チート(現代知識)×チート(魔法)×チート(武術)はチート∞(天災級)?!

もるもる(๑˙ϖ˙๑ )

第50話(選抜戦1回戦 決着)

「翠ちゃん!すぐにオスローのカバーに入って!」
 リアの指示が飛ぶ。

 オスローは2人を相手にしており、大振りな斧槍の隙を付かれて、何度か攻撃を受けてダメージが蓄積している。幸い直撃クリーンヒットはまだ貰っていないから耐えられているようだ。
 そして僕の相手であるサクラ先輩の攻撃は苛烈の一言で、僕は必死になって攻撃を受け流すのがやっとで、周りを確認する余裕が全くない。

 サクラ先輩の剣戟はとにかく早い。ただ、綺麗な型をしているため、身体の動きで何とか軌道が読めて、そこに小剣を差し込んで防げている。読みが外れた瞬間、一発で腕章の魔法防御は剥がれてノックアウトしてしまうだろうと思い必死に防御に専念する。

『よし、トレースできた。剣筋が素直すぎるから、さほど難しくなかったな』

 僕の頭の中に筋肉さんの声が響くと同時に、サクラ先輩の剣閃の軌道が光の線になって僕の目に映る。これならば体捌きで躱せると、予測閃に合わせて、当たらないように身体を差し込んでいく。

「ここだっ!」
 剣閃を見切って、サクラ先輩の身体が微妙に流れた隙に、左わき腹に小剣の一撃を入れる!

「くぅっ!まさか、見切られたのか?!」
 細い目をやや開きながら、驚いた表情をするサクラ先輩。僕の攻撃を受けたことで腕章に少し切れ目が入る。

「な、なーんと!先ほどから防戦一方だったアルカード選手!起死回生の一撃が入った!」
「武術学科としては100年に一人の逸材といわれたサクラ選手の刀技を初見で防ぎ続ける事も異常だけど防ぐだけではなく、一撃まで入れた。これがアルカード君の恐るべきセンスね」

 連撃を入れられるほどの隙ではなかったので、一発しか入れらず、サクラ先輩は僕からいったん距離を置く。そして残った自分の仲間の状況を確認するように目を向ける。

「くっ!邪魔だ!!」
「悪いね。それが戦略なんでね!」
 槍使いの槍を弾きながら、オスローが重戦士に対して牽制の横薙ぎを放つ。それを盾で受け止めた重戦士の足元から土の手が伸び足を掴む。

「ナイス!リア!!」
 オスローはリアの魔法により移動を制限された重戦士から離れて、槍使いに向けて斧槍を振り下ろす。

「斧刃重撃!!」
 勢いをつけた斧槍の一撃が放たれ、槍使いが自分の槍を頭上に上げて、その一撃を防ごうとする。だが、地下訓練施設で鍛えたオスローの一撃を真正面から受け止められる訳がない。
 槍の柄をへし折った斧槍が槍使いの肩口を切り裂く。

「二連槍撃!!」
 思わず仰け反った槍使いの胴部に、斧槍の2連撃が突き刺さる。その2連撃を受けて槍使いの腕章が千切れ飛ぶ。

「おーっと!アルカード選手だけではありません!2対1と不利な状況にもかかわらず全く落ちる気配のないオスロー選手!その勢いのまま槍使いを撃破!!」

 大技を繰り出して隙が出来たオスローに、リアの魔法を無理やり引きはがした重戦士の長剣が襲い掛かる。

「させないわ!不可視の盾よ!オスローを守って!<物理盾フィジカルシールド>!!」
 重戦士が長剣を振りかざしたのを見たリアが、即座に防御魔法を発動させる。

ギィィィィンッッ!!

 甲高い音と共に重戦士の長剣が弾かれる。

「ここなのだーっ!」
 その重戦士にシリウス先輩を倒した翠が飛び込み様に、拳を重戦士の左脇腹に放つ。鎧を着こんで、相当重量のある重戦士なのだが、翠の一撃で紙切れのように吹っ飛ばされると、腕章が凄い光を発して千切れる。

「あぁー、今年は行けると思ったんだけど、これまでのようね。でも最後の悪あがきをさせてもらって、あなただけは奥義で倒させてもらうわ」
 槍使いと重戦士が倒されたのを見たサクラ先輩は、そう言うと刀を鞘に納めて、右足を前に出して半身の構えをとる。

『居合いだな。納刀することでリーチを測らせず、さらに鞘走りを利用して剣速を上げて一気に切りつけてくる技だ。気をつけろ坊主』

「おーっと!サクラ選手!あの構えは絶刀の構えだっ!奥義が出るのか!!」
 実況のココットさんが興奮しながら実況を続ける。

 そしてサクラ先輩は静かに呼吸を落ち着かせて間を取る。

 僕はいつ繰り出されるか分からないので、気を張り詰めさせて、一挙手一投足を見逃さないように集中するお互いの集中が高まって、時間が数百倍に引き伸ばされた感覚になる。

「……っ!!奥義 絶刀 アギト三連!!」
 呼気を吐き出した瞬間、サクラ先輩は一瞬で間合いを詰め、右から僕の首、返す刀で左胴、更に返す刀で右足にと、全てが同時の一撃だと錯覚するような神速の3連撃を放つ!

 僕は一撃目は首をすくめて避け、二撃目は小剣で受け流す。三撃目は前方に飛び上がり回避しつつ、左の小手を振りかぶってサクラ先輩にたたきつける!!
 神速の三連撃を躱されて無防備になったサクラ先輩の肩口に僕の拳が直撃クリーンヒットしてサクラ先輩を吹っ飛ばす!!

「今だ!リア!!」
僕がリアに掛け声をかけると

「<ファイアボルト サークル インフィニティ>!!」
リアがファイアボルトの魔法を起動する。

サクラ先輩を中心にして炎の礫が円形上に9つ並ぶ。

「<シュートッ>!!」
掛け声と共に炎の礫が同時にサクラ先輩に襲い掛かる。

僕に吹っ飛ばされて倒れていたサクラ先輩に避けられるはずもなく、全ての炎の礫がサクラ先輩に直撃クリーンヒットするとサクラ先輩の腕章が強く発光して千切れる。

「決まったー!!統合学科一年生Aチーム。見事武術学科2年生のBチームを下しました。最後は、サクラ選手の奥義 絶刀  アギト三連を回避したアルカード選手の一撃を受けた所、エストリア選手のカスタム炎の礫ファイアボルトの魔法の追撃でリーダーのサクラ選手が沈みました!!」
「あの技を避けるアルカード選手も見事ですが、今まで見たことのない炎の礫ファイアボルトの魔法を見せたエストリア選手も恐るべき才能の持ち主でしょう」
 ココットさんとエレン学園長が総評を話している所、僕の周りに集まってきた仲間達でハイタッチして一回戦突破の喜びを分かち合う。

「オスロー平気?2対1での足止め大変だったんじゃないか?」
「危ないやつは全部リアが止めてくれたから平気さ」
「こ、これも、作戦だからっ!」
「翠もよくやってくれたね」
「しょーりゅーげきが気持ちよく入ったのだ!!」
「そうだね。最近避けられてばっかりだったからね」
「そうなのだ!!やっぱり当たればしょーりゅーげきは最強なのだ!!」
 なんて僕らがわいわいやっていると、サクラ先輩達が近づいてくる。

「おめでとう。残念ながら言い訳が出来ない程の完敗でした。まさか奥義 絶刀 アギト三連があんなに完璧に避けられるとは思いもしなかったです。それに、最後の魔法。あんなのは、避けられませんね。びっくりしました」
 サクラ先輩がエストリアさんに手を差し伸べてきたので、エストリアさんはその手を取って握り返す。

「ありがとうございました。胸を借りられて光栄でした」
「貴女の指揮も的確でした。うまく数的優位を作られてしまいましたから。私もまだまだ学ぶ事が多いというのを実感しましたよ」
 こうして、僕らは無事1回戦を勝利する事ができたのであった。


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