養父母に家族共々謀殺されましたが、死に戻れたので復讐します。

克全

第26話

テオ・メラ―は一兵も逃がす心算はなかった。
時間はかかるだろうが、必ず根絶やしにする心算だった。
装備を惜しんで逃げた者は、直ぐに追い付いて首を刎ねた。
装備を捨て、少しでも身軽になって逃げた者も、テオ・メラ―の愛馬の駿足に捕まり、直ぐに後を追うことになった。

馬を駆って逃げた者だけが、わずかに命脈を永らえた。
だが、大魔境の中で主人であるテオ・メラ―と一緒に魔獣と戦っている軍馬は、駿足と体力を兼ね備えた名馬なのだ。
傭兵団の馬が逃げ切れる事などない。

「ヒィィィィン」

テオ・メラ―の愛馬が叫んだ途端、傭兵団の馬がその場で暴れ出した。
馬の本能が、ボスに成るべき相手を悟らせたのだ。
そのボスの命令に従い、背に乗せている傭兵達を振り落とそうとしたのだ。
ごく一部の傭兵団幹部を除き、ほとんどの者が馬から振り落とされた。

「ヒィィィィン」

落馬した傭兵達は、その場で今まで自分が乗っていた馬に踏み潰された。
落馬した拍子に、ほとんどの傭兵が骨折か酷い打撲を負っていた。
ろくに身動きが出来ない状態で、体重六〇〇kgから一〇〇〇kgの馬に踏み潰されて、身体中の骨が粉砕された。

テオ・メラ―の槍にかかれば、一撃で殺してもらえただろうが、自分が乗っていた馬に踏み潰されたら、痛みに苦しみながら悶え死にする事になる。
特に内臓を踏み潰された傭兵は、糞便が腹腔内に漏れ、内臓が腐り化膿してしまい、何日もの間、痛みにのたうち回って死ぬことになった。

だが傭兵の中には、なかなか機転の利く者もいた。
皆が逃げる方向はテオ・メラ―が追撃すると考え、貴族家や士族家の領民軍の中に紛れて逃げようとしたのだ。

「准男爵様。
傭兵が逃げ込んできております」

「包み込んで叩き殺せ」

「宜しいのでございますか?」

「構わん。
散々悪事を重ねてきたんだ。
殺されて当然だ」

「しかしながら、この事が帝国に知られれば、我が家は潰されてしまうかもしれません」

「誰が帝国に知らせるのだ?
我が家臣か?
それとも領民か?」

「馬鹿な事を申しました。
准男爵様の家臣や領民に、准男爵様を裏切る者など一人もおりません。
では、早速叩き殺してまいります」

「他家の者には知られないようにな」

「心得ております」

傭兵達はよほど憎まれていたのだろう。
いや、傭兵達が虎の威を借りていた、帝国が憎まれていたのだろう。
外様の貴族家や士族家の領民軍の中に紛れ込んだ傭兵は、誰一人生きてその中から出られなかった。

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