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前世水乙女の公爵令嬢は婚約破棄を宣言されました。

克全

第22話

「苦しい。
喉が渇いた。
水。
水をくれ」

「よせ、馬鹿。
水を飲んだら、狂い死にするぞ」

「くっそぉぉぉ。
これもみんな、馬鹿王太子と、馬鹿殿の所為だ」

「そうか。
そうだな。
馬鹿王太子と馬鹿殿が欲をかくから、精霊様が御怒りになったんだ」

王太子の家臣とメイヤー公爵家の家臣は、領地に戻って恐れおののいていた。
目の前で、余りの痛みに踊り狂った私兵を目にし、領地に戻っても恐ろしくて水を飲むことが出来なかった。
その上、翌日から王都内に小川の噂が広がったので、尚更水を一滴も口に出来なかった。

渇きにもがき苦しむ騎士や徒士は、自分達の過去の行状は棚に上げて、その苦しみを与えた王太子とメイヤー公爵を心底恨んだ。
目の前で家族が渇きに苦しみ、幼子や老いた親が半死半生となった姿を見て、心から反省する者もいたが、大半は自分の過去の悪事を反省する事もなく、王太子とメイヤー公爵を逆恨みした。

その内誰かがこう言った。
元凶である、王太子とメイヤー公爵を血祭りにあげて、オアシスに捧げたら水の精霊様が許してくれるのではないかと。
藁にもすがる思いで、騎士と徒士はそれを信じた。

いや、信じた振りをして、オアシスで王太子とメイヤー公爵を殺すと誓いをたて、その後で水を飲んでみた。
わずかでも心有る者は、自分が実験台となり、最初に水を飲んだ。
最後まで下劣な心の者は、仕える家臣に水を飲ませて実験台にした。

自分の身を挺して水の安全を確かめた者は、何の罰も当たらなかった。
家臣が飲んで安全であることを確かめ、その後に水を飲んだ者も何の罰も当たらなかった。
騎士と徒士は、十分に水を飲んだ後で、完全武装を整え、主君である王太子とメイヤー公爵を討つべく兵を挙げた。

メイヤー公爵領での叛乱は、あっという間に城を落とす事に成功した。
多くの騎士と徒士が叛乱軍に加わったのもあるが、メイヤー公爵に最後まで付き従った騎士と徒士が、渇きでろくに動けなかったのだ。
動けない騎士と徒士も、完全装備を整えていたので、一撃で殺されることはなかった。

ほとんど抵抗らしい抵抗も出来ず、何度も何度も剣や槍で打ち据えられた。
だが死の直前に、何処からともなく水が湧きだし、止めを刺すことは出来なかった。
水の精霊が、簡単に死ぬことを許さなかったのだ。
世間に見せしめにする必要のない騎士と徒士は、私兵と同じように一昼夜痛みにのたうち回り、狂い死にする事になった。

メイヤー公爵は捕らえられ、オアシスの前に引き据えられた。
そしてオアシスの周囲に生えるヤシの木に縛られ、生贄にされた。

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