第十六王子の建国記

克全

第97話交渉

ネッツェ王国が交渉に使者を送ってきたが、その条件は全く話にならない身勝手な条件だった。
余は相手にせずに追い返したが、ネッツェ王の条件を満たせずに追い返された使者は、可哀想に余に魅了されたと難癖を付けられ、処刑されてしまった。
そんな事が四度も繰り替えされると、流石に少々ネッツェ王国の臣民が可哀想になってきた。
それでも此方から使者を出せば、その使者が人質に取られる可能性がある。
いや、愚かで身勝手なネッツェ王なら、我が使者を殺す恐れすらあった。
だから絶対に此方から使者は出せなかった。
だがパトリック達は、他国の侵攻と盗賊達に脅える民の為に、自分達が交渉に乗り込むと言い出した。
余は何度も自制をするように言い聞かせたが、熱弁を振るって、逆に余を説得しだす始末だった
余としても、民の事は心配だったから、熱弁に折れてしまった。
だが大切な家臣を無駄死にさせる心算は毛頭なかった。
パトリック達を死なせるくらいなら、ネッツェ王国を滅ぼす事も、イブラヒム王家を根絶やしにする事も躊躇わない。
だからパトリック達には、ネッツェ王国が素直に属国にならない場合は、問答無用で王も廷臣も皆殺しにしていいと許可を出した。
そうしておかないと、余の為にいらぬ我慢をしてしまい、取り返しのつかない事態になるかもしれない。
後で後悔するくらいなら、最初に考えるだけ考えて、最悪の事態を想定し、事前に善後策を講じておくべきだ。
そこまで事前に話し合い、準備万端整えてから、初めて此方から使者を送って。
全権使者として送り出したのは、マーティンだった。
マーティンなら、冷静に事態を判断して、最善の対応をしてくれるだろう。
「おのれ、無礼者。我が国に属国になれと申すか」
「無礼も何も、不当に我が国に介入した上に、それが跳ね付けられたら、大軍をもって宣戦布告もせずに攻めこんできた、無礼な王家王国に何を言う資格もありませんよ」
「そんな事は知らん。あれはボニオン公爵に頼まれて援軍を出しただけだ」
「我が国の貴族を煽り、謀叛を支援したと言う事ですね」
「我が国はそんな事はしておらん。ボニオン公爵が、自分こそ正当な王だと言うので、支援しただけだ」
「それが他国の王位継承に介入したと言う事です。まあいいでしょう。属国にならないと言うのなら、王家の血を引くものを根絶やしにするだけです」
「おのれ無礼者。この者を殺せ。この場で今直ぐ殺すのだ」
「常に戦場から逃げ回り、王宮内に隠れ潜んでいた貴方方に、戦場往来の私を殺す事が出来るのですか」

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