養父母に家族共々謀殺されましたが、死に戻れたので復讐します。

克全

第44話

「本当に笑えない冗談ですね。
ロイ公子殿」

「ほう。
笑えないかい。
アローン殿」

暁の騎士団員全員が、レーナ姫を慕っていた。
傑出した三騎士は勿論、三騎士に次ぐ幹部達も慕っていた。
恋焦げれていると言ってもいい。
共に大魔境で命懸けの鍛錬を続けたのだ。
レーナ姫が徐々に光り輝くのを目の当たりにしてきたのだ。
ぽっと出の侯爵公子などに婿入りさせる気はなかった。

婚約だって、勝利後の破棄を前提にした策だから認めたのだ。
そうでなければ絶対に認めなかった。
何が何でも反対していた。
暁の騎士団員から見れば、外様貴族と同盟しなくてもよかったのだ。
帝国軍など自分達だけで撃破出来ると思っていた。

だからロイの言葉に黙っていられなかった。
少々無礼ではあるが、婚約など破棄する前提のモノだと言外に匂わせた。
勿論最初からそう言う前提であるのは、両家とも納得していたモノだ。
両方の領地にいる当主は知らないが、最前線にいる重臣は納得していた。
だからアローンは釘を刺したのだ。

だがこの時、アームストロング家の重臣の気持ちは微妙に変わっていた。
特に大公軍の陣に詰めていた重臣と連絡員は、完全に心境が変わっていた。
彼らはレーナ姫に魅せられていた。
その魅力の虜になっていた。
ロイや三騎士が魅了されるほどのレーナ姫だ。
並の人間が魅せられない訳がなかったのだ。

だからこそ煩悶していた。
ロイ公子はアームストロング家期待の公子だ。
帝国との戦争後、アームストロング家を導いて下さるのは、ロイ公子しかいないと思っていた。
その方をレーナ姫の婿に出す訳にはいかない。
出来る事ならレーナ姫を正室に迎えたかった。

暁の騎士団員にも望みがあった。
野望と言うのは言い過ぎだが、レーナ姫の婿になりたかった。
帝国との戦争で大手柄を立てて貴族に陞爵されれば、決して無理な話ではなかった。
大公殿下が、二人の姫の婿を譜代家臣から迎えたいと考えておられるのは、大公家の者なら誰もが知っている有名な話だった。

だから前線にいる暁の騎士団員も、領内に残る古参騎士団員も手柄を競っていた。
暁の騎士団員は帝国との戦争で手柄を立てようとしていた。
古くからの大公家騎士団員は、大魔境で魔獣を狩る事で手柄を立てようとした。
魔獣を狩れば狩るほど、自身の身体を強化することが出来る。
兵糧も素材も集められ、大公家に貢献する事が出来る。
そんな風に多くの者が、大公家の姫に婿入りする事を競っていた。

だがこの時、帝国もやられっぱなしと言う訳ではなかった。
遂に帝国も本気を出してきた。
帝孫を大将に据えて、譜代貴族軍二十万を動員してきた。

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