第十六王子の建国記
第31話大混乱
猟師達にはああ言ったものの、本当は急ぎ連絡する必要はない。
魔法が使え、幼き頃から共に学び共に戦ってきたマーティンとは、魔法通話と言う連絡方法がある。
余り遠距離だとマーティンの魔力では通話不能になるが、ボニオン魔境とサウスボニオン魔境代官所なら十分通話圏内だ。
だがそのような話は、家族を想い、不安と心配で一杯の猟師達には信じられないかもしれないから、拭い難い疑念が残るだろう。
だからどうしても目に見える形で、連絡を取ったという証拠を示してあげる方がいい。
ロジャーはともかくパトリックはそれが分かっているから、何も言わずに別行動を取る事を認めてくれたのだろう。
パトリックは近習頭として苦言を呈することも多いが、余が絶対に必要と考えたことは殆ど認めてくれる。
余程危険な事は諫言して止めようとするが、爺と二人でリントヴルムを追い立てる事は危険ではないと判断してくれたのだろう。
余と爺がリントヴルムの気配を追う途中で、白金級のブラッディベアー、ブラッディウルフ、ブラッディタイガーや白銀級のビッグベア、ビッグウルフ、ビッグタイガーの群れを発見した。
普通は単独で生活する魔獣のはずなのだが、ボニオン魔境では違っているのかもしれない。
いや、アゼス魔境が異常な状態になっていたように、ボニオン魔境も異常事態になっているのかもしれない。
真剣に調べなければいけない危険な状況だとは思うが、今の余達には好都合だ!
公爵家もこの異常に気づいているはずだから、余達が少々遣り過ぎてもボニオン魔境の異常だと思ってくれるかもしれない。
身体強化した能力を駆使して、魔境の奥深くにまで逃げた二匹のリントヴルムに一時間後に追いついた。
恐怖に慄くリントヴルムを爺と二人で追い立てて、途中で見かけたブラッディベアー、ブラッディウルフ、ブラッディタイガー、ビッグベア、ビッグウルフ、ビッグタイガーの群れに突っ込ませた。
余達ほど足が速いわけではないが、それでも白金級と白銀級の魔獣は強力な脚力を持っており、リントヴルムに追われたら、死に物狂いで逃げることになる。
何故余達がリントヴルム以外の魔獣を巻き込んだかと言えば、公爵家に魔獣が溢れる恐怖を実感させたかったことと、余達に半死半生にされたリントヴルムが心配だったからだ。
公爵家にそれほどの勇者がいるとは思えないが、生命力の限界近くまで鱗と皮を斬り取られたリントヴルムが、万が一にも殺されることがあったら、それこそ本当に魔獣が溢れる最悪の状況になってしまう。
そんな最悪の状況にならないように、数多くの白金級と白銀級の魔獣を露払いに使おうと考えたのだ。
白金級と白銀級の魔獣が魔境の外縁近くに辿り着く前に、余は爺と別れて先行することにした。
もしベイル達以外の猟師や冒険者や荷役が魔境内に狩りに入っていて、その中に王国領から連れ去られてきた人々がいたら、その人達が魔獣に殺されてしまうからだ。
だからそんな悲しい事態にならないように、もし人間が魔獣の進行先で狩りをしていたら、余が魔法を使って拘束拉致する心算なのだ。
余がリントヴルムから逃げ惑う魔獣の前に出た時に、その先に人間の気配を感じた。
「麻痺」「麻痺」
「麻痺」「麻痺」
「麻痺」「麻痺」
「風」「風」
「風」「風」
「風」「風」
ベイル達と同じ五十人規模のパーティーを三組発見したので、問答無用で銀級の麻痺魔法を二度ずつ六度放ち、それに耐えた者を含めて全員を金級の風魔法で空に浮かべて、更に金級の風魔法を使ってベイル達の方に飛ばした。
(爺、これくらいで追うのを止めた方がいいか?)
(そうですね。これ以上追ってしまうと、本当に魔境の外に出てしまうかもしれません。この辺で開放してやりましょう)
(殿下、そろそろ合流出来ます)
(パトリックはそのままロジャーを指揮して、善良な猟師や冒険者が魔獣の突進に巻き込まれないか見守ってくれ)
(殿下、それは殿下とパトリックでやって下さい。儂はロジャーを連れてベイル達の所に行きます)
(なるほど。余でないと、冒険者ギルドや公爵家が愚かにも大量の冒険者を迎撃に向かわせたときに、助ける事が出来ないからだな)
(はい。殿下ほどの魔力量がなければ、多くの人間を同時に拘束するだけならともかく、冒険者ギルドや公爵家に知られないように拘束して空に浮かして運ぶなど不可能でございます)
(分かった。爺はロジャーと合流してベイル達の所に行ってくれ。三組の冒険者パーティーはこのまま飛ばせて運ぶ)
(は!)
(パトリックはそこで待機してくれ)
(は!)
ロジャーはそれなりに魔力があるのだが、どうも細かな調整が苦手なようで、未だに魔法通話を使いこなすことが出来ないでいる。
さて、これからどうなるのか?
万が一にも魔獣を魔境から溢れだす訳にはいかない。
そんな事をして、罪のない民を死傷させてしまったら、一生後悔してしまう。
それと猟師や冒険者を犠牲にするのも嫌だ!
パトリックと二人でここに待機して、冒険者ギルドや公爵家が酷薄な命令を下さないか確認する!
魔法が使え、幼き頃から共に学び共に戦ってきたマーティンとは、魔法通話と言う連絡方法がある。
余り遠距離だとマーティンの魔力では通話不能になるが、ボニオン魔境とサウスボニオン魔境代官所なら十分通話圏内だ。
だがそのような話は、家族を想い、不安と心配で一杯の猟師達には信じられないかもしれないから、拭い難い疑念が残るだろう。
だからどうしても目に見える形で、連絡を取ったという証拠を示してあげる方がいい。
ロジャーはともかくパトリックはそれが分かっているから、何も言わずに別行動を取る事を認めてくれたのだろう。
パトリックは近習頭として苦言を呈することも多いが、余が絶対に必要と考えたことは殆ど認めてくれる。
余程危険な事は諫言して止めようとするが、爺と二人でリントヴルムを追い立てる事は危険ではないと判断してくれたのだろう。
余と爺がリントヴルムの気配を追う途中で、白金級のブラッディベアー、ブラッディウルフ、ブラッディタイガーや白銀級のビッグベア、ビッグウルフ、ビッグタイガーの群れを発見した。
普通は単独で生活する魔獣のはずなのだが、ボニオン魔境では違っているのかもしれない。
いや、アゼス魔境が異常な状態になっていたように、ボニオン魔境も異常事態になっているのかもしれない。
真剣に調べなければいけない危険な状況だとは思うが、今の余達には好都合だ!
公爵家もこの異常に気づいているはずだから、余達が少々遣り過ぎてもボニオン魔境の異常だと思ってくれるかもしれない。
身体強化した能力を駆使して、魔境の奥深くにまで逃げた二匹のリントヴルムに一時間後に追いついた。
恐怖に慄くリントヴルムを爺と二人で追い立てて、途中で見かけたブラッディベアー、ブラッディウルフ、ブラッディタイガー、ビッグベア、ビッグウルフ、ビッグタイガーの群れに突っ込ませた。
余達ほど足が速いわけではないが、それでも白金級と白銀級の魔獣は強力な脚力を持っており、リントヴルムに追われたら、死に物狂いで逃げることになる。
何故余達がリントヴルム以外の魔獣を巻き込んだかと言えば、公爵家に魔獣が溢れる恐怖を実感させたかったことと、余達に半死半生にされたリントヴルムが心配だったからだ。
公爵家にそれほどの勇者がいるとは思えないが、生命力の限界近くまで鱗と皮を斬り取られたリントヴルムが、万が一にも殺されることがあったら、それこそ本当に魔獣が溢れる最悪の状況になってしまう。
そんな最悪の状況にならないように、数多くの白金級と白銀級の魔獣を露払いに使おうと考えたのだ。
白金級と白銀級の魔獣が魔境の外縁近くに辿り着く前に、余は爺と別れて先行することにした。
もしベイル達以外の猟師や冒険者や荷役が魔境内に狩りに入っていて、その中に王国領から連れ去られてきた人々がいたら、その人達が魔獣に殺されてしまうからだ。
だからそんな悲しい事態にならないように、もし人間が魔獣の進行先で狩りをしていたら、余が魔法を使って拘束拉致する心算なのだ。
余がリントヴルムから逃げ惑う魔獣の前に出た時に、その先に人間の気配を感じた。
「麻痺」「麻痺」
「麻痺」「麻痺」
「麻痺」「麻痺」
「風」「風」
「風」「風」
「風」「風」
ベイル達と同じ五十人規模のパーティーを三組発見したので、問答無用で銀級の麻痺魔法を二度ずつ六度放ち、それに耐えた者を含めて全員を金級の風魔法で空に浮かべて、更に金級の風魔法を使ってベイル達の方に飛ばした。
(爺、これくらいで追うのを止めた方がいいか?)
(そうですね。これ以上追ってしまうと、本当に魔境の外に出てしまうかもしれません。この辺で開放してやりましょう)
(殿下、そろそろ合流出来ます)
(パトリックはそのままロジャーを指揮して、善良な猟師や冒険者が魔獣の突進に巻き込まれないか見守ってくれ)
(殿下、それは殿下とパトリックでやって下さい。儂はロジャーを連れてベイル達の所に行きます)
(なるほど。余でないと、冒険者ギルドや公爵家が愚かにも大量の冒険者を迎撃に向かわせたときに、助ける事が出来ないからだな)
(はい。殿下ほどの魔力量がなければ、多くの人間を同時に拘束するだけならともかく、冒険者ギルドや公爵家に知られないように拘束して空に浮かして運ぶなど不可能でございます)
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