裕を持って回避し、隙を伺う。ツァーリは肩で息をしながら、魔法も撃たずに杖での打撃ばかりだ。

「ツァーリ選手!魔法も使わず、杖での攻撃のみだ!!まさか魔力切れか?!」
 実況がツァーリの行動に疑問を持つと、顔を青くしてポケットから魔石を取り出す。

「これでお前らは終わりだ」
 青い顔を歪ませながら、魔石を地面に投げつける。

キィィィィィィィンッッッ!!!


「くくく……私の後ろを見るんだなぁ貴様らっ!」
 強烈な閃光と耳を劈くような高音が試合場を覆うと低く、くぐもったツァーリの声がする。

 はっとした僕が、ツァーリの後方の観客席の最上段を見る。

「ヘンリー……」
 僕の耳にエストリアさんのあきらめの混じった小さな声が入る。

「家族がどうなってもいいなら止めはしないが、どうするのだ平民ども?!このまま、おとなしく私の魔法を食らうのであれば、家族の身は保障してやるが?あぁ、避けたり反撃した場合は、家族の身の保障はできんなぁ」
 楽しそうに歪んだ笑みを浮かべながらツァーリが判断を迫ってくる。

「……わかった。避けたり反撃しなければいいんだな?」
「そうだ。いい覚悟だなぁ?それと痛いではすまない事も覚悟しておけ」
 僕がツァーリの脅迫に従うようにそう言うと、蛇のように口を大きく歪めて舌なめずりする。

「どうしたことだ!優勢に試合を進めていた1年生Aチーム。ツァーリ選手が何かを投げられてから棒立ちになっている!!」
「ツァーリ選手が何かしたようね」
 ココットさんとエレン学園長の実況が耳に入る。

「炎よ、破壊をつかさどる爆炎よ!わが手に集いて、無慈悲な破壊の炎となれ!!」
 レストランでも初戦でも見せたツァーリの爆炎の魔法が紡がれていく。

「この愚かな者共に、破壊の鉄槌を!爆炎球エクスプロージョン!!」

ドゴァァァッッッン!!!

「ツァーリ選手の爆炎球エクスプロージョンの魔法が、味方もろとも棒立ちになった1年生Aチームへ炸裂したぁっ!!こ、これは勝負あったか!!」

 十分な時間と魔力の練りこみをして放たれた爆炎球の魔法は轟音と共に巨大な炎が巻き起こり、ツァーリを除く全員と試合場の半分を包み込んだ。

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