養父母に家族共々謀殺されましたが、死に戻れたので復讐します。

克全

第35話

第二次大公国討伐戦争は、未明から始まった。
最初は大将同士の論戦から始まるのだが、これが猿芝居だった。
大公軍の大将は当然レーナ姫なのだが、討伐軍はノアが大将なのだ。
しかも、オットーの遺児を奉じていると言う。
どう考えても嘘だ。

「我こそは大公国大宰相ノア・シューベルトなり。
よく聞け、帝国に弓引く逆賊クルト・アロン一味よ。
罪を悔いて降伏すると言うのなら、帝王陛下に温情を願い出てやる。
早々に降伏せよ」

「黙れ。
貴様こそ逆賊であろう。
決闘が怖くて逃げ出した臆病者。
命惜しさに父母兄弟を残して逃げ出した不孝者。
己の我欲で主君を売った不忠者。
私が成敗してやるから、その首ここに置いて行け」

子供の産まれ難い大公家だ。
こんなに都合よく子供が授かるはずがない。
だがノアはその嘘を押し通した。
亡命大公国の宰相として、偽大公を討つと言うのだ。
レーナ姫が激怒して吠えるのは当然だった。

しかも卑怯にも、論戦の場近くに伏兵を潜ませていた。
まあ、レーナ姫達もそれくらいの罠は織り込み済みだった。
だから完全武装の戦闘侍女以外に、暁の騎士団の精鋭を配していた。
更に言えば、敵の布陣を崩す罠として、釣り野伏せを準備していた。
レーナ姫を囮にして、敵を釣りだすのだ。

一番危険で戦死の確立が高い論戦の陣頭に、レーナ姫を立たせるはずがない。
実際に論戦を行ったのは、影武者の戦闘侍女だった。
だがレーナ姫が、影武者を死なせる策をよしとする訳がない。
影武者を護る豪傑が必要だ。
それがテオに化けたアローンだった。

赤備えの騎士と戦闘侍女頭が影武者の側にいれば、誰だって本物だと思う。
先の討伐軍に参加した者なら、赤備えの騎士の武名は赫々と響いている。
それが敵の矛先を鈍らせる。
恐怖で一歩踏み込めなくなる。
だが赤備えの騎士の中身は、テオではなくアローンだった。

テオの武勇がアローンに劣る訳ではない。
役目に差があるから、目立ち方が違うだけだ。
テオは先駆けだ。
パーティーであろうと騎士団であろうと、常に最先頭で突撃する。
攻めの剣を使う。
実際には槍を使うのだが。

アローンは参謀だ。
常に団の中央にいて、全軍の差配をする。
決して死ぬわけにはいかない。
最後まで生き延びて、一人でも多くの味方を生かさなければならない。
護りの剣を使う。

だから、赤備えの騎士としてアローンが影武者の側に立つ。
そしてタイミングの難しい釣り野伏を完遂する。
引くのが早過ぎたら敵が罠に気が付いてしまう。
遅ければ影武者共々自分も討ち取られてしまうかもしれない。
命懸けの難しい役目だ。

一方テオは、アローンの緑備えで突撃した。

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