チート(現代知識)×チート(魔法)×チート(武術)はチート∞(天災級)?!

もるもる(๑˙ϖ˙๑ )

第06話(街巡りのはずが人助け?!)

 地方都市アインツはアインツ自治領と同じ名を関しているが領都ではなく元領都になり、アインルウム同盟国の一地域で東寄りに位置する領だ。

 アインルウム同盟国はいくつかの小さな国が集まって設立した国で、元あった小国に関して、現在では州という単位で区分されており、運営に関しては州主と呼ばれる州のトップが集まった同盟国議会で運営されている。
 同盟国のトップは国主と呼ばれており、10年に一度、州主の中から投票で選ばれる。

 領とはアインルウム同盟国が設立した際に国としての体をなしていなかった町や村が、後に集まってできた地域になり、一定の自治権を持った地域になるが、設立には同盟国議会の承認が必要になる。
 しかし元々小国であった州に比べて、同盟国議会に参加できない、関税などの諸々の税が高い、緊急対応が後回しにされるなどデメリットがある。

 関係性を簡単に記すと以下のような感じになる。

 同盟国 > 州 > 領 > 町 > 村

 地方都市アインツを中心に、自治領を立ち上げた為、その都市の名前をとってアインツ自治領と呼ばれているが、交易の点での不便が多かった為、約100年前に首都アインツベルンに遷都した。


 地方都市アインツは東に中規模の河を持ち、南に森と山脈、北と西に広大な森があり、その奥に山脈が広がる地形で、僕の住んでいる村は南の森を抜けた先にある。

 地方都市アインツの見所は大聖堂と大図書館。他国からの距離が離れている為、戦火に見舞われる事も少なかったこの都市の建物や蔵書は約280年の歴史が積み重なった大事な文化財になっている。

 僕が魂観の儀を執り行ったのもここの大聖堂で、あの時はバタバタしてたから改めて礼拝しに行こうと思う。

 宿を出て、何か面白いものがないかと周りの店をチェックしながら大聖堂へ向かう。両親が宿をやっていることもあり、家具や調理道具、なにより食材、調味料が気になる。

 また両親のような冒険者を目指しているので、武器防具も気になる。

 学園に入れれば何度も足を運べるだろうが、入れなかったら田舎に逆戻りだし、そうなった場合、冒険者の宿の手伝いとして、アインツには買出しに来ることも多くなると考えている。そういうことも考えて今のうちから当たりの店を見つけておきたいものだね。

 キョロキョロしながら歩いていると、路地裏で妙な魔力反応を捕らえた。

 眼鏡の青年と龍のお爺さん魂魄のあわせ技のスキル。<パッシブ ディティール サーチ>

 よく意味がわからないが常に発動している詳細探知のスキルらしい。周囲の敵性と魔力と生命力を常に監視し、一定以上の数値を持つ生物や特殊な状況を察知すると、僕の目に詳細情報が表示されるスキルで、意識して使えば周辺全ての情報を把握することができるそうだ。

 長時間型?の魔法らしく感知範囲は極々近距離だけになる。夢の中の人はチートスキルと言っていた。チートって何だろう?

 妙な魔力反応は街中では使われるはずのない攻撃性の高い魔力を使用した形跡を捕らえたようだ。僕は軽く力を入れて、2階建ての家の屋根へと飛び上がり、音もなく着地する。

 そして屋根伝いに魔力反応のあった地点へ向かうと、小さい男の子が身なりの良い服を着た3人に追いつめられていた。追い詰められた壁には焦げ後が残っており、火の魔術が使われた形跡がある。

 でもどっちが悪いかわからないし……と思いながら様子を見ていると、3人のうち1人が杖を振りかざして魔法を使おうとしていた。

 街中での魔法行使はご法度だったはずなので、面倒事には巻き込まれたくないけど、ご法度な事をしているほうがきっと悪いし、義を見てせざるは勇無きなりと父さんも言ってたしなぁと屋根の上から飛び降りる。

 飛び降りざまに両手に雷属性を付与し、一番後ろで偉そうにしている人の首筋に一撃をいれ一瞬で気絶させる。
 倒れる前に、杖を振りかざした人と警戒してキョロキョロしている人の中央やや後方に踏み込み、2人の脊椎目掛けて軽く掌底を打ち込むと、2人共一瞬の内に電撃のショックで気を失う。

 小さい男の子は突然の事態に唖然として言葉を失っていて、僕が声をかけても反応しない。悠長に待っていると3人が目を覚ましそうなので、またこの3人に襲われたいの?と聞くとあわてて首を振り、僕と一緒に移動する事を了承してくれた。

 大通りに出て安全が確保されると僕は少し経緯を聞いてみる。

 はぐれた姉を探して、小道をウロウロしていたら、さっきの3人組の1人とぶつかったそうで、謝っても慰謝料を払えとか因縁をつけられた挙句、魔法で攻撃されたので逃げ出し、逃げている内にさっきの路地に追い込まれたところで、僕が来たということらしい。

 まぁぶつかったのは悪い事だけど、それで金銭を要求したり魔法で攻撃する事はないよなぁと、僕は自分のした事が間違いではなかったと自己完結させた。

 あとは、この子を姉とやらに引き渡せば問題は解決な訳なので、お姉さんの名前と年齢を聞くと不安げな顔をしながらも教えてくれた。
 名前はともかく普通年齢は聞かないからね

 <エグゼキュート ディティールサーチ エストリア 13歳>と小声で唱えると、目に緑の線で構築された周辺地図が投射され、青い光と黄色の光が点滅する。青い光は僕の位置で、黄色の光がお姉さんの位置だ。

 男の子の手を引きながら、黄色の光目指して路地を進むと、男の子の名前を呼びながら心配そうに探している僕と同じ年くらいの女の子を見つける事ができた。
 長い金色の髪をツインテールで留めた勝気そうな顔の女の子だが、今は必死な顔で男の子を探している。

 男の子は僕の手を離すと一目散にお姉ちゃんと大きな声を上げながら走り出して、女の子がそれに気づくと、涙を流しながら男の子を抱きかかえる。

 無事に再開できたのに水を差すのは悪いし、何かと巻き込まれるのは面倒なので、僕は気づかれる前にその場を後にした。

 ちょっと遠回りでちょっとした事件を解決した僕は予定通り大聖堂に向かい、改めてその荘厳さに感動し、露店で昼ご飯として豚の腸詰挟み白パンを買い食いし、両親のお土産として調味料を買い込み、宿屋に戻った時には日は落ちかけていた。

 少しサービスされた夕飯を食べ、洗濯が終わった服を受け取ると部屋に戻り、明日の結果発表に想いを馳せながら眠りにつくのだった……

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