養父母に家族共々謀殺されましたが、死に戻れたので復讐します。

克全

第30話

「姫様。
一曲踊って頂けますか」

「まあ。
珍しいことね。
でも私でいいの?」

「姫様に踊って頂きたくて、命懸けで戦いました。
姫様に捧げた剣、見て下さいましたか」

「ええ、見させてもらいましたよ。
あの大軍の中を、無人の野を行くようでしたね。
でも、剣ではなく槍だった思うのだけれど」

大公軍は勝利の勢いで帝国領を侵攻した。
外様貴族士族の領地を避けて、直轄領と譜代貴族士族領を占領した。
抵抗する者などいなかった。
皆情けなく逃げた。
護るべき領民を捨てて。

大公軍は逃げた貴族士族の城や館を接収した。
城内に蓄えられていた兵糧と武具も接収した。
金銀財宝は全て持ち出されていたが、大公軍には不要だった。
大公軍に必要なのは、兵糧だった。
領地を占領したら、領民を守る責任が出てくる。

帝国の圧政で民は飢えている。
兵糧を接収出来なかったら、大公領から輸送しなければいけない。
輸送中を帝国軍に奇襲されると大損害を被る。
だから大公領から占領地への輸送量は少なければ少ないほどいい。
今回は予定以上の兵糧が手に入り、参謀達は安堵していた。

それもあって、勝利の宴を開くことになった。
占領地で舞踏会など、油断としか言いようがなかった。
だがこれも策略だった。
帝国軍を呼び寄せるためだった。
油断など全くなかった。

だが愉しまなければ損だった。
警備や斥候には全力を注いだが、舞踏会も楽しんだ。
レーナ公女は勿論、戦闘侍女も綺麗に着飾っていた。
従軍に舞踏会用の衣装は持ってきていなかったが、抜け殻になった城や館には、民を虐げて得た金で買い集めた衣装が沢山あったのだ。

そんな衣装を戦闘侍女が急いでサイズ合わせした。
楽器は陣楽器を流用して間に合わせた。
予定にない急な舞踏会だったが、騎士達は愉しみにしていた。
戦闘侍女と踊れるのも楽しみだが、レーナ姫と踊るのを愉しみにしていた。
だが踊れる者は限られていた。

武勲をたてた者しかレーナ姫とは踊れないのだ。
今回の戦いで圧倒的な武勲をたてたのは、テオ・メラ―だった。
最初の踊るのも、最後に踊るのもテオ・メラ―だった。
帝国領を占領する戦いでも、テオ・メラ―が抜群の武勲をたてた。
フィン・ユングとアローン・ワイスも奮戦したが、テオ・メラ―には及ばなかった。

三人が最初にレーナ姫を助け支えた。
それに間違いはなかった。
だが、他の元暁の徒士団員もレーナ姫に剣を捧げていた。
いや、恋い焦がれていると言ってもいい。
共に大魔境で戦った三年で、双子と言う嫌悪感はなくなっていた。

コメント

コメントを書く

「恋愛」の人気作品

書籍化作品