大国王女の謀略で婚約破棄され 追放になった小国王子は、 ほのぼのとした日常を望む最強魔法使いでした。

克全

第195話陶芸村2

「巡検使様。私こそが、十三代目に相応しいのです」
「いえ、巡検使様。私の焼き物の方が、女王陛下に相応しいです」
「兄たちに才能はありません。私こそが相応しいのです」
「うるさい。そんなに大声を出さないでも聞こえている。
陶芸村に入ると、村長の家の家督争いに巻き込まれてしまった。
普通の村なら、長幼の序に従って、兄に継がせればすむ。
いや、すむと言うよりは、そうしないと色々家督争いが激しくなる。
だが陶芸村の場合は、優秀な焼き物を創り出せないと話にならない。
本来ならば、現当主が厳正に才能を見極めて、次代の当主を決めるべきなのだ。
ところが、魔族と馬鹿王女によって引き起こされた戦争で、当主が殺されてしまったのだ。
当主だけでなく、多くの優秀な陶工が非業の最期を迎えていた。
生き残った者達の中から、次代の当主を決めなければならない。
ここに莫大な利権が絡んでしまった。
戦争で高価な焼き物が失われてしまっていた。
多くの愛好家が、失った焼き物を欲しているのだ。
先にも書いたが、多くの優秀な陶工が殺されてしまっている。
焼き物の値段は鰻登りだ。
商人が財力にモノを言わせて買い占めている。
焼けば焼くほど儲かるのだ。
殺された当主の息子達が、跡目を争うのも人の業と言えるかもしれない。
だが問題は、生き残った三人の息子達は、平凡な才能だと言う事だ。
「もう一度、一世一代の皿を焼いてもらおう。この程度の焼き物では、女王様に御渡しする事など出来ない」
「そんな」
「それでは、王室御用達の看板を下ろせと言う事ですか」
「大損してしまいます」
「店が潰れてしまいます」
大儲けしようと、三人の息子についていた商人達が、真っ青になっている。
まあ当然だろう。
先行投資で買い占め、どんどん焼かせていた陶磁器が、全て二束三文の廉価品になってしまうのだから。
先代までは王家に献上していたのに、当代になって献上出来なくなったとなれば、名声は地に落ち価格が大暴落するのは必至だ。
だが余としても、このように不出来な焼き物を、王家のパーティーで使う訳にはいかない。
個人的に旅先で使う皿は、割れない金属製や木製品だ。
陶磁器を使うのは、公式な行事に限られる。
自国や他国の王侯貴族を招いた席で、これほど不出来な陶磁器を使用したら、ガビが恥をかいてしまう。
「下郎共の金儲けの為に、女王陛下にこのような不出来な陶磁器を使わせろと言うのか。女王陛下が恥をかく事になったら、下郎共の一族一門皆殺しになると心得よ」
余の怒声を受けて、商人どもはもちろん、三人の次期当主候補も恐怖で震えあがっている。
これで少しでもましなモノが出来上がればいいが、そうでなければ、陶磁器はベルト王国から取り寄せよう。

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