第十六王子の建国記
第36話外道
「殿下、矢張り魔境に戻りましょう」
「何故だ、爺」
「これ以上進むと、民を巻き込む可能性があります」
「余では魔獣を操れないと言うのか?」
「領主や兵が、民を盾にする可能性があります」
「さっきのように防御魔法で護った上で、風魔法で安全な場所に移動させる」
「一度や二度なら偶然を装えるでしょうが、三度四度となれば、いくら愚かな公爵でも誰かが操っていると感づきます」
「そうれはそうだろうな」
「今この時期に、魔獣を操って公爵領内を荒らすとなれば、王家王国が疑われるのは必定です」
「王家王国に不利になると言いたいのか」
「はい。僅かであろうと、王家王国の正義に傷をつけるわけには行きません。そんな事をすれば、正妃殿下に睨まれる可能性があります」
「王太子殿下と第二王子殿下に不利になることは出来ないか?」
「はい。母上様が王宮におられ事を忘れられませんように」
「そうだな。人質同然なのだな」
「・・・・・」
「ならば一旦魔境に戻ろう」
「はい」
「だがもう一度領主館を襲い、備蓄した食料をブラッディベアーに喰わせるのは構わないか?」
「雑食のブラッディベアーが襲った人を喰わず、穀物だけを食べるのですか」
「余にブラッディベアーを操って人を喰わせろと言うのだな」
「いえ。ブラッディベアーを領主館に閉じ込めて、仮眠してくださいと申しております」
「さっきはボニオン魔境に戻れと申したではないか」
「考えが変わりました」
「やらねばならぬか」
「魔境を飛び出した魔獣が直ぐに人を喰わなかったのは、空腹でなかったからと考えてくれるかもしれませんが、遠くにまで移動してから殺した人間を喰わずに魔境に戻るはずがありません」
「そう、だな」
「剛毛や硬皮がなく、食べやすい人の味を覚えた魔獣が、魔境に帰るのも疑念を抱かせてしまいます。殿下が決断できないようなら、爺が防御魔法で結界を作りますが、どうなされますか?」
「これくらいの決断が出来ないようなら、領主として政などでいないと言いたいのだな」
「領主となる事を目指される殿下は、多くの領主争って領内を富ませなければなりません。時には兄である王太子殿下や第二王子殿下と対立することや、争う事もあるかもしれません。いえ、父親である国王陛下とさえ利害が対立するかもしれないのです」
「その時に民を飢えさせないためには、人を殺すだけでなく、遺体を喰うような外道な行動もとらねばならないと言う事か?!」
「そこまでは申しません。いや、その様な事をなさるような人間に御育てした覚えはありません」
「ならばなんだと言うのだ!」
「悪人を殺すことに躊躇などされないでください」
「躊躇などせん」
「ならば殺した後の遺体はただの肉でございます。人喰いをしろとは申しませんが、遺体が獣に喰われるのは自然の摂理でございます」
「・・・・・分かった」
「何故だ、爺」
「これ以上進むと、民を巻き込む可能性があります」
「余では魔獣を操れないと言うのか?」
「領主や兵が、民を盾にする可能性があります」
「さっきのように防御魔法で護った上で、風魔法で安全な場所に移動させる」
「一度や二度なら偶然を装えるでしょうが、三度四度となれば、いくら愚かな公爵でも誰かが操っていると感づきます」
「そうれはそうだろうな」
「今この時期に、魔獣を操って公爵領内を荒らすとなれば、王家王国が疑われるのは必定です」
「王家王国に不利になると言いたいのか」
「はい。僅かであろうと、王家王国の正義に傷をつけるわけには行きません。そんな事をすれば、正妃殿下に睨まれる可能性があります」
「王太子殿下と第二王子殿下に不利になることは出来ないか?」
「はい。母上様が王宮におられ事を忘れられませんように」
「そうだな。人質同然なのだな」
「・・・・・」
「ならば一旦魔境に戻ろう」
「はい」
「だがもう一度領主館を襲い、備蓄した食料をブラッディベアーに喰わせるのは構わないか?」
「雑食のブラッディベアーが襲った人を喰わず、穀物だけを食べるのですか」
「余にブラッディベアーを操って人を喰わせろと言うのだな」
「いえ。ブラッディベアーを領主館に閉じ込めて、仮眠してくださいと申しております」
「さっきはボニオン魔境に戻れと申したではないか」
「考えが変わりました」
「やらねばならぬか」
「魔境を飛び出した魔獣が直ぐに人を喰わなかったのは、空腹でなかったからと考えてくれるかもしれませんが、遠くにまで移動してから殺した人間を喰わずに魔境に戻るはずがありません」
「そう、だな」
「剛毛や硬皮がなく、食べやすい人の味を覚えた魔獣が、魔境に帰るのも疑念を抱かせてしまいます。殿下が決断できないようなら、爺が防御魔法で結界を作りますが、どうなされますか?」
「これくらいの決断が出来ないようなら、領主として政などでいないと言いたいのだな」
「領主となる事を目指される殿下は、多くの領主争って領内を富ませなければなりません。時には兄である王太子殿下や第二王子殿下と対立することや、争う事もあるかもしれません。いえ、父親である国王陛下とさえ利害が対立するかもしれないのです」
「その時に民を飢えさせないためには、人を殺すだけでなく、遺体を喰うような外道な行動もとらねばならないと言う事か?!」
「そこまでは申しません。いや、その様な事をなさるような人間に御育てした覚えはありません」
「ならばなんだと言うのだ!」
「悪人を殺すことに躊躇などされないでください」
「躊躇などせん」
「ならば殺した後の遺体はただの肉でございます。人喰いをしろとは申しませんが、遺体が獣に喰われるのは自然の摂理でございます」
「・・・・・分かった」
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