婚約者に固執する必要などなかったのですね、私は自由に生きる事にします。

克全

第9話:旅立ち

「本当に、本当に、本当にこれでいいのかな」

(何を今さらグズグズ言っているのよ、もう出てきたんだから覚悟決めなさいよ)

「そんなこと言ったって無理よ、独り旅なんて無茶よ。
 それに今の私は連合王国の王太女なのよ。
 その王太女が身分関係なく結婚相手を探す旅に出るなんて、無茶過ぎるわよ」

(父王陛下が認めたんだから気にしないの)

「父王陛下も好きで認めた訳じゃないわよ。
 貴女が認めなければ私を自殺させるというって脅かすから、仕方なくお認めになられたんじゃないの」

(そうだったかしら、クリステルが勝手に言ったんじゃないの)

「何を責任な事言っているのよ、いい加減本気で怒るわよ」

(はい、はい、はい、私が言いました、私の所為です、これでいいんでしょ)

「貴女最初と話し方も正確も変わって来てるじゃないの。
 どっちが本物の貴女よ。
 もしかして一人じゃなくて二人三人いるじゃないわよね」

(バカ言わないでよ、私は一人よ。
 最初はクリステルに信用されるように猫を被っていたのよ。
 今の私が素の私よ、ああ、あ、やっと楽に話せるわ)

「最初から私を騙していたのね。
 貴女の本当の目的は何なの、正直に言いなさい」

(本当の目的。
 そんなの決まっているじゃない、クリステルがバカやって殺されないためよ。
 クリステルが殺されたら私まで死んじゃうのよ。
 クリステルみたいなバカに任せられるわけないじゃない)

「キィイイイイイ、腹が立つ、腹が立つ、腹が立つ。
 私はバカじゃないわよ、普通の令嬢よ」

(はい、はい、はい、普通の令嬢よ、普通のね。
 どのその普通の令嬢のままじゃ罠に嵌められて死んでいたのよ。
 今ならクリステルにも分かるでしょう)

「……まあ、それは、いいわ、だったらなんで一人旅に出るのよ。
 一人旅の方がよほど危険でバカな行為じゃないの。
 しかもその目的が理想の婿探しだなんてバカ過ぎるじゃないの」

(まず最初に言っておくけど、私は好きでもない男に抱かれるのは絶対に嫌よ。
 それくらいならクリステルを自殺させるわよ」

「……分かったわよ、分かった、分かりました、私の死にたくないから認めます」

(それと、本当に父王陛下が一人旅させるわけがないでしょう。
 兄上率いる近衛騎士隊が陰供しているわよ)

「え、ほんと、本当なの、だったらいいわ、貴女に付き合ってあげるわ)

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