養父母に家族共々謀殺されましたが、死に戻れたので復讐します。

克全

第33話

「どうにかしてあげられないかな」

「自警団を設立させられるのなら、その代価として兵糧を分けてやることは可能です」

レーナは占領地の民を救いたかった。
譜代貴族の圧政で、餓死寸前の民が数多くいたのだ。
無償で兵糧を配るのは簡単だ。
だがそれでは、幾ら兵糧があっても足りなくなる。
後々の為政にも悪影響が出る。

兵糧を配るのなら、それに相応しい対価をもらう必要がある。
その相談を、参謀役のアローン・ワイスにしたのだ。
その答えが、自警団の設立だった。
レーナ達はいずれ移動する。
進軍なのか後退なのかは別にして。

だがその時に、住民が帝国に味方して蜂起したら困るのだ。
後退の時ならまだいい。
だが進軍した後で裏切られたら、退路を断たれてしまう。
だから恩を売って、味方に引き入れたかった。
その方法が、飢えて死にかけている者に食糧を与えることだった。

「ケガをしている者はいませんか?
病気の者はいませんか?
これから私達の民になるのです。
遠慮せず申し出なさい。
費用は後で払ってくれればいいのです。
払えないというのなら、城で働けばいいのです」

進軍が近くなり、後方の安全を確保する必要があった。
あざとい方法だったが、レーナは民を聖魔法で癒した。
餓える民に仕事を与え、食糧を買えるようにした。
仕事を得て、生きて行けるようにした。
次に非常時の対応も約束した。

「もし帝国軍が攻めて来たら、大公国に逃げて来ればいいのです。
必ず守りましょう。
仕事の心配もしなくていいのです。
畑は与えられないかもしれませんが、下働きの仕事はあります。
家族を餓えさせる心配はありません」

命懸けで、家や畑を守る為に、籠城して戦う者はいい。
ただ逃惑うしかないだけの領民が哀れだった。
家族を餓えさせないために、命懸けで帝国軍の参加する者も出てくる。
自分と家族のために、死ぬと分かっていて従軍する者が哀れだ。
それをなくすには、伝える必要があった。
大公国に逃げ込んでも、餓えることがないと。

軍事的な信用を得るために、戦いで帝国を圧倒した。
政治的な信用を得るために、仕事を与え食糧を手に入れられるようにした。
慈愛の心を知ってもらうために、聖魔法を使った。
自警団を認めて、自治の可能性を与えた。
その上で、大公国に逃げる道も与えた。

準備すべき事を全て準備して、いよいよ進軍することにした。

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