第十六王子の建国記
第98話交渉二
ケンジー・ジョサイア・オズマンド・イブラヒム王の命令に従う者は、ただの一人もいなかった。
何度も大軍を失ったネッツェ王国では、勇士と言えるような将兵はほとんど残っていなかった。
特に王の側近くに仕える者は、汚職に塗れた、見てくれだけの高官だけだった。
煌びやかな鎧を纏っているが、通常の重量では身動き出来ないので、防御力が皆無の、見てくれだけの鎧と剣を装備した、おままごとのような騎士擬きだった。
そんな偽騎士は、殺気を纏ったマーティンの舌鋒だけで、小便をちびり脱糞までしてしまい、とても戦うどころではなかった。
アレクサンダー王子と何度も実戦を掻い潜ったマーティンは、まるで羽化したかのように、大幅に実力を伸ばしていた。
ここにイブラヒム王家のブルーノ王太子がいれば、ここまでの醜態はさらさなかっただろう。
ブルーノ王太子の直属軍には、まだまだ勇士と言える将兵が数多く残っていた。
だがケンジー王は、ブルーノ王太子の諫言を何度も退け、愚かな命令を連発して、ネッツェ王国を大混乱させていた。
父王を見限ったブルーノ王太子は、アリステラ王国軍に対抗するための軍を集めると父王を騙し、アリステラ王国と反対側の国境にまで避難していた。
軍才のあるブルーノ王太子は、アリステラ王国に勝てない事は理解していた。
父王を殺したり幽閉したりしても、今のネッツェ王国軍ではアリステラ王国軍には勝てないと、冷徹に判断していた。
今は王都と国土の大半を失おうとも、アリステラ王国軍を警戒する隣国の協力を仰ぎ、辺境に勢力を維持するべきだと決断したのだ。
だからブルーノ王太子は、見込みの有りそうな文武の将兵を率いて、王都を脱出していた。
今王都に残っているのは、ブルーノ王太子に役立たずと断じられた、寄生虫のような廷臣だけだった。
屑のような廷臣の中にも、多少は目端の利く者もいて、王太子と同じように、兵を集めてきますと言って、王都を逃げ出す者もいたが、そんな者は極少数だった。
「魅了。我が命に従え」
「はい。御主人様」
「アレクサンダー王子の家臣となることを誓うか」
「「「「「誓います」」」」」
「アレクサンダー王子に敵対する者は、例え親兄弟や妻恋人であろうと、殺すことを誓うか」
「「「「「誓います」」」」」
「アレクサンダー王子に敵対する者は、アリステラ王国の国王や王子であろうと、殺すと誓うか」
「「「「「誓います」」」」」
マーティンは禁断の命令を下していた。
アレクサンダー王子の為ならば、母国に剣を向ける決断を下したのだった。
何度も大軍を失ったネッツェ王国では、勇士と言えるような将兵はほとんど残っていなかった。
特に王の側近くに仕える者は、汚職に塗れた、見てくれだけの高官だけだった。
煌びやかな鎧を纏っているが、通常の重量では身動き出来ないので、防御力が皆無の、見てくれだけの鎧と剣を装備した、おままごとのような騎士擬きだった。
そんな偽騎士は、殺気を纏ったマーティンの舌鋒だけで、小便をちびり脱糞までしてしまい、とても戦うどころではなかった。
アレクサンダー王子と何度も実戦を掻い潜ったマーティンは、まるで羽化したかのように、大幅に実力を伸ばしていた。
ここにイブラヒム王家のブルーノ王太子がいれば、ここまでの醜態はさらさなかっただろう。
ブルーノ王太子の直属軍には、まだまだ勇士と言える将兵が数多く残っていた。
だがケンジー王は、ブルーノ王太子の諫言を何度も退け、愚かな命令を連発して、ネッツェ王国を大混乱させていた。
父王を見限ったブルーノ王太子は、アリステラ王国軍に対抗するための軍を集めると父王を騙し、アリステラ王国と反対側の国境にまで避難していた。
軍才のあるブルーノ王太子は、アリステラ王国に勝てない事は理解していた。
父王を殺したり幽閉したりしても、今のネッツェ王国軍ではアリステラ王国軍には勝てないと、冷徹に判断していた。
今は王都と国土の大半を失おうとも、アリステラ王国軍を警戒する隣国の協力を仰ぎ、辺境に勢力を維持するべきだと決断したのだ。
だからブルーノ王太子は、見込みの有りそうな文武の将兵を率いて、王都を脱出していた。
今王都に残っているのは、ブルーノ王太子に役立たずと断じられた、寄生虫のような廷臣だけだった。
屑のような廷臣の中にも、多少は目端の利く者もいて、王太子と同じように、兵を集めてきますと言って、王都を逃げ出す者もいたが、そんな者は極少数だった。
「魅了。我が命に従え」
「はい。御主人様」
「アレクサンダー王子の家臣となることを誓うか」
「「「「「誓います」」」」」
「アレクサンダー王子に敵対する者は、例え親兄弟や妻恋人であろうと、殺すことを誓うか」
「「「「「誓います」」」」」
「アレクサンダー王子に敵対する者は、アリステラ王国の国王や王子であろうと、殺すと誓うか」
「「「「「誓います」」」」」
マーティンは禁断の命令を下していた。
アレクサンダー王子の為ならば、母国に剣を向ける決断を下したのだった。
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