養父母に家族共々謀殺されましたが、死に戻れたので復讐します。

克全

第17話

「貴男。
どうなさる御心算なんですか。
レーナの件は、全てあなたの指示ですよ」

「馬鹿を言うな。
俺は何度も止めろと言ったではないか。
それを御前が、繰り返し繰り返し虐待したのではないか」

「いいえ。
全て貴男の命令でした。
私は止めたのです」

「愚か者が!
レーナが大公家に引き取られたのだぞ。
そのような嘘偽りが、通用すると思っているのか。
この、ドアホが!」

「きぃぃぃぃ」

「おい。
こら。
止めろ。
止めないか!」

「宜しいですか」

「なんだ?!
何者だ!
どうやって入ってきた。
何をしている!
狼藉者だ!」

「誰も来ません。
屋敷の者は、全員我が配下でございます。
ですから、御静かに願います」

「なんだと?!
どう言う事だ?
何を言っているのだ。
御前は何者だ」

「私は帝国の意を受けた者でございます。
このままでは、伯爵様も御夫人も、ただでは済みませんぞ」

「貴男。
この男は何を言っているのです。
私は伯爵夫人なのですよ。
大公弟の妻なのです。
いや、王子の妃なのです」

ここで、ハンナ・ハーンの本性が大きく現れた。
ハンナは、伯爵夫人などでは我慢出来なかったのだ。
自分は王子に嫁いだ、妃だったのだという意識が極端に強いのだ。
夫が臣籍降下させられたことが我慢ならないのだ。

「分かっております。
ですがこのまま大公国にいれば、死刑は免れません。
大公殿下の逆鱗に触れたのです。
大公殿下は十年間も隠忍自重されたのです。
その怒りは、並大抵のモノではありませんぞ!」

「ならばどうしろというのだ。
我が伯爵家に、大公家に楯突けるほどの兵はないぞ。
シューベルト侯爵家などの帝国派と手を組んで、反乱を起こせばいいのか」

「それはなりません。
今大公国に叛乱を越されたら、帝国は大混乱に陥ってしまいます。
ここは伯爵閣下も隠忍自重され、捲土重来を期されませ。
帝国は喜んで御迎え致します」

「捲土重来だと。
我は謀叛を起こす気など毛頭なかったぞ。
確かに、多少躾が厳しかったのは認めよう。
だが、実際に手を上げていたのはハンナだ。
ハンナを離縁すれば済む事だ」

「本気で申しておられるのですか。
そのような言い訳を、大公殿下が御認めになると、本心から思っておられるのですか?
大公殿下の心に渦巻いている、伯爵閣下への疑念がどれほど暗いモノかは、閣下自身が一番分かっておられるのではありませんか?」

「……」

「閣下の中に、殿下がいなければ、自分が大公を継げたという想い。
気が付かない大公殿下ではありませんぞ。
その想いが、ハンナ様がレーナに暴力を振るうのを見逃させたのではありませんか。
その事を、大公殿下が許すと思っておられるのですか?
必ず極刑が下されますぞ」

「余の待遇はどうなる。
惨めな暮らしをするのは嫌だぞ。
隠れ暮らすのも性に合わん」

「大公家の格式で御迎えすると御聞きしております。
流石に大公家を憚りますので、帝都に御迎えすることは出来ないとの事ですが、離宮の一角を自由に御使いして頂けるとの事です」

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