チート(現代知識)×チート(魔法)×チート(武術)はチート∞(天災級)?!

もるもる(๑˙ϖ˙๑ )

第46話(訓練の成果と不安事項)

 そうしている内にあっという間に時間は流れて、春の選抜戦が間近に迫ってくる。そして、春の選抜戦が明日に控えたところで、別行動で諜報活動を中心にしていたカイゼルさん、ウォルトさんに僕らの集団戦を見てもらう。
「よくもここまで。想像を遥かに超える戦い方で、正直驚愕を禁じえないよ。これならば春の選抜戦でも良いところまで行けそうだ」
 カイゼルさんが吃驚しつつも手放しで褒めてくれる。

「はぁ……しかし、これに追いつくのは相当骨が折れそうだな。俺もちょくちょく鍛錬はしていたのだがな」
 ウォルトさんは額に指を当てながらちょっと困った感じで感想を言う。

「で、こっちの調査やけどな。やっぱりツァーリっちゅうのはかなーり黒いで。前回の特待生も何か訳ありみたいやし中々話してくれへんかったけど、相当時間かけて仲良うなって、何とか聞き出してみたらな。なんや、高性能武具を使うとるし、対戦相手の身内を人質に取るわ、対戦相手の親に政治的圧力をかけるわ、対戦相手の友人にも手ぇ回しよるしやりたい放題でなぁ。取り締まろうにも、うまいこと尻尾はつかませへんし、親の権力で手を回すし、そりゃもうえげつない有様や」
「……何なのよ、それ!!」
 イーリスさんの説明にリアが怒気を吹き上げながて激昂する。

「とりあえず、既にある程度の手を回してあるが、これら全てを止めるのは難しいかもしれない。一つ目の高性能武具に関しては、こっちが実力をつければ何とでもなるだろう。問題は身内を人質に取るのと、親に政治的圧力をかけて身動きを取れなくする事だ」
 カイゼルさんがいつもの事ながら物事を整理して話し始める。

「まず、オスローの家族だが、こちらはツァーリが手を出すのはあまりないと考えている。平民に政治的圧力はそんなにかけられないからな。やれるとしたら営業妨害位だ。念のため優秀な護衛を見張りに付けておいたので安心してくれ」
 カイゼルさんに続いてウォルトさんがオスローの家族への対策を説明する。

「キーナ嬢の家は社会的な影響力が強すぎるので手は出せないだろうと推測している。まさにペンは剣より強しだ。こちらも念のため護衛に見張らせているので安心してほしい。そしてアル君の家に関しては、アインツより遠く離れている上、親があの≪雷迅≫のレイオットさんだ。とてもじゃないが手は出せないね。一番問題になっているのはエストリア嬢なのさ。貴族の家柄の上、政治的圧力をかけられると辛い立場で、家もアインツにあるわけではないので護衛が見張るのも難しい。どこか有力な家の庇護下に入ってくれれば良いのだが、相手は5州家の子家だ。相当な家の庇護下に入らないと食い止められないのだよ」
 カイゼルさんが冷静に事態を告げていくと、リアの顔が青褪めていく。

「お父様もヘンリーも、もう家を出発しているわ。今から手紙を書いても間に合わない」
 リアが顔を青褪めさせて声を震わせながら発言する。

「せめてどこに泊まるかが分かれば手も打てるのだが……聞いていないか?」
「確かアインツハイアットホテルだった気がするわ」
「……それは困ったな」
 リアが答えると、カイゼルさんが頭を押さえて呻く。

「アインツハイアットホテルは、ヨルムガルドが経営母体のホテルなのだよ。今回の相手、ツァーリの名はツァーリ・フォン・ヨルムガリア。ヨルムガルド家の子家で建国当時のヨルムガルド家の一人娘が嫁いだ先の家になる。これは相当に不味い事態だ。ホテル予約の情報から先回りされてたら、防げない」
 カイゼルさんが頭を押さえながら必死に対応策を考える。しかし状況が悪すぎるのか、すぐに答えを出す事が出来ない。

「お父様、ヘンリー……」
 リアはそう呟きながら震える肩を懸命に押さえている。

「えっと、リアの弟君はヘンリー・フォン・ヒルデガルドで間違いないかな?」
「そうよ、それがどうかしたの!あぁヘンリー!!」
 僕の問いにリアが感情的になりながら答える。まぁ身内に危険が迫っているからしょうがないと思う。

「<エグゼキュート ディティールサーチ ワイドマップ ヘンリー・フォン・ヒルデガルド>」
 僕は久しぶりに探査魔法を起動する。僕の眼に周辺地図と様々な点が展開される。

「うん。アインツから北西に20km程のところにいるね。周りにまだ敵性反応はないみたい」
 探査魔法で得た結果をみんなに知らせる

「……はぁ?」
「……えぇ?」
 カイゼルさんとリアがポカンとした顔で僕を見る。

「「何でそんな事が分かるんだ(のよ)!」」
 直後に二人の言葉が揃って発せられる。

「え?いや、魔法……で?」
 2人の剣幕に、そういえば最近この魔法使ってなかったし、みんなの前ではあんまり算術魔法を使っていないなぁと思いだす。

「ひ、人の名前だけで位置を察知する魔法なんて聞いた事ないぞ?!そんなのあったら……やばい。暗殺し放題で国家が転覆しかねない!」
 カイゼルさんが珍しく動揺を隠せずにワタワタする。

「アル君。キミは本当に!!まぁいい。話は後で聞くとして、今はエストリア嬢のご家族の安全確保が優先だ。ウォルトすまないが……」
「承知いたしました。すぐに護衛を向かわせます」
 カイゼルさんの言葉を受けながら、ウォルトさんすぐに行動に移して早足で部屋を出て行く。

「これで確保できれば良いのだが……とにかく今日はゆっくり休んで疲れを取ってくれ。色々心配事はあるが実力を発揮できなかったら元も子もない」
 僕らはカイゼルさんの言うとおり、心配事があるとはいえ、身体を休めて明日の本番に控えて早めに休む事にした。

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「うまくいったか?」
「えぇ、これでアイツらの絶望に包まれる顔が間違いなく見られます」
「ふん。あんな平民如きにここまでやらなくても大丈夫だと思うが、念には念をだ」
「明日が楽しみですな。くくくくく……」
 その夜、アインツの某所では黒い影同士が密談をし、暗い声が部屋に響くのであった。


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