大国王女の謀略で婚約破棄され 追放になった小国王子は、 ほのぼのとした日常を望む最強魔法使いでした。

克全

第211話悪漢の村7

積極的に出ると決めてからの展開は早かった。
娘が怖がらないように、ガビが戦いの場から遠ざけてくれていた。
だから遠慮することなく、ゴロツキ共を拷問にかけて、洗いざらい白状させた。
ゴロツキ一人に魔晶石使い魔一体が対応したから、時間的には直ぐに済んだ。
そこで多くのことが分かった。
「ガビ、後は魔晶石使い魔に任せようと思う」
「ルイ様に御任せします」
「じゃあ、食事の続きをしようか」
「はい。さあ、遠慮せずに食べなさい」
「あの、でも、その」
「すっかり冷めてしまっているから、少し温めてあげよう」
僅かな時間ではあったが、せっかくのシチューが冷めてしまっていたので、魔法で温めなおしてあげた。
恐怖にこわばった娘の心を解きほぐしている間に、魔晶石使い魔にゴロツキ共の頭を確保させた。
百人を超えるゴロツキ共も、村の中で三十人ほどが無力化され、村の外で五十人強が無力化されている。
今は村の中を巡回している二十人ほどと、アジトを護っている三十人ほどに戦力を激減させているのだ。
「ルイ様、ゴロツキ共を無力化したのなら、宿に戻った方が娘も安心するのではありませんか」
「そうだね、一旦宿に戻ろうか」
「ほんとう。おうちにかえっていいの」
「ええ、大丈夫ですよ」
「おねえちゃん。ありがとうございます」
「どういたしまして」
余とルイは宿屋に戻り、無事父親に娘を返した。
最初はゴロツキ共を恐れて狼狽していた父親も、余がゴロツキ共を全滅させたと娘から聞いて、ようやく安心したようだ。
最初は中々信じなかったが、魔晶石使いがに叩きのめした五十人の兄貴分を運ばせたら、ようやく納得した。
まあ普通は信じられなくて当然だ。
「ガビ、宿屋の主人を含めた、ゴロツキ共に協力していた家の者を、他の村に移住させようと思うのだが」
「そうですわね。その方が他の村人の為にもよいでしょうね」
「そこで、魔晶石使い魔が新たに開拓した土地を、その者達に与えようと思うのだが」
「そうですわね、先住の人達がいる村では、何かと揉め事が起こる可能性がありますわね」
「では早速主人に話してくるよ」
余の話を聞いた主人は、直ぐに移住を快諾してくれた。
主人にしても、ゴロツキ共がいなくなった後で、他の住民達の報復が怖かったようだ。
いや、それ以前に、ゴロツキ共の共犯として処刑されると思っていたようだ。
確かに、ゴロツキ共に協力して、殺人や恐喝、強盗や闇奴隷売買に加担していたのだから、処罰を覚悟するのが普通だ。
「土地は直ぐに作物が植えられるように開拓してある」
「はい、ありがとうございます」
「万が一の為に、家の周囲には果樹を植えてあるから、非常食には困らない」
「御配慮感謝いたします」
「魔晶石使い魔を看守代わりに派遣するから、少々の魔獣が現れても大丈夫だ」
「重ね重ねの御配慮、感謝の言葉もございません」
結局、表向きは開拓に従事する流罪と言う扱いになった。
だがこれだけでは、共犯者にだけ手厚い加護を与えて、一方的に被害を受けていた村人に、何の慈悲も与えていないことになる。
そこでこの村の周辺に村共有財産の農地を開拓し、同じく村共有財産の果樹を植林した。
全く農地を所有しない者や、所有地が少ない者には、十分家族を養えるだけの開拓地を与えた。

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