チート(現代知識)×チート(魔法)×チート(武術)はチート∞(天災級)?!

もるもる(๑˙ϖ˙๑ )

第10話(災難は忘れた頃にやってくる?)

 馬車に揺られること半日。何事もなくのんびりと予定通り馬車は進んでいた。

 地方都市アインツの西に広がる新緑が清々しい森を抜けると草原が広がっていてすごく見晴らしがいい。
 春前の少し肌寒さを感じる季節柄であるけど、今日は日差しも暖かく実に心地いい感じだ。乗り合い馬車も幌をあけて、乗客は景色を見たり歓談したりしていたので、僕は隣の冒険者風の2人組の話を半分聞きながらボーっとしていた。

 そんな風にのんびりと空を眺めていたら、小さな黒い点をとらえた。皆に聞こえないように小声で<エグゼキュート ディティールサーチ ワイドマップ エネミー>と囁くと周辺情報と敵性反応の詳細情報が右目に展開される。

 そこに表示されている名称を確認し、少しの驚きを覚えると素早く御者さんに告げる。

「危険な敵が迫っています。多分僕を狙ってきているっぽいので、僕が馬車を降りたら全速力で、馬車を走らせてください。あの丘の裏より先に行けば安全だと思います」

 不審げな顔を浮かべる御者さんに、後方の空を指さすと豆粒くらいだった影が、どんどんと大きくなってくるのを御者さんが確認すると、目を見開いて慌てて馬に鞭を振る。

 僕は荷袋を掴み、馬車から飛び降りると愛用の木剣を腰に差す。

 空を飛ぶ影はどんどん大きくなり、長い首や大きな翼、光を反射する鱗が確認できる。僕は何も持たないで構えもとらずに、近づくのをただただ眺めていた。

ドスンッ!!

 という大きな音を立てて、その影は僕の数十メートル前方に着地する。

「我がねぐらを荒らしたのは貴様か!この矮小なる……も、のよ?!」
 全長15m程の綺麗な翠色をした鱗を持つ竜がこちらをギロリと睨みつけながら腹の底に響く声がするが、語尾か細く疑問形になっていた。

「本当に……?貴様がやった、のか?ただの子供ではないか!」

 竜の頭にはクエスチョンマークがいっぱい並んでいる様子。そりゃ根こそぎ山頂を吹き飛ばした犯人がこんな子供だとは思わないだろう。

「3日前に山頂を吹き飛ばしたのは本当に貴様か?その魔力波長を追ってきたんだが、何回調べても貴様の魔力波長と同一だ。しかしどう見てもただの子供にしか見えん」
 しかし、あの衝撃光を受けて無事とは竜って相当に頑丈なんだとか考えていると竜が不思議そうな素振りを見せる。そして態々確認をするとは、竜というものはとても律儀なのだなと感心しながら素直に答える。

「入学試験の時に全力をだしたら、山頂を吹き飛ばしちゃいました。迷惑をかけてすみません」
素直に頭を下げると
「う、うむ。いやいや、うむじゃない……でも困った。うーむ……とはいえこんな子供相手に本気になるのも」

 ずいぶんと良心的で良識的な竜だなぁ、竜族ってこんな感じなのかな?物語とか人の話とか聞くと、もっと問答無用で人族を殲滅するようなイメージなんだけど……

 話が全く進まないので、子供ではなかったらどうしていたのかを聞くと、絶大なる恐怖と共に過ちを反省させつつブレスで滅殺すると言われた。

 滅殺はとても困るので、お仕置き代わりの一発で勘弁してもらえませんか?と提案してみる。

「どんなに軽くても我の一発を受けたら、貴様の体など一瞬で粉微塵になってしまうのだぞ」
 と非常に困った顔をするので、真剣に僕は答える。

「耐えられても、耐えられなくても、山を吹き飛ばした原因を排除したという事にして勘弁してくれませんか?あなたがどう判断したにしろ原因が僕なのは間違いがないので、仮に粉微塵になったとしても恨みませんので」

 僕以外の人が標的になって、憂さ晴らしに滅殺されたら目覚めが悪いからね。竜は今一つ納得していない顔をしていたが、落し所がないのも困るようで渋々その方法で勘弁する事で納得した。

「死んでも恨んでくれるなよ」
 そう呟くと、竜はその大きな体を軽く右に振ると、それに伴って大きな尻尾も大きく右に振られる。尻尾が右に振り切れたところで、体を大きく左回転させる。
 するとものすごい勢いと質量を伴った尻尾が、強烈な一撃となって僕に襲いかかる。

 <エグゼキュート スフィアシールド パーソナル>と僕は呟き、全方位に透明な防護壁を展開する。竜の一撃は相当な質量エネルギーを持っていた為、シールドでは衝撃を拡散できずに、僕はゴム毬のように吹っ飛ばされる。
 そのまま、いくつかの大木に激突し、全てをへし折りつつようやく止まる。常人が受けたら10回死んでもお釣りがくるような一撃だった。

「勇敢な少年よ。許せ……」
 竜が本当に申し訳なさそうに呟くのを聞くのだが、僕はピンピンとして立ちあがり、にこやかに近づいていく。

「あたたたた。さすがに竜の一撃は効くなぁ。でもこれで勘弁って事でいいですよね。」
 この時の竜の唖然とした顔は、生涯忘れないほどのインパクトだった。

「チート(現代知識)×チート(魔法)×チート(武術)はチート∞(天災級)?!」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く