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前世水乙女の公爵令嬢は婚約破棄を宣言されました。

克全

第34話

カチュアは追い詰められていた。
優し過ぎる心が、王都の民の苦境を強く感じ過ぎていた。
助けたいと思い詰めてしまっていた。
それが、昔読んだ物語を思い出させてしまった。
神に願いをかなえてもらう為に、命を捧げる物語だった。

カチュアは迷った。
身を捧げれば、神が願いを叶えてくれると言う確証がなかった。
自分が死んでしまうと、水精霊の加護が失われてしまう。
だが今のままでは、助けられるのはサライダ公爵領の人だけだ。
助けたいのは、国中の人だ。

だから精霊に尋ねた。
真剣に願った。
自分が命を捧げれば、国の人を全て助けてくれるのかと。
自分が死んでも、加護を続けてくれるのかと。
答えは否だった。

サライダ公爵領の人以外は愛想が尽きたと。
全ての人間を救う気はないと。
人間の所為で、大きく力を失ったとも言われた。
今迄通りの加護など与えられないとも言われた。
カチュアが死んだら、サライダ公爵領の人まで加護を失うとも言われた。

だが水精霊は口を滑らせてしまった。
水精霊は一体だけではない。
ゴライダ王国ほどのオアシスだと、多くの水精霊が住んでいる。
中には口の軽い精霊もいる。
カチュアに肩入れしている精霊もいる。

彼らが言ってしまった。
水龍様ならカチュアの願を叶えてくれるかもしれないと。
それを聞いて、何もしないでおられるカチュアではなかった。
カチュアは祈った。
水龍様に心から祈り願った。
ゴライダ王国の人を助けてくださいと。

だが何の答えもいただけなかった。
何日も祈り願ったが、水龍様に届いているかもわからなかった。
百日を超える祈りの日々に、またカチュアに肩入れしている精霊が口を滑らせた。
オアシスに身を捧げれば、返事を頂けるかもしれないと。
他の精霊が激怒したが、もう後の祭りだった。

勿論口を滑らせた精霊も、カチュアを死なせる心算などない。
他の精霊も、全ての力を使ってカチュアを護るだろうと考えていた。
全ての精霊が、カチュアが身を捧げると信じて疑わなかった。
カチュアも精霊を信じていた。
身を捧げれば返事を頂けると教えてくれたのだ。
自分が死んでも人間を加護してくれると。

警護の騎士も、側仕えの戦闘侍女も、不意を突かれた。
毎日繰り返される水精霊様への祈りだ。
もう百日以上繰り返されている。
その長さも回数も、国が崩壊する前とは比べ物にならない。
だが、一度断ち切られかけた水精霊様との絆だ。
長くもなるし、数も多くなるのが当然だと、思ってしまっていた。

王国中の人を助けられない事に、御嬢様が思い詰めているとは思わなかった。
いや、思い悩んでいるのは分かっていた。
だが、身を捧げるとまでは考えていなかった。
自分が死ねば、水精霊様の加護を失うのを知っていて、そんな事をするとは考えてもいなかった。

だが、カチュアはオアシスに身をささげてしまった。

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